米ツアーQスクールステージ2から見える様々な選択肢【原田香里のゴルフ未来会議】

ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。一気に季節が進み、北からは雪の便りが届いたり、美しい紅葉のニュースが流れたりしていますが、いかがお過ごしでしょうか。ゴルフをするには気持ちのいい季節となり、ツアーやその周辺も賑やかです。
今週は、米ツアーQスクールのステージ2の結果を見て、色々思うところがあったのでお話ししたいと思います。
 
ファイナル(Qシリーズ)出場のためには40位タイまでに入らなくてはならないステージ2には、188人の選手が出場していました。そのうち日本勢は8人。原英莉花さん、アマチュアの馬場咲希さん、米ツアーでの経験豊富な上原彩子さんなどが来年の試合を目指してプレーしました。
 
結果的に、40位以内に入れたのは馬場さんただ一人。原さんもいい位置にいたのですが、残念ながら3日目に過少申告で失格となっています。他の6人は40位タイに入れず、Qシリーズに進めませんでした。結果はさておき、お話したいのは8人の選手のみなさんが置かれた多種多様な状況と幅広い可能性についてです。
 
Qシリーズに進んだ馬場さんは、高校2年だった昨年、全米女子アマに優勝したことで可能性が一気に広がりました。多くの米国の大学からスカラシップのオファーが来るのは当然で、まず進学かプロ転向かという選択肢に米国のそれが大きく入り込んできました。プロ志望なのはまちがいありませんが、その第一歩をどこで踏み出すのか、ということも決めなければなりません。
 
米国ではQシリーズに進出を決めましたが、最終から受験すればいい状況の日本のプロテストにもエントリーしています。そこで20位以内を目指すことになります。まだ、日米どちらのツアーを主体に戦うかは選べる状態にあるということです(いずれも結果を出さなくてはなりませんが)。
 
上原さんは、日本で3勝した後、13年から米ツアーでプレーしている39歳のベテランです。体調を崩していたと聞いていますが、復調しつつあり、来季を目指してのQT出場。米ツアーでは未勝利で、今回は残念でしたが、今後への気持ちが伝わってくるQT参戦でした。失格となってしまった原さんは、今年、腰のヘルニア摘出手術をシーズン途中で受けて復帰。日本女子オープンで復活優勝して、挑んだ初めての米ツアーへの道でした。山路晶さんは、2019年から日本ツアーでプレーしている選手です。今年は、レギュラー、ステップアップの両方でプレーしていましたが、一念発起しての挑戦だったのだと思います。
 
アマチュアの長野未祈さんは、米国在住の選手です。畑岡奈紗さんが高校3年生で優勝した16年の「日本女子オープン」と言えば、思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。烏山城CCを舞台にアマチュア選手の活躍が目立った年でした。高校1年生で出場した長野さんは、3日目に首位に立ったのですが、勝ったのは最終日にスコアを伸ばした畑岡さん。
 
長野さんは10位タイに終わりました。ローアマは勝った畑岡さん。6位タイには同学年の西村優菜さんもいて、トップ10に入ってもサードアマという異例の経験をしています。高校3年生の年に1度、米国のQスクールを経験しているようですが、その後は米国に留学し、現在はオレゴン大学在学中。カレッジゴルフと勉強と豊かな人生を送っています。
 
若いうちに全米女子オープン出場を経験し、プロとしては米国でスタートを切った山口すず夏さんも、ステージ1からステージ2に進みました。日本のプロテストにも挑んでおり、こちらは1次、2次と切り抜けて馬場さんと同じに最終テストが待っています。ゴルフを続ける道は様々です。
 
アマチュアとして経験を積み、プロになる人もいれば、できるだけ早くプロとしてプレーすることを望む人もいる。年々、後者が増える傾向が強くなっていますが、プロになるにしても人生はゴルフだけではありません。何度もお話していることですが、豊かな人生とは何かを、一度、じっくりと考えてみることも大切です。若いうちは40歳、50歳の自分を想像するのは難しいかもしれませんが、それでも、自分の将来を考えてみることは大切です。
 
ゴルフだけではありませんが、アマチュアとプロの線引きが難しい時代になってきています。アマチュアにもスポンサーがつくことができるようになったということは、金銭的なバックアップが得られるいい面もありますが、その分、責任の重さも生じます。その辺りを理解しつつ、自分はどうしたいのか、そのためには何をするべきか考えてみることをお勧めします。
 
もちろん、未成年のみなさんの場合、保護者の方に相談するのは当然です。ただ、必ず自分自身の考えをしっかり持って、保護者の方と意見がちがう時には深く話し合ってみましょう。様々な考え方が世の中にはありますが、流されることなく、自分を持つことです。他の誰でもなく、自分自身の人生なのですから。
 
選択肢が増えることは素晴らしいことです。多くの情報を得ることも決断には必要です。ただ、情報の海に溺れないように気を付けてください。頭でっかちになって動けなくなるのでは本末転倒です。遠い将来に人生としての目標を持ち、そこに向けた覚悟をして日々を過ごす。それができれば、人生の豊かさはより深くなるでしょう。

■原田香里(はらだ・かおり)
1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

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