戦艦「大和」vs海上自衛隊イージス艦 勝つのはどっち!? カギは交戦距離か

人気マンガ『ジパング』でも描かれた、戦艦「大和」と海上自衛隊イージス艦の対決。旧日本海軍の象徴と、海上自衛隊最強の水上戦闘艦は、どっちが強いのか、客観的に考察してみました。

ぶ厚い装甲まとっていても水線下は?

 インターネット上で定期的に行われる議論に「旧海軍の戦艦『大和』と海上自衛隊イージス艦の対決」があります。時代が全く異なる兵器ですから、どちらかの艦が、いずれかの時代にタイムスリップで出現するということなのでしょう。 この両者の対決を成立させるのは、なかなか難しいハナシです。「大和」が現代にタイムスリップし、海上自衛隊に発見された場合、そもそも大和型戦艦を知らない海自幹部がいるとは思えないですし、「大和」を敵と認定するとは思えませんので、攻撃せず、あらゆる手段を用いてコンタクトを取ろうとするのではないでしょうか。 また、そこを無視するとしても、イージス艦が装備する90式艦対艦誘導弾は射程150~200km(ブロック1D)です。大和型戦艦の主砲は艦載砲としては史上最大の46cm45口径砲ですが、射程は約42kmのため、前出の90式艦対艦誘導弾と比べると圧倒的に短いです。

 しかも、海上自衛隊のイージス艦のなかでも、改良型といえるあたご型や最新のまや型なら艦載ヘリコプターを搭載できるため、それらがかなり早い段階で「大和」を発見してしまえば、「大和」は主砲の射程外からミサイルで一方的に攻撃され続けることになります。 速力もイージス艦の方が速いですから、間合いを詰めようと接近することも無理で、「大和」は何もできずに撃破されるでしょう。 戦艦「大和」は、敵戦艦との砲撃戦に耐えられるよう、現代軍艦とは比べものにならないぐらい、ぶ厚い装甲をまとっています。そのため、ミサイルでは大和の主要防御区画を貫通することはできないかもしれませんが、ミサイル多数を命中させて、射撃システムを破壊してから、垂直発射式アスロックで水線下を攻撃したらどうでしょうか。 こうなると、「大和」は沈まずとも戦闘不能、対してイージス艦は無傷なので、イージス艦の勝利は確実です。

バルカンファランクスで46cm砲弾を迎撃するか

 ヘリコプターがなければ水平線の向こうは探査できないため、対水上レーダーだけなら、その性質上、「大和」が装備する46cm主砲の射距離内での遭遇もあり得るかもしれませんが、この場合でも、イージス艦が搭載する戦闘システムであれば、「大和」の主砲徹甲弾を迎撃することができます。 ちなみに、アメリカ海軍は1980年代に、近接防御火器(MK.15バルカンファランクスCIWS)で、127mm砲弾の撃墜に成功しています。 イージス艦の戦闘システムはマッハ17の弾道ミサイルを撃墜できる能力を持つわけですから、初速でもマッハ2.3ほどの速度で飛翔する「大和」の主砲弾は迎撃可能だと考えられます。

 艦対空ミサイルで、発射された「大和」の徹甲弾を破壊することができるかはわかりませんが、軌道をそらせて命中を防ぐことは可能でしょう。イージス艦側は主砲弾弾着の未来位置も予測できるので、加速力に優れたガスタービン機関を全力にし、危険海域から離脱するはずです。なお、「大和」側の乗員が、逆に現代艦の加速性の高さを予測できるとは思えません。そうなると「大和」の主砲弾はまず当たらないでしょう。 このように、普通に考えれば「大和」に勝ち目はありません。両者の勝負が成立するとしたら、以下のような条件でしょう。――旧日本海軍の戦艦「大和」がサマール沖海戦など、敵艦艇との戦闘中で、戦いの準備が整った状態でタイムスリップ。5km程度の近距離に突如出現した海上自衛隊のイージス艦を、アメリカ軍巡洋艦と認識して砲撃を開始。一方で海上自衛隊のイージス艦は、突然現れた「大和」に驚いて対応が遅れた――こんなところではないでしょうか。

46cm砲の徹甲弾は逆に効果ないかも

 この場合なら、「大和」は主砲だけでなく、副砲、高角砲も使用できますし、対応時間が短すぎるため、イージス艦が誇る優れた戦闘システムで砲弾を迎撃することも困難でしょう。 とはいえ、射撃システムの性質を考えると、戦艦「大和」が海上自衛隊イージス艦を認識・測距して発砲するまでに数分かかる可能性があるため、大砲を向けられて危険を感じたイージス艦が距離を開けるでしょう。現実的に考えるなら、日本国旗や自衛艦旗(旭日旗)を振ったり、一時的に白旗を掲げたりして交戦の意思がないことを見せるでしょうが……。ここも人的要因を無視して戦闘させるなら、イージス艦側は「大和」より早く戦闘準備を整え、先制発砲が可能です。 撃ち合いになった場合、イージス艦の127mm主砲やミサイルは「大和」にほぼ命中し、装甲は貫通しないものの、艦上構造物はかなりのダメージを受けると考えられます。

 重装甲により「大和」が致命傷を免れ、イージス艦を砲撃した場合ですが、この近距離なら命中するでしょう。イージス艦に装甲はないので、「大和」の砲弾の当たりどころによっては、ミサイルが誘爆して轟沈ということもあり得ます。ただ、イージス艦に装甲がないことで、主砲・副砲の徹甲弾は信管が作動せず、突き抜けてしまって、損害が小さく済む可能性も考えられるでしょう。 むしろ主砲徹甲弾ではなく、発射速度の早い高角砲(高射砲)弾が多数命中する方が、上部構造物が破壊され、命中時に火災を誘発するなどして、イージス艦には脅威かもしれません。 第2次世界大戦では最強の水上戦闘艦であった戦艦「大和」ですが、普通の条件設定では、さすがに70年以上未来の兵器に勝利するのは難しいといえそうです。

externallink関連リンク

日米戦艦対決「大和」対「アイオワ」世界“最強”戦艦の軍配は? 戦艦「大和」の装甲はどれぐらい強かったのか? アメリカ軍の実射テストの結果は 過酷な潜水艦生活 女性起用がなかったのも仕方がない? 「トイレ逆流で自沈」処分も
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)