欧州で自信を失った岩崎亜久竜 好調時の『ステルスプラス』に戻して日本オープン制覇【勝者のギア】

<日本オープン 最終日◇15日◇茨木カンツリー倶楽部 西コース(大阪府)◇7315ヤード・パー70>
 
「日本オープン」でツアー初優勝を挙げた史上7人目の選手となった岩崎亜久竜。ドライバーで300ヤードを超える飛距離に加え、深いラフもパワーで攻略して、石川遼の追撃を振り切った。
昨季は、未勝利ながら国内男子ツアーで賞金ランキング3位に入り、その資格で今季は欧州ツアーを主戦場にプレーしていた岩崎。しかし毎試合のように戦う国がかわる欧州では、気候の違いや食事の問題もあって、本来の力を発揮できず。15試合に出場して予選通過は3試合と苦しんだ。完全に自信を失って帰国し、日本に専念すると決めた2試合目の勝利だった。そんな岩崎の14本を見てみよう。

■1カ月前にドライバーを昨年のエースに戻す

ドライバーは昨年モデルのテーラーメイドの『ステルスプラス』。今シーズンは最新の『ステルス2プラス』でスタートしたが、「ヨーロッパに行って自分がダメなときに、よく分からなくなったので、いいイメージのあるドライバーだったので戻してみようかなと思った」と、昨年の好調だったときに使っていたドライバーで感覚を呼び覚ました。「ここ1カ月くらい使っている」という。

ロフトは10.5度とハードヒッターの岩崎にしては寝ているように感じる。「僕は周りの選手と比べて、球も低くてスピン量も入らないほうだと思っているので、それで10.5度にして補えるように考えています」と話す。

そして、ヘッドが替わってもシャフトは同じ。飛ばし屋の使用者が多い『ベンタスブラック』を2021年から使用している。『ベンタスブラック』を初めて投入した21年の下部ツアー「太平洋クラブチャレンジ」ではプレーオフまで進んで2位となった。

岩崎は『ベンタスブラック』について、「癖がなくて、自分のスイングに合っている気がします。本当に曲がらないです」と気に入っている。3番と5番の2本のフェアウェイウッドも昨年モデルの『ステルス』に『ベンタスブラック』の組み合わせ。フジクラのツアー担当によると「21年からスペックは変わらず、フェアウェイウッドのチップカット量を調整したりする程度です」と、岩崎はもう3年近く『ベンタスブラック』愛用していることになる。

■勝負を決定づけたのは4番アイアン

ウイニングショットとなったのは、最終18番パー5のセカンドショット。1打差のトップでバーディを獲れば勝利が近づく場面で、ドライバーでのティショットは右の林に。2オンは難しいかに思われたが、テレビ塔による救済で左にドロップできたこともあり、4番アイアンでスライスをかけて2オンに成功。難なく2パットでバーディを奪った。これで1つ後ろの組で回る石川との差を2打に広げ、実質的に18番のセカンドショットが勝負を決定づけた。

その4番アイアンは21年モデルのテーラーメイド『P790』。見た目はシャープだが、芯が広く、球が上がりやすい構造となっている。そして、5番からピッチングウェッジまでは、マッスルバックのテーラーメイド『P7MB』をイン。昨年は21年モデルだったが、今年は最新モデルにチェンジしている。

■グリップは大学時代からバックライン入り

ドライバーから50度のウェッジまではバックラインが強調されたゴルフプライド『MCC アライン』を使う。「大学生の時に周りに『いいよ』って勧められて、しっかり握れるのでそのまま替えられずにずっと同じグリップを使っています」という。

55度と60度のウェッジ2本もずっとバックライン入りを使用していたが、日本オープン前週の「ACNチャンピオンシップ」から、バックラインのない『MCC』に変更した。これについては、「ウェッジはフェースを開くときに気になるので替えて、それが良かったので使っています」と話す。

■遅いグリーンに合わせてパターをチェンジ

今回の日本オープンでは、この夏の猛暑の影響によりグリーンがダメージを受け、スピードを出すことができなかった。昨年大会はスティンプメーターで13.5フィートの高速グリーンだったが、今大会は10フィートちょっと。つまり、昨年の4メートルのタッチで打つと、今年は3メートルで止まってしまうことになる。

これを受けて岩崎は、コーチを務める黒宮幹仁氏の助言で、ブレード型のパターからツノ型のスコッティ・キャメロン『ファントムX T5.5 プロトタイプ』にチェンジ。「今週はグリーンが遅くて、ストロークが大きくなって芯を外す確率が増えるので、ミスヒットに強いパターにしたほうがいいと。試したら本当に良かったので使いました」。

データを見てみると、岩崎の大会4日間の平均パットは『1.61』、バーディ数は『20』で、ともに全体1位を記録。多くの選手が苦しんだグリーン上でいかに好調だったかが分かる。

また『ファントムX』は米ツアーではジャスティン・トーマスやマックス・ホーマ(ともに米国)が使用しており、スコッティ・キャメロンのツアー担当によると、「ブレード型のようにナチュラルにイン・トゥ・インのストロークができるので、スムーズに移行しやすい」という。普段はブレード型を使う岩崎も違和感なく投入できたのだ。ショットは慣れ親しんだクラブで調子を取り戻し、パターはグリーンスピードに合わせて替えたことで、悲願のツアー初優勝を達成した。

岩崎は今週、日本開催の米国男子ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」に出場する。「攻めてミスしたときもリカバリー能力がすごい」と欧州選手たちのプレーを目の当たりにし、「自分に足りないところを理解できた」と、ショートゲームの練習時間を増やしてきた。「川村(昌弘)さんのようにヨーロッパで活躍して、最終的には松山(英樹)さんと同じアメリカで」。その成果を米ツアーのフィールドで発揮できるか注目したい。

【岩崎亜久竜の優勝クラブセッティング】
1W:テーラーメイド ステルスプラス(10.5度/VENTUS BLACK 7X、45インチ)
3,5W:テーラーメイド ステルス(15,18度/VENTUS BLACK 8X)
4I:テーラーメイド P790(21年モデル/DG105 X100)
5I~PW:テーラーメイド P7MB(DG EX TOUR ISSUE X100)
50度:タイトリスト ボーケイ SM9(50-08F/DG EX TOUR ISSUE X100)
55度:タイトリスト ボーケイ SM9(56-14F/DG EX TOUR ISSUE S300)
60度:タイトリスト ボーケイ ウェッジワークス プロトタイプ(DG EX TOUR ISSUE S300)
PT:スコッティ・キャメロン ファントムX T5.5 プロトタイプ
BALL:テーラーメイド TP5

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