「戦闘機も戦車もゼロ」それでもハマスがイスラエル軍に「強烈な一撃」できた理由とは?

パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」は、戦闘機や戦車などの兵器は持っていません。にも関わらず今回のイスラエルへの奇襲はなぜ成功したのでしょうか。

そもそも封鎖中のガザ地区からなぜ攻撃が

 パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が2023年10月7日にイスラエルへの奇襲攻撃を行いました。この攻撃は、一般市民を狙ったテロ攻撃とイスラエル軍の拠点や車両を狙った軍事行動というふたつの要素を含んでおり、同日にイスラエル政府はハマスとの戦争状態を宣言しました。

 ハマスが実効支配をしているガザ地区は、地中海東岸に沿った長さ約50km、幅5~8kmの細長い地域で、イスラエルによる分離壁や検問所による封鎖を受けています。通常ならば攻撃用の装備を揃えるのも、隠蔽も困難なこの地域からの侵入を、なぜイスラエル政府は許してしまったのでしょうか。 まず武器調達に関しては、「イランから一定の軍事支援を受けている」と米中央情報局(CIA)は指摘しています。完全封鎖されている地域への輸送ですが、これは地下に張り巡らされた密輸トンネル網で行っているといわれています。 ハマスは、エジプトとの間に地下トンネルを掘り、そこから、武器・弾薬、食料、医薬品、衣服、ガソリン、精密機器、クルマなど、ありとあらゆるものを調達しています。2006年からはエジプトもガザ地区の封鎖を行っており、定期的にトンネルなどの捜索も行うそうですが、それでも間に合わない規模のトンネル網が作られている状態のようです。 さらに複数の情報機関によると、ミサイルやロケット弾を密輸するだけでなく、調達した精密機器などを使用し、ガザ地区内に銃や火砲の弾を作る製造工場も存在していることがアメリカの調査機関から指摘されています。これらの設備により、ハマスはロケット弾3000発以上を撃ちこむという、大規模な先制攻撃を行えたのです。

監視が手薄の時期を狙った攻撃

 イスラエル政府が戦争状態と正式に発表したのは、ちょうど50年前の1973年10月6日から勃発した第四次中東戦争までさかのぼります。このとき、エジプトやシリアを中心とした中東諸国は、やはり今回と同じく奇襲攻撃で序盤の戦闘を有利に進めました。 第四次中東戦争とは違いハマスは戦闘機や戦車どころか、満足な航空機や軍用車両すら持っていませんが、それでも奇襲を成功できたのは、奇襲時がユダヤ教にとって最も神聖な日で「しょく罪の日」とも呼ばれる、「ヨム・キプール」を翌日に控えた安息日だったからです。攻撃当日は、多くの人員が休暇のため、イスラエル軍や警察の警備が手薄だったとの指摘があります。実は50年前の第四次中東戦争でも同じく「ヨム・キプール」の前日を狙われています。 さらに、警備網の破壊はドローンによるところも大きいといわれています。これでガザ地区や隣接するイスラエル領のカメラや通信インフラ、監視塔などを襲撃し、一時的に連絡を麻痺させます。この攻撃はかなり有効だったようで、イスラエル軍は一時混乱状態となり、それに乗じ、ドローンに搭載した爆発物による攻撃などで、迎撃態勢の整っていないメルカバ戦車や軍用車両を撃破、または行動不能な状態にして鹵獲しました。

 さらに予想外だったのが、軍用機などを持っていないと思われていたハマスが空からの攻撃を行ったことです。その方法はパラグライダーやモーター付きのパラグライダーを使用し、ヘリボーン作戦のようなものを行うというものでした。この作戦は、まさかハマスが空からくるわけがないと侮っていたイスラエル軍の意表を完全に突く形となりました。また現地報道によると、ボートを使った上陸作戦もハマスは行ったとのことで、正規軍さながらに陸海空3方面から、イスラエル軍に奇襲を行ったことになります。 とはいえ、序盤こそイスラエル軍を混乱させることには成功しましたが、その後、戦争状態を宣言したイスラエル軍は数十万規模の将兵を動員して反撃を開始。2014年以来のガザ地区での大規模な地上戦も間近に迫っています。

【動画】あ…確かにロケット弾と“人”が飛んでる! ハマス「空からの奇襲攻撃」の様子

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