「賢くハードにプレーした」森保監督の信頼に応えた左SB中山雄太が日本代表で“リスタート”

 11月からスタートする2026年北中米ワールドカップアジア2次予選、来年1~2月のアジアカップを視野に入れ、チームの幅を広げる貴重なチャンスと位置づけられた10月の日本代表2連戦。その初戦となった13日のカナダ戦で待ちに待った男が帰ってきた。

「左サイドから組み立てに参加することで落ち着きをもって攻撃を仕掛けられる部分と、守備の部分も奪いに行く、バランスよく守ることを賢くハードにプレーしてくれた」

 森保一監督にそう言わしめたのは、中山雄太。ご存じの通り、2022年カタールW杯メンバー入りを果たしながら、その直後に右足アキレス腱断裂の重傷を負い、大舞台を棒に振った左サイドバックである。あれから11カ月。中山は過酷なリハビリを乗り越え、肉体的にも精神的にもパワーアップして戻ってきた。

 同じ97年生まれの盟友・板倉滉が「帰ってきたらラガーマンみたいに体がデカくなった。肩幅が物凄い」と驚きの言葉を発した通り、鍛え上げた肉体と強靭なメンタルを本人も復帰戦で遺憾なく発揮するつもりだったに違いない。

 毎熊晟矢、冨安健洋、町田浩樹とともに最終ラインの一角に入った中山は長いブランクを感じさせないほど序盤からスムーズにチームに溶け込んだ。左サイドの縦関係を形成する中村敬斗とは初共演だったが、23歳の若きアタッカーの推進力と決定力を生かしつつ、自らもタッチライン際やインサイドを上がっていく臨機応変さを見せていた。

 左インサイドハーフの田中碧とは長く戦ってきた経験があり、中山が上がった瞬間、田中碧がスペースを埋めるという関係性も良好。パス出しに関しても、機を見て浅野拓磨や南野拓実にロングボールを供給したり、サイドチェンジを出したりと攻撃にもダイレクトに関与。田中碧の4点目も彼のフィードが起点だった。

 「僕としては最低限かなと。自分としては新たなスタートだと思っていますし、遅れている分を取り戻して、レギュラー争いにどんどん食い込んでいきたい。左SB問題をしっかりと解決できるような選手になれるようにやっていきたいと思います」と本人は力強いリスタートを切れたと感じている様子だった。

 第2次森保ジャパンの左SBはここまで伊藤洋輝を軸に、バングーナガンデ佳史扶、森下龍矢らが試されてきたが、基準をクリアしているのは伊藤洋輝1人。森保監督としても中山の復帰を待ち望んでいたことだろう。昨年9月以来、13カ月ぶりの代表戦でこれだけやれたのだから、彼が主要戦力に浮上していくのは間違いない。あとはいかにして突き抜けるか。そこにこだわっていくしかない。

 1つ目指すべきなのは、長友佑都という15年間代表左SBを担ってきた偉大な先人を越えること。もちろん長友と中山はタイプが違うが、全盛期の長友の攻守両面での絶対的安定感と存在感は学ぶべき部分が多いはずだ。

「佑都君からは学ぶことも盗めるところも多かった。ただ、僕の意識としてはもう一個上で、佑都君にもなく、佑都君が持っていたものを兼ね備えようというのはある。佑都君がいなくなった後の左SBに安心感を確実に与えられるようになることが、ケガから戻ってきてからの1つの野望でもあるので、そこはプレーとともに感じてもらえればと思います」と中山自身は非常に高い意識を持って、新たな代表活動に取り組んでいる。

 幸いにして、イングランド2部という環境は強度やハードワーク、激しさを磨くのにはもってこい。伝統のキック&ラッシュの色合いを残しつつ、縦へ縦へ突き進むフットボールを好むファンも少なくない。そこで中山は左ウイングバックを主戦場にしている分、間違いなく縦への迫力や運動量、攻撃力に磨きをかけられるだろう。

 「イングランド2部はやっぱりインテンシティが高いですし、タテに行くスピード感と迫力がすごくある。オランダから移籍した時もそこを求めていきましたし、今後を見ていただければいいと思います」と本人も自信をのぞかせた。

 もともとセンターバックやボランチなど中央のポジションを長くやってきた中山は守備力には定評があったが、攻撃面が見劣りすると言われることも少なくなかった。長友とバトルを演じたカタールW杯最終予選の時もそのあたりの物足りなさと好不調の波が影響して、最後までポジションを奪い切ることができなかった。

 けれども次の3年間は違う。今は伊藤洋輝といういいライバルがいるが、中山が目下取り組んでいるテーマを研ぎ澄ませていけば、ファーストチョイスになれる日もそう遠くなさそうだ。17日のチュニジア戦はベンチスタート濃厚だが、伊藤洋輝がCBで起用され、中山が再び左SBに入る時間帯が訪れるかもしれない。多彩な起用法や組み合わせでも力を出せるように、最高の準備をしてほしいものである。

取材・文=元川悦子

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