
先月30日に行われたレアル・ソシエダとアスレティック・ビルバオによる“バスク・ダービー”において、ピッチ外の“主役”となったビルバオサポーターがインタビューに応えた。10月1日、スペインメディア『Relevo』や同国紙『アス』が伝えている。
今シーズン最初の“バスク・ダービー”が『アノエタ』で行われ、ホームのレアル・ソシエダが3-0でアスレティック・ビルバオを下した。ピッチ上では日本代表MF久保建英や主将FWミケル・オヤルサバルらが主役となった今回のダービーで、ピッチ外の“主役”となったひとりのビルバオサポーターがいる。事の発端となったのは、レアル・ソシエダサポーターによる3点目直後のポズナンダンスでのこと。“青と白”のユニフォームを着た大勢のサポーターが肩を組み、ジャンプするお馴染みのセレブレーションの最中、腕を組んで微笑む“赤と白”のユニフォームを着たひとりの男性が中継で捉えられた。この“バスク・ダービー”を象徴するような映像は瞬く間に拡散され、大きな反響を呼んでいる。
一躍時の人となったアスレティック・ビルバオサポーターのホン・アザンサさんは現在26歳で、職業はエンジニアとのことだ。生涯ビルバオニスタと公言するアザンサさんは「最初は撮られていることに気づかなかった(笑)。その後で私がカメラに微笑むと、カメラマンも微笑みを返したんだ」とし、「私の同僚がラ・レアルのサポーターで、シーズンチケットを持っている。ただその彼が、この試合を見に行くことができなくなってしまってね。そこで彼は、私に『その気があるなら、会員証を貸すよ。楽しんできてくれ』と言ってくれたんだ。私自身はアノエタに行ったことがなかったから、一度体験してみたかった」と観戦する経緯を語った。
また、アザンサさんは「私はフットボールというスペクタクルなものを純粋に楽しみたいだけ。気分を悪くして帰りたくないんだ。日々の生活のなかで苦い思いをすることはあるけど、フットボールはそのひとつではない。情熱だ、悲しむものか。アノエタの雰囲気は幸福そのものだった。負けていても、相手(ラ・レアルのサポーター)が感じる喜びが私のなかにも伝わってきたよ」と告白。続けて「ラ・リーガは38章からなる1冊の本で、それを綴りながら進んでいく。負けることもあれば、勝つこともあるさ。私たちは殴り合ったり、罵り合ったりするつもりはなく、フットボールを楽しむためにここにいるんだ」とフットボールに対する価値観からあの名シーンが生まれたようだ。
元来、ダービーマッチというものは血で血を洗うもの。ラ・リーガで見れば、マドリード・ダービーやバルセロナ・ダービー、そしてセビージャ・ダービーがその際たる例だろう。一方で、バスク・ダービーは毛色が異なる。同ダービーは“民族の祭典”とも称され、帰属意識が高いバスク州を代表する両クラブの対戦は、両サポーターが隣同士で観戦するという光景が見られるほど友好的なものだ。アザンサさんも「それこそが私たちの違いだ。近くのビルバオサポーターらも『Aupa Athletic(頑張れ、アスレティック)』と言っていたし、ラ・レアルのファンは僕のことも応援してくれた(笑)。何も起こらなかったし、不安も一切感じなかったよ。みんなと一緒にいて、とても居心地がよかった」とスタジアムの様子を明かしている。
【動画】微笑みが話題のアスレティック・ビルバオサポーター