日本を代表する守護神へ…広島GK大迫敬介がドイツ戦で得た“自信と課題”

 GK大迫敬介がバックパスを受けると、そこに詰めてきたのはFW大迫勇也。突然の“大迫対決”で、広島の守護神はボールを蹴ろうとした瞬間、ひらりと切り返して相手をかわす。ミスが失点に直結する状況で見せた鮮やかなキックフェイントにスタジアムが響めいた。

 サンフレッチェ広島は16日、明治安田生命J1リーグ第27節で首位のヴィッセル神戸をホームに迎えて2-0で完勝した。3試合連続のクリーンシートを達成した大迫は、「試合に出る以上、完封は自分の最低限の仕事だと思う。それがいま続いているのは、自分としてはいいイメージで試合ができていて、チームとしても勢いに乗っていけている要因だと思う」と胸を張った。

 ただ、神戸戦の被シュート数は4本のみ。DF荒木隼人やDF佐々木翔らが激しいバトルでJリーグ屈指の攻撃陣を封じ込め、広島が誇る鉄壁DF陣の圧倒的なパフォーマンスが光った。

 フル出場した大迫は、「僕はあんまり仕事をしていないっていうのが率直な感想。自分の前のフィールドの選手たちがハードワークしてくれた」と振り返り、「相手は空中戦が強いけど、自分たちのバックの選手も空中戦は強いので、そこでまずしっかりとバトルして、セカンドボールを拾えていたのが今日の結果につながった」と頼りあるディフェンスラインを称えた。

 この試合、大迫はセービングの見せ場が少なかったものの、ビルドアップでチャレンジする姿を見せた。特にキックフェイントから前線の味方につなげたシーンは、直前の日本代表活動でつかんだ自信を感じさせるものだった。

 神戸戦の7日前、日本代表は国際親善試合でドイツ代表と対戦し、敵地で4-1の快勝。昨年のワールドカップに続いて強豪ドイツを倒して連勝を飾った。この歴史的な試合に大迫はフル出場し、チームメイトの堅い守備に助けられつつ、積極的にビルドアップにも関わって勝利に貢献した。「チャンスをもらった中で課題も多くあったけど、その中でも結果を残せたのは自分にとってすごく自信になった」と神戸戦の前日練習後にドイツ戦を振り返った。

 ドイツ戦のスタメン入りを知ったのは試合の2日前。緊張していたというが、大迫にはJリーグで戦ってきた経験と自信があった。「もちろん相手は強豪国だけど、GKとしてはゴールを守るっていうところに変わりはないし、いつも通りの準備をして臨みました」

 ドイツ代表はFWセルジュ・ニャブリやFWレロイ・サネなど強力な攻撃陣がそろい、守備でも精力的にハイプレスを仕掛ける。さらに、相手陣内にロングボールを蹴ったとしても後方にはDFアントニオ・リュディガーやDFニクラス・ズーレなど屈強な守備陣が待ち構えた。

「(ドイツの攻撃陣は)やっぱりスピードもあるし、守備の強度も高い。それに後ろにもリュディガー選手のような能力の高い選手がいるので、(ロングボールを)蹴っても弾かれるっていうのは想定していた。そこをどうやって掻いくぐっていくかっていうのはチームとしても、自分としてもトライした部分だった」

 序盤にキックミスでピンチを招いたものの、仲間のカバーにも助けられながら、試合の中で切り替えることができた。世界レベルの圧力にも屈せず、チャレンジを続けたからこそ得たものがある。

「ドイツのような強い相手に対して、ロングボールで逃げるのは簡単だけど、(ビルドアップのところで)トライできた。もちろんミスもあったけど、試合の中で修正できたことが自分にとって価値があるので、トライして良かったと思う」

 大きな収穫を得て広島に戻ってきた。代表帰り直後の神戸戦では最後尾から攻撃の起点になるなど、さっそく課題に取り組む姿勢を見せた。その中でも落ち着いてキックフェイントで相手をかわし、高精度のロングパスでカウンターを発動したプレーは、大迫の新たな自信を表しているようだった。

「あのプレーがいいか、悪いかはわからないけど、局面でしっかりと落ち着いた対応をすることを心がけていた。ああいうシーンになる前にもっと味方と連携する必要もあったと思う」と振り返り、「日本代表でビルドアップが自分の新しい課題として出たので、そこはチーム(広島)に帰ってトライしていきたいと思っていた。そういう意味では、今日は蹴るところとつなぐところの判断がしっかりできた」と手応えを口にした。

 ドイツでさらなる成長のきっかけをつかんだ大迫は、強い向上心を持って広島でチャレンジを続けていく。「ドイツ戦でまずは(勝利という)結果を出せたのは、自分が広島で積み上げてきた感覚が間違っていなかったということ。でも、新しい課題の方が多く見つかったので、まだまだレベルアップできると思う」

 広島では幾度となくチームのピンチを救い、絶対的な守護神として成長を遂げた。さらなる成長のきっかけをつかみ、向かう先は日本を代表するGKへ。大迫敬介は挑戦を止めない。

取材・文=湊昂大

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