高速道の車線内に「“緑色の線”を引きます」何のため? 正解は「跨いで走る」

高速道路の車線の中ほどに緑の線を試行的に引いた箇所があります。車線を区切る区画線ではなく、「跨いで走る」のが正解。実は多発する事故を防止する安全対策の一環です。

秋田生まれの安全対策

 国土交通省 秋田河川国道事務所が2023年9月11日から、管内の日本海東北道のうち数カ所に、車線内へ「緑色の線」を施工しています。通常、車線を区切る区画線は白かオレンジ色ですが、そうではなく緑色で、しかも車線の中心付近に引かれるという、他地域ではほとんどお目にかからないものです。

 今回は緑色の実線と破線の両方が施行的に設置されますが、どちらも線が引かれる位置は、車線の中央からやや右寄りです。実はこれ、クルマで「跨いで走る」のが正解だといいます。「この線を引くことで、ドライバーは道路中央から適切な距離を保って走行できます」――秋田河川国道事務所はこう話します。 日本海東北道は対面通行の暫定2車線道路で、中央には反対車線への飛び出しを防ぐためのワイヤーロープが設置されています。このワイヤーロープへの接触事故を防止するための安全対策が、今回の緑色の線で、ワイヤーロープに当たらないよう適切な距離を保つための「車両誘導線」なのだそうです。 この線は、秋田大学理工学研究科の浜岡秀勝教授の助言に基づき、まず今年5月に能代河川国道事務所管内の秋田道 鷹巣IC~二井田真中IC間に導入され、今回が2例目。暫定2車線区間が多い“秋田生まれ”の安全対策といえるでしょう。 ちなみに、車線の中央よりやや右側に引かれているのは、「運転席の真下」の位置だといい、中央よりも分かりやすいのではないか、という考えからだそうです。とはいえ、車両(車線)中心に引くのとどちらが効果的なのかは、まだはっきりしていないといいます。 今回は日本海東北道の仁賀保IC~大内JCT間(にかほ市~由利本荘市)のうち4か所に施工。秋田河川国道事務所によると、いずれもワイヤーロープへの接触事故が多いところを選んでいるそうです。 なお、冬季は雪で見えなくなるのでは、とも思えますが、雪の影響もこれから検証するとのこと。ただ日本海沿岸部のため、そもそも積雪はそれほど多くないといいます。

重大事故は減っても… 接触事故が多いワイヤーロープ

 暫定2車線区間は全国の高速道路の約4割を占めます。こうした区間は正面衝突が発生しやすいうえ、いちど事故が起こると車線に余裕がないことから通行止めになりやすいことなどが問題視され、2018年以降、国の主導で4車線化事業とともに、中央分離帯へのワイヤーロープ設置が進められました。 2022年11月までに約1430kmの設置が済み、対向車線への飛び出し事故は2016年度の194件から、以降の約6か年(2022年11月まで)の合計で13件まで激減しました。しかし、ワイヤーロープへの接触事故は、2018年から2022年11月までに6257件も発生しており、接触事故への対策が課題になっていました。「ワイヤーロープの支柱には反射板も付いていますが、それでも事故が多い」と秋田河川国道事務所は話します。今回の緑色の線は、周知用の案内看板も設置しますが、線を引くだけなので低コストで施工できるといいます。 ちなみに、高速道路の車線内に「緑色の実線」を施工した例は他にも。NEXCO東日本が関越道 東松山IC付近で、第一走行車線(最も左側の車線)の両側に緑色の実線を4km近くにわたり施工しています。これは、渋滞緩和のため“キープレフト”を保ってもらうため、つまり右側への車線変更を抑制する目的で設置しているものです。

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