悩める大国のリベンジか、“ドーハの歓喜”の再現か…大注目のドイツvs日本を徹底プレビュー

 現地時間の今月9日(日本時間10日の03:45)、日本代表とドイツ代表が再び相まみえる。昨年のFIFAワールドカップカタール2022・グループステージ第1節で日本が劇的な勝利を収めて以来の対戦だ。日本が再び勝利を飾り世界にその名を轟かすのだろうか、はたまたドイツが強豪国の威信を見せつけリベンジを果たすのだろうか。大注目の一戦をプレビューしてみよう。

[写真]=Getty Images
 
■対戦成績

 

 日本とドイツが対戦するのは通算4度目のこと。昨年のFIFAワールドカップカタール2022での鮮烈な逆転勝利が記憶に新しいが、過去3度の対戦は「1勝1分け1敗」と全くのイーブンだ。昨年の対戦以外では、ジーコ政権時代に親善試合で2度対戦している。
 
横浜で行われた2004年12月の初対戦では、ミロスラフ・クローゼに2得点を奪われるなど、力の差を見せつけられ0-3の完敗に終わった。その一年半後、FIFAワールドカップドイツ2006直前に敵地で対戦した時には、高原直泰の2ゴールで日本が2点のリードを奪った。しかし、再びクローゼにゴールを許すと、残り10分のところでバスティアン・シュヴァインシュタイガーに同点ゴールを決められ悔しい引き分けに終わった。

 だが、昨年のW杯で三度目の正直を果たす。グループステージの初戦でドイツと対戦した日本は前半から圧倒的にボールを支配され、イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ/イングランド)に先制ゴールを許す苦しい展開となった。それでもハーフタイムにシステムを4バックから3バックに変更し反撃に出る。

 75分までに交代カード5枚を全て使い切り、三笘薫(ブライトン/イングランド)、浅野拓磨(ボーフム/ドイツ)、堂安律(フライブルク/ドイツ)、南野拓実(モナコ/フランス)といった攻撃タレントを次々に投入すると、堂安が75分に同点ゴールをマーク。そして83分には一瞬のスキを突いて相手DFラインの裏に抜け出した浅野が、GKマヌエル・ノイアー(バイエルン)の頭上を打ち抜き勝ち越しに成功。大逆転で勝ち点「3」を手にした。
 
 ポゼッション率わずか「26.2%」での勝利。その前日にアルゼンチンを相手に世紀の番狂わせを起こしたサウジアラビアでさえ「31%」だったことを考えると、あまりにも異様な勝ち方だった。ドイツはゴール期待値「3.3」と圧倒しながらも1ゴールしか奪えず涙を呑むこととなったのだが、データサイト『Opta』によると、1966年大会以降でこれだけのゴール期待値を記録したチームが負けるのは初めてのことだったという。

 
 今回は親善試合のため、あの時のような一発勝負の奇策は考えづらいが、それでも日本には十分な勝機がある。というのも、昨年のW杯では両者のFIFAランクの差は「13」(日本が24位、ドイツが11位)だった。それが今では日本は20位までランクを上げ、一方のドイツは15位まで順位を下げており、両者の順位差は「5」まで縮まっているのだ。
 
■世界7位の選手が不在!?

 
 選手の市場価値を見ると、両国にはやはり大きな隔たりがある。データサイト『Transfermarkt』によると、日本人の移籍市場での最高額はブライトンで躍動する三笘薫の3200万ユーロ(約50億円)。続いて今シーズンからラツィオに所属する鎌田大地の2700万ユーロ(約43億円)。そして、レアル・ソシエダの久保建英とアーセナルの冨安健洋が2500万ユーロ(約40億円)で日本人3位に付けている。
 
 対するドイツだが、最大のタレントはバイエルンに所属する20歳のMFジャマル・ムシアラだ。昨年のFIFAワールドカップカタール2022でも日本にとって一番の脅威だった若き才能の市場価値は、何と1億1000万ユーロ(約170億円)にまで上る。これはドイツ人としては最高値であり、世界的に見ても7位の評価額なのだ。とはいえ、現在ムシアラはハムストリングを痛めており、今回の代表メンバーに名を連ねているとは言え、バイエルンのトーマス・トゥヘル監督いわく「代表戦の1試合目(日本戦)は間違いなく欠場する」そうだ。
 
 ドイツ人で2位の市場価値を誇るのは、こちらも20歳の若き才能フロリアン・ヴィルツだ。好調レヴァークーゼンで攻撃のタクトを振るう司令塔は、8500万ユーロ(約135億円)で全世界の18位に付けている。その後は、バイエルンのMFジョシュア・キミッヒの7500万ユーロ(約119億円)、同じくバイエルンのFWレロイ・サネの6500万ユーロ(約100億円)と続く。バイエルンで活躍する高速ウイング(WG)の評価額は、同ポジションを主戦場とする三笘薫(3200万ユーロ)の倍以上となっているのだ。
 
 相対的に見て日本代表戦士の評価は低いものの、久保や三笘の活躍により日本人の全体的な市場価値が日に日に増しているのは間違いない。三笘などは、わずか半年で市場価値が4倍になっているのだ。いつか、日本人選手が100億円級の移籍を果たした日には、日本人全体の評価額も一気に高騰するはずだ。
 
■勝利が必須のドイツ

 
 ドイツ代表は窮地に追い込まれている。昨年のFIFAワールドカップカタール2022で2大会連続のグループステージ敗退に終わったドイツは、サッカー大国の威信をかけて日本を潰しにくる。チームを率いるハンジ・フリック監督についても「2度も日本に負ければクビ」と解任の可能性も囁かれており、今回は何が何でも勝ちに来るはずだ。昨年のワールドカップでは“油断”があったと言い訳できるが、今回は一切の言い訳が通用しない状況だ。
 
 これは男子代表だけの話ではない。ドイツ女子代表も今夏のFIFA女子ワールドカップオーストラリア&ニュージーランド2023で、史上初めてグループステージ敗退という屈辱を味わっており、ドイツサッカー界全体が岐路に立たされているのだ。現地の有力紙『ビルト』も悲観的な見方を示しており、男子代表の現状について「一流のストライカー、一流のサイドバック、一流のNo.6もいない。もはや一流の代表チームではない」と伝えている。
 
 1990年ワールドカップの優勝メンバーである元ドイツ代表のアンドレアス・メラー氏などは、発展しすぎた“過保護”な育成システムを嘆いている。同氏は『ビルト』に対し「ユース世代で分析やデータに重きを置きすぎだ」に語ったうえで、「それも大事だが、もっと大切な基本がある。パス、タックル、技術などね。今はユース年代の指導者が“専門家”ぶり過ぎているんだ」と持論を展開している。
 
 ドイツでは5~11歳の年代の公式戦を廃止する動きがあるというが、それに対しても「完全に馬鹿げている」と反論。メラー氏は自身の経験を引き合いに出しつつ「私が10代の頃は1試合で4、5点は決めていた。『今はそういう時代じゃない。もっとレベルの高い相手とプレーすべき』と言う人もいるが、そんなことない。たくさんゴールを決めることで自信と能力を培うことができるんだ。だから、あまりにも早くに上の年代に混ぜることは反対だ。もちろん、特出した才能は別だがね」と説明している。
 
 そんなドイツには、日本戦に勝たないといけない理由がもう1つある。それはチケットだ。実は日本戦の3日後に控えているフランス戦のチケットの売れ行きが芳しくないそうだ。『ビルト』によると、6万人収容のジグナル・イドゥナ・パルクで行われるフランス戦のチケットは6日の時点で4万7000枚しか売れていないという。だからこそ、日本戦で華々しい勝利を収めファンの信頼を勝ち取る必要があるそうだ。
 
 ちなみに日本戦の会場となるフォルクスワーゲン・アレーナは2万6000人収容のため満員御礼が予想されている!

(記事/Footmedia)

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