潜水艦から発射されるミサイルなぜヤバい? 撃たれた時点でその国もう終わりかも

潜水艦から水中発射される弾道ミサイルをSLBMと呼びますが、この兵器は現在の軍隊において、敵側に使われた場合、最も驚異となる兵器のひとつです。一体どのあたりが恐れられているのでしょう。

思いもよらない場所から撃たれる恐怖!

 2021年10月のこと。北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射に成功したことがニュースで大きく報道されました。このミサイル実験は、日本だけでなくアメリカや西側の欧州諸国でも大きな衝撃を与えることとなり、直後の国連安全保障理事会でも取り上げられることになります。なぜ潜水艦から発射される弾道ミサイルはこれほどの脅威を持たれるのでしょうか。

 まず、水中で発射できるという利点そのものが大きな脅威となります。海中に潜む潜水艦を探し出すのはかなり困難です。それが1隻だけならばなんとかなるかもしれませんが、数隻や数十隻単位で行動されると、全て漏らさず叩くことは現代兵器をもってしても、不可能に近いです。 それらの潜水艦がミサイルという遠くから撃てる武器を持つということは、自国領の近海ではなく、別の全く関係ない海の海中に潜み、遠く離れている敵性国家の地上基地や市街地へ攻撃する可能性もあるのです。空から飛来する大型戦略爆撃機や地上施設に収められている大陸間弾道ミサイル(ICBM)とは違い、どこから撃たれるか分からないという恐怖があります。

そもそも積む弾頭がヤバい!

 そして、ミサイルが積んでいる弾頭そのものが脅威です。SLBMは核戦争を想定して開発されているので、核弾頭の搭載が前提となります。 潜水艦が弾道ミサイルを搭載するようになったのは、1950年代後半にまでさかのぼります。東西冷戦で東側の親玉であったソビエト連邦が1956年にズールー型潜水艦の一部を改造し、地上発射用の弾道ミサイルR-11(スカッド)を改良したミサイルを内蔵できるランチャーを設置したのが始まりです。 アメリカでは、1959年に就役した世界初の原子力潜水艦であるジョージ・ワシントン級に垂直発射が可能なSLBMである「ポラリス」を搭載し、東西陣営共に潜水艦から弾道ミサイルを発射し、核攻撃ができる時代に突入。さらに原子力潜水艦が登場したことにより、燃料補給なしに長期間活動できる体制も確立され、地上発射のICBMや核搭載可能な戦略爆撃機と共に、核戦力の一翼を担うようになります。 2023年現在、SLBMの中でも一番性能が優れているといわれているアメリカの「トライデント」は、最大射程距離が1万2000kmで、アメリカ沿海域からでもロシアと中国全域など世界の大半の場所に攻撃することが可能です。

 これは2万1600km/h(約マッハ17.6)というとんでもない速度で、思いもよらない場所から飛翔してくるため、迎撃も困難です。さらに最新型の「トライデントII」の場合、最大14発の弾頭を一本のSLBMに積むことが可能で、全てを核弾頭にすることもできます。 ロシアや中国、北朝鮮など全てのSLBM保有国が、「トライデント」と同じ性能を持つミサイルを持っているわけではありませんが、仮に核戦争で世界の国々が壊滅した状態でも、潜水艦を発見されていなければ無傷でミサイルを撃つことができます。いつでも報復が可能なミサイルであるSLBMは、海軍でも重要な兵器であると同時に恐怖の対象でもあります。

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