駅通過はNO?「地下鉄の快速・急行」が生まれては消えるワケ 速達列車の運行を阻む”壁”とは

日本の地下鉄で「途中駅を通過する列車」はあまりなく、全て首都圏のみです。しかしかつては関西の地下鉄でも設定されたことがありました。なぜ無くなってしまったのでしょうか。

関西の地下鉄にあった「快速」

 日本の地下鉄で「途中駅を通過する列車」というのは多くありません。2023年8月現在で、以下の路線で速達列車が走っています。・東京メトロ東西線:快速、通勤快速・東京メトロ副都心線:急行、通勤急行、S-TRAIN・東京メトロ有楽町線:S-TRAIN・東京メトロ千代田線:特急(『メトロはこね』などロマンスカー)・都営浅草線:エアポート快特・都営新宿線:急行・横浜市営地下鉄ブルーライン:快速 これらはすべて首都圏の地下鉄ですが、実は関西の地下鉄にも速達列車が運転されたことがありました。 神戸市営地下鉄西神・山手線で1993(平成3)年に運行開始となった「快速」です。新神戸・三宮を出ると、一気に5駅通過して新長田駅、そこから終点・西神中央までの途中7駅のうち、停車は名谷駅のみという「飛ばしっぷり」でした。日中に30分間隔で運行されていました。 関西の他都市に先駆けて導入された「快速」ですが、わずか2年で消滅してしまいます。直接のきっかけは阪神・淡路大震災ですが、路線が復旧したあとも快速が再設定されることはありませんでした。 神戸市に以前取材した際には、「当初は所要時間を6分短縮することで利便性向上を図りましたが、各駅停車とのダイヤの兼ね合いに苦心」したといいます。 浮上した問題点は、まず追い抜き可能な駅が名谷駅しかなく、各駅停車のダイヤにすきまを空けて快速を走らせていたため、各駅停車の運転間隔にばらつきが出てしまったことです。先行列車のすぐあとに来る列車は車内がスカスカになるといった混雑率のばらつきも発生したといいます。 これを解決するためには他の駅を追い抜き可能な構造に改良する必要がありますが、数百億円規模の予算が必要となります。快速を再び走らせてほしいという地元の声もあったといいますが、実現には至っていません。

横浜市営地下鉄の快速が8年続いているワケ

 いっぽう、同じ「快速」を走らせている横浜市営地下鉄は、2015年の運行開始以来、減便など特段の変化には至っていません。なぜ問題なく運行できているのでしょうか。 横浜市は「ブルーラインは全線が約40kmという長大路線であり、速達性を求める利用者の声もあったことから導入に至りました」と話します。 快速のダイヤは、1時間8本の各駅停車の「すき間を縫う」形で設定。末端部である戸塚以遠、新羽以遠は各駅停車にして、先行列車を踊場止まり、新羽止まりにすることで、ダイヤの詰まりを防いでいます。 しかし神戸市と同様、やはり追い抜き可能な駅が限られているため、現在の「30分間隔、平日は昼間のみ、土休日は9時~20時半」という運行形態が精一杯だといいます。 都営新宿線の急行では、ことし3月のダイヤ改正で日中の急行がすべて消滅しました。なお、東京メトロ有楽町線では、2008年から池袋~和光市間で小竹向原駅のみに停まる「準急」がありましたが、わずか1年半で廃止されています。刻々と変化する利用状況の中、限られたダイヤと設備の余裕で設定される「地下鉄の速達列車」は新たに生まれたり、また突然増減したりする不安定な存在と言えるでしょう。

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