“座席鉄”が見る「スペーシアX」コックピットスイート&コンパートメント 広~い個室、果たして使い勝手は

東武鉄道の新型特急「スペーシアX」が運行開始しました。6種類ある接客設備に“座席鉄”の筆者が実際に乗車し、その設備の特徴を紹介します。この記事は最上級設備「コックピットスイート」「コンパートメント」についてです。

コックピットスイート 人の手を介したおもてなし

 東武鉄道の豪華特急「スペーシア」のブランド名を継ぐ新型特急として、2023年7月15日より運行開始した「スペーシアX」。6種類ある接客設備は、国内特急でも有数なバリエーションであり、それぞれ特色がある設備です。“座席鉄”である筆者(安藤昌季:乗りものライター)は早速、営業列車に乗車。6種類の設備全てを体験したので、その座席やサービスの特色について、紹介します。

 6両編成の6号車は「コックピットスイート」「コンパートメント」です。「コックピットスイート」は運転席のすぐ後ろに位置し、11平方メートルの広さを持つ私鉄最大の個室です。スタンダードシート料金+個室料金の1万2180円で利用でき、浅草~東武日光間で1人利用なら1万5520円、最大の7名利用なら1人5080円で利用できる計算です。 個室内には1人掛けソファが4脚、3人掛けソファが1脚あります。3人掛けソファにはクッションが2つ置かれています。座席の場所は動かせます。やや堅めですが、座り心地のよいソファです。 個室の奥行は4.1m、幅は2.66mもあり、六角形の窓が6つと、ガラス張りの運転席により、かなりの解放感があります。立って初めて前面が見える仕様は、コックピットラウンジと同じです。なお、クッションを2つ重ねにして1人掛けソファに座ると、筆者は座ったままでも結構見えました。 列車が浅草駅を出発すると、まずは車掌の挨拶があり、続いて特別な乗車証と飲み物のコースターが手渡されます。ボードを持って記念撮影をしてくれるサービスもあり、人の手を介した素晴らしいおもてなしです。 ただコックピットスイートでも、カフェの優先予約権はありません。筆者は車内予約に失敗したため、残念ながらコースターを使う機会はありませんでした。せめて個室には、カフェからデリバリーがあればと思いました。 列車は進み、迫力ある車窓が続きます。大変楽しい旅ですが、1点気になることがありました。 それは、停車駅を過ぎるたびに、車掌がノックして個室内に入って来ることです。車掌室が運転席内にあるため、車内巡回をした車掌が車掌室に戻るたびに、どうしてもコックピットスイート内を通過せざるを得ないのです(上り列車では目の前が運転席のため車掌の通り抜けはない)。個室客のプライベート空間を維持するならば、車内に別途 車掌室を設け、客室内を通過しない構造にすることが必要だと思います。

コンパートメントはどんな設備?

 前述の復路にて、筆者は鬼怒川温泉発の「スペーシアX8号」でコンパートメントに乗車しました。車両の入口となるデッキ上部はデジタルサイネージで、青空が見え爽やかにして解放感があります。「スペーシア」の個室と同じく、最大定員4名の個室です。スタンダードシート料金+6040円で1人から利用できます。なお、「スペーシア」の個室は1室3770円(JR直通列車だと6300円)ですので、特急料金が290円高いことを考えると約1.7倍。なかなか強気の価格設定です。

 個室内は奥行が1.56m、横幅が2.21mほど。「スペーシア」の個室は奥行1.74m、横幅2.03mなので、個室の横幅が広く、奥行きが狭くなっています。 室内には折り畳み式の大型テーブル、コの字型のソファ、大型テーブル、コンセント付きの電気スタンド1つ、マジックテープで固定された肘掛けが2つ、クッションが1つ、暖房の温度調整が1つ、パンフレット立てが1つ備え付けられています。 側壁の大半が濃い赤、側窓がある壁が濃い銀色、天井は黒で、シックです。窓は六角形で、幅1.1m、高さ1.04m。「スペーシアX」の側窓としては最大の広さです。ただ、目線の高さは六角形の狭い部分となり、やや景色は見えにくいです。六角形窓には「外からのぞきこまれにくい」というメリットがありますが、個室内が狭くも感じられ、悩ましいところです。 居住性については、気になるところが3点あります。ひとつは、最大の特徴である「コ」の字ソファです。4人乗車を想定した際に、どのような席配分で座ればいいか悩みました。同行者と、扉寄りに中肉中背の男性2人で並んで座ってみましたが、かなりの圧迫感がありました。部屋のサイズ感としては狭くはありません。原因を探ったところ、電気スタンドが置かれている個室の側壁部分で12cm分の厚さが消費されており、座席幅がやや狭くなっているのです。

荷物スペースがあるとなお良いかも

 そこで今度はコーナーに座ってみました。すると、今度は大型テーブルの足2本と着席者の足が干渉します。足は1本にしてほしいところです。側窓を背に座れば足は干渉しませんが、今度は景色が見えません。また、側窓の前には背もたれがないので、この着席の仕方は想定されていないものと考えます。 また、ここは好みの範囲でしょうが、座席の背もたれ高さが40cmと低くて頭が支えられず、堅めのセッティングであることもラグジュアリー感と相反するように感じられます。座席とテーブルの配置には、一考の余地があるのでしないでしょうか。

 2点目は、広げられる大型テーブルです。お菓子やパンフレットを広げたり、またはカードゲームをしたりするには最適ですが、逆にこの広さが災いし、広げた状態だと出入りが難しくなります。マジックテープで固定された肘掛けを剥がせば出入り可能なので、その案内が卓上などにあると、利用者としても便利なのではないでしょうか。 3点目は、個室内に荷物置き場がないことです。デッキには大型荷物置き場が用意されているのですが、これは個室の外であり、また個室内に案内もないため、どうしても心情的障壁が大きいと感じます。筆者の見た範囲では、荷物置き場の利用率も高くないようでした。 解決策としては、「スペーシア」個室のように座席の上に荷物棚を設置するか、座面の下に空間を設けるなどし、荷物スペースを確保してはいかがでしょうか。 さて、3回に渡り「スペーシアX」の設備を紹介してきました。外観、内装ともに30年ぶりのフラッグシップ特急とあって素晴らしいので、長く愛される特急列車になってほしいと願います。

externallink関連リンク

“座席鉄”が見る「スペーシアX」 スタンダードシート&ボックスシート 33年の進化実感 ただ好みも分かれる? 各駅停車で385km、8時間21分「日本一長い鈍行」 ひとつはもう乗れない可能性 特急の運転士はベテランなのか? 普通列車と特急 運転が難しいのはどっち?
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)