バックティは誰でも使ってOK? プレーヤーの判断に委ねられる現状が災いをもたらす

昭和の頃のゴルフの慣習のほうが良かったなぁ、と思ってしまうゴルフシーンがいくつかあります。バックティの扱いはその代表例のひとつ。昭和のゴルフでは、メンバーコースでも限られた競技とごく一部のメンバーだけにしか、フルバックティは使う許可が下りない憧れの場所でした。
バックティの使用条件が、4人1組のハンディキャップの合計が60以内という決まりがあるコースもありましたし、キャディを2名以上付ける決まりがあったり、平日でハンディキャップが3以下のゴルファーのみで、他の同伴者は使用不可ということさえありました。

平成になって、セルフプレーが当たり前になっていく中で、勝手にバックティを使う違反者が出現し、なし崩し的に誰でもバックティを使用してもOKという流れが大きくなり現在に至ります。令和になり、打球事故が多発することや、訴訟などの影響もあり再びバックティを管理する流れが始まっています。しかし残念なことに、コースによっては、営業上の理由でバックティの使用を黙認せざる得ないという悩みを抱えているところもあるようです。

コースが混雑しているときに、後続組が追い着いて来ることがありますが、後ろの組が前方の白ティからプレーしている場合、カート道路の設計によって、バックティの前に後続組のカートが止まるケースがあるのです。プロでも飛球線の近くに人がいるのは嫌なものです。

少し知恵があればバックティで回っているプレーヤー達は、自分たちのカートをカート道路の手前に止めておくことで、後続組みのカートが前に出ないようにできるのですが、無邪気なバックティ信者ほど、そういうテクニックは持っていなかったります。(というよりおそらく知らない)

結果として、打ったボールが前の組に当たる事故が起きます。例えミスショットでも、距離が近いことが多いので、後遺症が残るような大事故になることもあるのです。

そもそも、「バックじゃなきゃゴルフじゃない」と言っている中で本当に該当するゴルフができる人は数パーセントでしょう。あとは裸の王様の国民みたいなもので、上手い人やゴルフの知識が豊富な人の真似をして、知ったかぶっているだけ。

上級者の名誉のために書きますが、本当にハイレベルなゴルファーで、バックじゃないとダメ、という人はほぼ存在しません。ハイレベルなゴルフをする人ほど事象を受け入れる能力が高いからです。どのティでもゴルフはゴルフ、と言い切れるほうが上級なのは、ホンモノの知性があればわかる話です。

実力が伴わないのに、バックティでゴルフをすることに固執する人のことを“バックティ馬鹿”と呼んでいます。事故が起きないのは運が良いだけで、ヒヤッとすることが起きているのにそれにすら気が付かないのが特徴です。

意識している人と、まったく無意識な人がいますが、バックティ馬鹿になって抜けられなくなってしまう理由のひとつが、距離の長さを自分のスコアの悪さの言い訳にしているから。「白ティからなら、いつでも100は切れるけど、バックティではそうはいかないんだよ」。こんなセリフを恥ずかしいと思わずに口にできる人は、おそらく白ティからでも100を思うようには切れないものです。

バックティを自分の下手さの言い訳に使うなんて、言語道断でバックティへの冒涜ではないでしょうか。「こっちは客なんだよ。高い金払っているんだから選択する権利がある」と言って、押し切る風潮があることもコース関係者から聞かされます。

金を払えば文句はないだろう、と威張れるほどに大金を払っているケースは稀でしょう。すべてのスタート枠分のプレー代を払ってコースを貸し切るならまだしも、1人分を普通に払って威張ろうという時点でバックティを使う資格がないような気がします。

安全にゴルフを楽しむ手段として、また恥ずかしい誤解をしないために、昔のようにバックティは、憧れの“遙かなる場所”であって欲しい、そう切に願ってしまいます。ゴルフは、残酷に自分の立ち位置を教えてくれる、ありがたいゲームなのです。

(取材/文・篠原嗣典)

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