
ゴルファーにとってゴルフウエアは、普段着とは違い、プレーするときに着るため購入するもの。いってみれば “よそゆき” 感覚で買う服だ。もちろん個人差はあるとはいえ、ラウンドする機会が多い人であれば、季節の移り変わりもあり、上下ひとそろえというわけにいかない。そのため新しいゴルフウエアを買い足していくことになる。
ところが最近増えているチェーンの古着屋で、ちょっと奮発して買ったゴルフウエアを持ち込んだところ、タダ同然の買い取り金額を示され唖然としたり、ゴルフウエアは買い取り対象として高い金額は出せないと謝られたりした経験はないだろうか。チェーンの古着屋ではゴルフウエアの価値をわかってくれない場合も多いのだ。
好調といわれるリユースのウエア(古着)だが、やはりその中心にあるのは、いわゆるブランドものや、流行りの服。決して安いとは言えないものも多いゴルフウエアは、そうした中ではまだニッチな存在。ブランドの認知もトレンド感もゴルファーがイメージする価値観とはギャップがある。それにおしゃれ好きな若い世代のような “節約のためではない古着“ のニーズもゴルフウエアの世界では見受けられない(以前、色落ちやほつれといった古着風ディテールを生かしたゴルフウエアが注目されたが、大きなムーブメントにはならなかった…)。
ならば買い取り、販売のターゲットをゴルファーにしぼった、ゴルフウエアを専門とするリユース業者であれば、ゴルフウエアの価値を理解してもらえるのでは…。そこで2014年の秋から、ゴルフウエアの買い取り、販売をするWEB、店舗を手がける「ストスト」を運営する株式会社一条の辻本恭平さんに話を聞いてみた。ちなみに現在「ストスト」では年間約22万点を買い取り、店舗・WEBを合わせて約20万点もの販売実績があるという。「ストスト」だけでもこれだけのゴルフウエアがリユースされているというのは驚きだ。
「買い取り、販売で人気のアイテムはやはりポロシャツですが、このところモックネックシャツの需要が高まっています。ブランドとしては “パーリーゲイツ”、“マスターバニーエディション” の人気は根強く、ブランドアンバサダーであるキムタクが着用する “マーク&ロナ” もすぐに売れていきます。またラグジュアリーな魅力がもち味の “ウノピゥ” や“ラッセルノ” も人気上昇中ですね」
この辻本さんの話はまさに昨今のゴルフウエアの人気やトレンドをそのまま反映している。コースではポロシャツではなく、襟のないモックネックシャツを着ているゴルファーが増えているし、“パーリーゲイツ” や “マスターバニーエディション” には多くのファンがついている。またブラックやモノグラム柄を生かしたラグジュアリースポーツ系のゴルフウエアの注目度も上がっている。「ストスト」にはゴルフウエアの相場やトレンドを知り尽くしたスタッフが在籍しているそうだが、まさにその眼力を感じさせるような傾向が表れている。いわゆるチェーンの古着屋では汲み取ってもらえないゴルファーならではの価値観が重視されているのだ。
買い取ってもらうとしても、購入するにしても、リユースで気になるのはゴルフウエアのコンディション。フリマアプリやオークションサイトを利用するとき懸念するポイントでもある。「ストスト」では、ゴルフウエアの状態をN(新品同様)・S(未使用)・A(未使用に近い)・A-(目立った傷や汚れなし)・B(やや傷や汚れあり)・B-(傷や汚れあり)・C(使用感または目立つ傷や汚れがある)・D(ジャンク品)という8段階に分類して買い取り・販売時にはそれぞれどのカテゴリーに分類されているかを明記している。
辻本さんによると「A-は何回か洗濯をしたような着用感はあるが、パッと見て汚れなどに気づかないような状態、Bは襟に5ミリ程度のシミとか、目に留まる程度の汚れがある状態が目安です。C・DランクのウエアはWEBでは扱わず、実店舗のみで販売されています。フツーに着用して生じた汚れや毛羽立ちが買い取りのとき大きな減額になることはありません。また買い取り後には、専門スタッフによるクリーニングをはじめとする行き届いたメンテナンスを行われるので、タバコのニオイなども減額対象にはなりません」
こうした話を聞いていると、着なくなったゴルフウエアを処分するときも、購入するときも、ひと手間かけてゴルフウエア専用のリユース業者に相談するのが賢い選択だと思えてくる。さらに昨今の傾向を辻本さんが教えてくれた。
「ゴルフウエアは生ものと同じ感覚とでもいうのでしょうか。シーズンのはじまりに新品のウエアを何枚か購入して、シーズンの終わりにはそれらをすぐに買い取りに出す。それを元手に次のシーズンの新作をまた購入するといったサイクルを実践しているゴルファーも増えているようです」
シーズンごとに新作のウエアを着てコースに立つ。おしゃれ番長のようなゴルフスタイルは無縁な世界だと思いきや、リユースを上手に活用すれば手が届く、新しい贅沢となるかもしれない。
リユースの買い取り・販売業者だけでなく、ゴルフウエアを生産するブランドもリユースのゴルフウエアに注目している。「ストスト」のリユースでも人気ブランドとして名前が挙がった「パーリーゲイツ」もそのひとつだ。
“パーリーゲイツ リユナイテッド” と題されたこの取り組みは、期間限定で「パーリーゲイツ」のリユースウエアのみを取り扱うのだが、その趣旨は過去に発売したコレクションを新しいオーナーに受け継ぐことで、ユーザーとともに持続可能な社会実現に貢献するというもの。
さる6月21日から7月31日まで特設サイトで、さらに7月21日から7月31日まで“FLAGSHIPSHOP パーリーゲイツ丸の内店” でも開催された。その様子をパーリーゲイツのPRを務める松井麻緒さんに聞いてみた。
「リユースとして販売したウエアは、ブランドのコンペである “パーリーゲイツカップ” に参加したユーザーさんやスタッフから買い取りました。対象になったのは10年くらい前までのパーリーゲイツのウエアで、今回の店頭では80点ほどのウエアを販売しました。販売価格は当初の価格の60~70%オフくらいが多かったと思います。4,000円台のポロシャツもありましたね」
「パーリーゲイツ」のゴルフウエアは1か月単位で新作が登場し、数量限定のスヌーピーやディズニーとのコラボアイテムなどがラインナップされることも。そこがブランドの人気を支えているのだが、そのサイクルの早さゆえに時期を逸して買い損ねてしまうリスクもある。
「あのとき買えなかったけれど、好きだったウエアにまた出会えたとか、ユーズドとはいえウエアのコンディションがいいので、リユースという意識ではなく、過去のパーリーのウエアをあらためて買う感覚だったといった声をいただき、お客さまにも好評でした」と松井さんは話す。
売るにも買うにも懐に優しく、しかも昨今叫ばれるサステナビリティ意識にも呼応する。リユースのゴルフウエアと上手につきあえばゴルフライフを充実させることができる。新品でもリユースでも、はじめて袖を通すウエアでティーイングエリアに立てば気分はアガるのがゴルファーなのだから。