1年後に迫った2024年パリ・オリンピック。9月にはアジア一次予選に当たるAFC U23アジアカップカタール2024予選がバーレーンで行われる。
6日にパキスタン、9日にパレスチナ、12日にバーレーンと中2日の過密日程を強いられる日本だが、インターナショナルマッチデー（IMD）ということで、欧州組も参戦できるのは朗報だ。
大岩剛監督率いるチームの重要戦力の1人と位置付けられるのが、斉藤光毅（スパルタ・ロッテルダム）。2021年1月にベルギー2部のロンメルへ赴き、1シーズン半を過ごした後、昨夏にはオランダ1部のスパルタ・ロッテルダムへステップアップ。26試合出場7ゴールという確固たる実績を残している。
「最初は自分の特長をなかなか理解してもらえなくて、出場時間も少なかったんです。でも、ドリブルの仕掛けや裏に抜けるプレーなど、自分のストロングポイントを練習から出していって、だんだん分かってもらえた。最初は途中出場からで、徐々にスタメンで出られるようになって、結果がついてきたという感じですね」と彼は新天地適応の経過を振り返っていた。
改めて昨シーズンの流れを見ると、9月3日のフォレンダム戦でオランダデビューを飾り、3戦目のフローニンゲン戦で初先発。出場11戦目の1月21日のカンブール戦でようやくゴールを奪った。そこからは一気に信頼を勝ち取り、2月19日のアヤックス戦以降は12戦連続スタメン。ゴール数も7まで伸ばした。フェイエノールト、PSV、アヤックス、AZのトップ4からは惜しくも得点できなかったものの、一定の存在価値を示したのは間違いないだろう。
「3トップの左ウイングをやっていますけど、攻撃陣がお互いのプレーを理解して動けるようになったのは大きいですね。自分が自由に動いても相手が合わせてくれたりとか、逆に相手が自由に動いて自分が合わせられるっていういい関係を築けている。それをより良いものにするために、ここからまたコミュニケーションを取ってやっていきたい。お互いを理解し合う期間を短くしていくことが1つの課題だと思います。今季は2シーズン目なので、最初からエンジン全開で行くつもりです」と2023－24シーズンを1カ月後に控えた斉藤は目を輝かせた。
目標は「昨季越えの数字」。オランダ1部でのゴール数は8点以上、アシスト数は6以上ということになる。伸び盛りの21歳のアタッカーならば、十分クリア可能だと言っていい。前半戦から快進撃を見せられれば、冬の移籍市場でオランダ上位クラブ、あるいは欧州5大リーグ行きも見えてくるかもしれない。
そうなれば、パリ五輪どころか、A代表入りにも手が届く。日本代表の左サイドのエースである三笘薫（ブライトン）らとポジション争いをすることも現実になるだろう。理想的な成功ロードを歩めるように、斉藤は一歩一歩、確実に成果を残していく構えだ。
「三笘選手のことは素直にすごいって思います。世界最高峰リーグで日本人の選手が活躍しているのは自分にとって励みになりますし、もっと頑張らなきゃという危機感も生まれます。でも他の選手と比べてしまうといいことはない（苦笑）。自分のプレーにフォーカスして、自分がどうしたら活躍できるかを真剣に考えたいんです。五輪代表でもそうでしたけど、気負い過ぎてしまうのはよくない。高い目標設定をすること自体はいいですけど、まずは昨シーズンの自分を越えるところからしっかりやっていきたいです」と地に足を着けて着実に前進していく重要性を口にする。
スパルタは昨シーズンまで率いていたモーリス・スタイン監督がアヤックス指揮官に就任。今シーズンからはコーチだったイェローン・ライスダイク監督が采配を振るうことになる。斉藤とは昨シーズン1年共闘した間柄で、彼のドリブル打開力や相手の裏を取る動き、フィニッシュの精度などをよく知っているはずだ。となれば、思い切って自分のプレーを前面に押し出せばいい。そういった追い風も受けつつ、8月12日の新シーズン開幕、ズヴォレ戦に向け、コンディションを引き上げていくことが肝心だろう。
「毎試合出る選手というのは、『使ったらチームを勝たせる選手』だと思う。監督から必要な存在だと思われるように、しっかりやっていきたいです。長いシーズンを戦っていれば、必ず苦しい場面も来る。そこでチームを助けられる選手になって、結果を残したいと思っています」
そういった試行錯誤が自身のプラスになり、日本サッカーのためになる。U－22日本代表の大岩監督も斉藤の国際経験を頼りにしている部分は少なくないはずだ。今シーズンはキャリアのターニングポイントになる可能性が高いだけに、急激な成長曲線を描いて、日本の看板スターの仲間入りを果たしてほしいものである。
取材・文＝元川悦子
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