第2次森保ジャパン初出場で一発回答、カタールW杯主軸FW前田大然の現在地

 FIFAワールドカップカタール2022でドイツ、スペイン、クロアチアとの重要な3試合に先発出場し、凄まじい鬼プレスを見せ、クロアチア戦では先制点を挙げた韋駄天FW前田大然。

「(川島)永嗣さんがスペイン戦前のミーティングで泣いて、(長友)佑都くんや(吉田)麻也くんも一体感を作ってくれて、本当に凄い大会なんだって分かった。それを経験した分、次(2026年北中米W杯)も絶対に行かなきゃいけないと思いました。自分は戦う部分やスピード、駆け引き、個人で負けないという部分に磨き上げなきゃいけないし、もっと引き出しを増やさなきゃいけないと感じます」

 今年2月、彼はしみじみとこう語っていた。

 しかしながら、3月に本格始動した新生・日本代表ではなかなか出番に恵まれなかった。いったん合流しながらケガで途中離脱という悔しさを味わったからだ。

 その後、所属のセルティックで国内三冠を達成。彼自身も公式戦13ゴール7アシストとスコアポイント20という数字をマーク。「得点もアシストもできる選手」という理想像に一歩近づいた。

 それだけの実績を残したのだから、今回の6月シリーズは三笘薫と左FWで併用されるのではないかという期待も高まった。実際、練習でも前田はずっと左サイドに陣取り、クロスやチャンスメイクを担っていた。本人も「薫とは違った色合いを見せる」と闘志を燃やしていたに違いない。

 だが、15日のエルサルバドル戦はまさかの出番なし。チームが6-0で圧勝し、代表2戦目の中村敬斗や同僚の古橋亨梧がゴールを挙げる姿を目の当たりにして、「自分もやってやる」という思いが高まったことだろう。20日のペルー戦では満を持して先発するのではないかという見方も高まっていた。

 ところが、ふたを開けてみると、2戦目もスタメンは三笘。背番号7は左サイドを無双し、勝負を決定づける2点目を奪い、攻撃の絶対的キーマンであることを強烈に印象付けた。

 前田は「薫とはプレースタイルが違う」とは言うものの、「自分は左ではまだまだだと思っている。チームでもっとできるという自信をつけてから、代表でやる機会があればやりたい」と発言。現状での序列の低さを潔く認めていた。

 それでも、そのまま終わらないのが、雑草系FWのいいところ。61分から古橋に代わってトップの位置に入ると、いきなり相手CBにハイプレスをかけ、遠藤航がボールを奪うと、一気に縦に抜け出し、相手DFと交錯。前線でつぶれる形になり、フォローした鎌田大地から三笘へとつながり、最終的には伊東純也が3点目を奪った。

「結果的につぶれてマイボールになったので、自分のおかげかは分からないけど、チームとして背後を狙うというのは航くんも見てくれていた。代表ではずっとFWをやっていたので、やり方はだいたい分かっていたので問題なくできました」と彼はW杯以来の最前線で躍動感と強度を押し出した。

 さらに75分には、堂安律が久保建英を狙ったパスがDFに当たり、久保がハイプレスを仕掛けてミスを誘った瞬間、前田が抜け出し、GKとの1対1を確実に沈め、ダメ押しとなる4点目を挙げたのだ。

「タケがプレスをかけてくれて、うまく僕の前に転がってきた。置きどころもうまくいったので、『ループか、普通に打つか』と考えたけど、普通に打った。相手に当たりましたけど、自分らしく決めることができた。あれを決めるか決めないかが大きいので、結果を出せてよかったです」と本人も代表3ゴール目を心から喜んだ。

 約30分間のプレーで2つのゴールに絡む仕事をしてしまうあたりは、やはり「持ってる男」。そういった勝負強さを森保一監督も高く評価しているからこそ、今一度、FWで使おうと考えたのだろう。

 6月シリーズでは結局、上田綺世、古橋、前田の3人が最前線でプレー。混とんとした状況は依然として続いている。浅野拓磨や今回選外となった町野修斗らも含め、ここから誰が抜け出していくのか…。前田もトップと左サイドの両方を見据えながら、定位置確保に突き進んでいく構えだ。

「僕は得点、アシストをしていかないといけない」と神妙な面持ちで言う。生粋のチャレンジャーは一つひとつに強くこだわっているのだ。来季セルティックはブレンダン・ロジャーズ監督の就任が決定し、前田自身がどこで使われるか未知数だ。もしかすると、欧州内移籍もあるかもしれない。ハリー・キューウェルコーチに付きっ切りで指導を受けた左サイドの打開力も生かしつつ、幅広いプレーで結果を残していければ、クラブでも代表でも必ず序列は上がるはず。そうなるように、貪欲に泥臭く、前田大然らしいトライを繰り返しながら、高みを目指してもらいたい。

取材・文=元川悦子

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