北朝鮮のミサイルは撃ち落とせるの? Jアラート鳴る時代にどう対応 それでも主眼は「抑止力」

北朝鮮によるICBMの脅威にさらされてから四半世紀。特に近年は高頻度で発射実験を繰り返しています。日本が迎撃システムを構築してからは約20年ですが、その間ミサイル防衛はどのように進化してきたのでしょうか。

高まる北朝鮮の脅威

 2023年4月13日、北朝鮮が首都平壌付近から新型の固体燃料推進方式の「大陸間弾道ミサイル(ICBM)」1発を発射し、およそ1000km程度飛翔したところで日本海に落下しました。さらに、現在北朝鮮が準備を進めているとみられる軍事偵察衛星打ち上げ用ロケットの発射に備えて、4月22日には浜田防衛大臣が、日本に部品などが落下してくるなど万が一を想定した準備を自衛隊の部隊に命じるなど、情勢がにわかに緊迫化しています。

 このように、現在日本は北朝鮮による弾道ミサイルの脅威にさらされていますが、これに確実に対応すべく整備が進められてきたのが、自衛隊による「弾道ミサイル防衛(BMD)」です。どのような仕組みなのでしょうか。 BMDは、敵が発射した弾道ミサイルを、迎撃ミサイルなどを使って撃ち落とすシステムのことです。日本のBMDは、1998(平成10)年に日本列島を飛び越える形で飛翔した北朝鮮による弾道ミサイル「テポドン1号」を受けて急ピッチで検討が進み、2004(平成16)年から整備が開始されました。 日本のBMDは、航空自衛隊の航空総隊司令官をトップとする「BMD統合任務部隊」が指揮し、日本における防空システムの頭脳ともいうべき航空自衛隊の「JADGE(自動警戒管制システム)」によるコントロールのもと、三自衛隊が連携して実施されます。

2段構えの迎撃態勢

 具体的な流れとしては、アメリカ軍が宇宙空間に配置している早期警戒衛星がまず弾道ミサイルの発射時に放出される熱を探知し、「早期警戒情報(SEW)」を発信。アメリカ軍の通信システムと連接されているJADGEがこれを受け取ると、航空自衛隊の早期警戒レーダーが弾道ミサイルの飛んでくる方向の捜索を開始し、これを追尾します。 一方、それらの情報は海上自衛隊のイージス艦にも共有され、自艦のレーダーでも弾道ミサイルを捕捉します。そして、まずはこのイージス艦が搭載する迎撃ミサイルの「SM-3」により、大気圏外の中間段階(ミッドコースフェーズ)での迎撃が行われます。 それをかいくぐってきた場合、今度は地上に配備されている航空自衛隊の迎撃ミサイル「PAC-3」が終末段階(ターミナルフェーズ)での迎撃を行います。このように、日本のBMDはJADGEによる一元的な指揮、統制のもと、2段階での迎撃を行う仕組みとなっているのです。 しかし、近年では北朝鮮も弾道ミサイルのみならず様々な兵器の実験や配備を行い、その脅威は多様化しつつあります。たとえば、既存のBMDシステムでは迎撃が難しいとされる極超音速兵器や、低い高度を飛翔する巡航ミサイルなどを実際に開発し、発射試験を行っています。また、日本にとって最大の軍事的脅威ともいえる中国は、すでにこの種の兵器を以前から実戦配備しています。●脅威に合わせて進化する日本の防衛態勢 そこで、弾道ミサイルのみならず、航空機や巡航ミサイル、さらには極超音速兵器などあらゆる脅威に対応すべく、2022年12月に日本政府が発表した「国家防衛戦略」で整備が明言されたのが「統合防空ミサイル防衛(IAMD)」です。IAMDは大まかに以下の要素から構成されます。(1)敵による攻撃のもとを断つ能力(2)敵のミサイルなどを迎撃する能力(3)敵による攻撃を受けた際の被害を最小限化する能力(4)全体の司令塔としてこれらをネットワークで結び付ける指揮・通信(C2)システム これまでのBMDでは、弾道ミサイルの迎撃に特化した能力が整備されてきました。しかし日本も一定の要件の下で、敵のミサイル発射装置や航空基地などを攻撃する「反撃能力」の保持が可能となったことで、IAMDでは敵のミサイルや航空機を地上で破壊することにより、迎撃能力に関する負担を軽減することができます。さらに迎撃そのものに関しても、JADGEを中心とするネットワークで一元的にコントロールすることにより、空から迫るあらゆる脅威に対して効率的に対処することができるようになるのです。

 これまでのBMDに加えて様々な脅威に自衛隊が一丸となって対処するIAMDは、もともとアメリカにおいて推進されてきた構想です。そこで、今後は日米がより緊密に連携する形でこの取り組みが進められることになります。 これにより、北朝鮮や中国は自国の攻撃が十分な効果を得ることができないと考え、結果として攻撃そのものをためらう、つまり抑止されることが期待されます。日本の安全は、より一層強化されることになるでしょう。

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