ブルーインパルスの「スモーク」どんな仕組み? ショーの華になるまでの「マル秘実験」とは

航空自衛隊のブルーインパルスのアクロバットに欠かせない存在である「スモーク」。どのような仕組みで発生しており、どのように実装されたのでしょうか。

仕組みはシンプル?

 航空自衛隊「ブルーインパルス」の2023年スケジュールが公開されました。航空祭などイベントの盛り上がりが期待されます。そのブルーインパルスのアクロバットを、よりダイナミックに見せているのが「スモーク」、どのような仕組みで発生しているのでしょうか。

 ブルーインパルスのスモークは、チームの設立と同じ1960年の5月21日、米ジョンソン基地(現在の入間基地)での米3軍記念日で公開されて以来、使われ続けています。仕組みはシンプルで、排煙用油(スピンドルオイル)をエンジン排気に当てて気化させ、上空の気温ですぐに凝結させることでスモークにします。 効率をよくスモークを吐き出すため、ブルーインパルスが使用しているT-4練習機のオイル噴出用のパイプは扁平な形で、排気される方向へ向かって細長くなっています。なお、以前は、油溶性の特殊染料を混ぜてカラースモークを引いていましたが、飛行前の攪拌に準備がかかるなどから現在は白色1色にし、2021年の東京五輪に際して一時的に復活させたのは記憶に新しいところです。 スモークの発生装置の開発は1960年以前から行われていましたが、チームの正式発足前のため、なにぶん“秘密”の取り組みでした。

スモーク発生装置が実装されるまで

 ブルーインパルスが当時所属していた第1航空団は1957年時点で、T-33練習機にスモーク発生装置を取り付けたことがありました。この発生装置は、空対空射撃訓練時に、曳航する標的を見つけやすくするためのものでしたが、これがアクロバットでも役立つか検討されていました。そこで1959年に来日した米空軍のサンダーバーズを見学し、同じ仕組みであったことで、導入する意を強くしたということです。

 とはいえ、実際に試してみなければ有効か分かりません。見学から10日後の12月20日、いざF-86F戦闘機発生装置を装着し実験をしたのですが、行ったのは“秘密”の取り組みのため閉庁後の午後5時過ぎ。冬至も近い薄暗闇に、突然湧き出した煙がF-86Fを包み込み基地は驚きに包まれました。基地消防車も出動し、退庁していた団指令もあわてて引き返してくる騒ぎになったとか。実験は成功でしたが、担当者たちは大目玉を食らったということです。 後に映画製作への協力を機会に、2代目の塗装デザインが東宝へ依頼された際には、ブルーインパルスを知らなかったデザイナーが上司から、「色のついた煙を吐いて曲技飛行する。あれや」と、ここでもスモークは目を引くものという話も残っています。 風がない日のスモークは長く空に残り、ループで描かれ太く広がるさまは、アクロバットに一層迫力を与えます。各国のアクロバットチームでもスモークは欠かせませんが良く見ると、着色は各チームで濃淡があります。使っている染料の差か、はたまた色に対する国の好みの違いなのか気になるところです。 白一色とはいえ、ブルーインパルスのスモークはアクロバットも含めて他国のチームに負けていません。今年も各地での展示飛行が楽しみです。

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