歩道へ締め出された高速バス客 東京駅「鍛冶橋駐車場」入場規制 取材進めると「解除」

東京駅に発着する高速バスの乗り場として活用されている「鍛冶橋駐車場」で入場制限が実施され、利用客が歩道にあふれていました。出発20分前からしか入れないルールをただすと一転、「解除」。責任の所在はどこにあるのでしょうか。

「かわいそうに、入れてやればいいのに」

 東京の表玄関に位置する高速バス乗り場で、24時間の入場制限が実施されていました。バスの発着のピーク時には、拡声器を使って誘導員が立ち入り制限をアナウンス。深夜0時近くにも関わらず、利用者は行くあてもなく歩道でバス待ちをしていました。乗り場を提供する東京都の関連団体は、駐車場を貸しているだけで、場内の安全を管理する上では入場制限は必要と話していましたが、取材を続けると一転、入場制限を撤廃しました。

 2023年3月9日23時、東京駅南側の「丸の内鍜治橋駐車場」(千代田区丸の内3)周辺には大きな荷物を抱えた人々が、歩道の縁石に座り込んでいました。高速バス待ちをする利用者です。鍛冶橋駐車場から発着するバス利用者は、この駐車場のルールで出発20分前からしか場内に立ち入ることができませんでした。 待機できるような飲食店も、すでに閉店しています。照明の消えたオフィス街、薄暗がりの歩道をいく歩行者からは「かわいそうに。入れてあげればいいのに」という声が聞こえます。乗り場周辺の歩道は、植栽がはがれ土がむき出しになっていて、多くの利用者が、いつも歩道で待っていることを示していました。ここは、東京駅も有楽町駅も徒歩圏内の一等地です。 この駐車場をバス乗り場として貸しているのは、東京都の外郭団体「東京都道路整備保全公社」です。当初の取材に東部営業所の担当者は、入場制限が安全対策であることを強調しました。「ここは(バスターミナルでなく)駐車場。制限しないと、場内が混雑して安全が保てない。利用するバス会社(または旅行会社)から、20分前からしか入場できないことを周知するように伝えている」 一方で、取材が進むと入場制限は突然、解除されました。しかし、入場制限をした場所は屋根のない駐車場です。しかも、バス会社の存続が危ぶまれるほど利用者が激減した時期に、なぜ入場制限を続けなければならなかったのでしょうか。

バスの車道乗降やめたら、バス利用者が歩道に出された

 この入場制限で多くのバス利用者が歩道待ちをしていることについて、公社を管理する立場の東京都は「警察が対応する道路交通法の問題」と、突き放しました。 また、旅客輸送事業者を管理する国土交通省自動車局も「入場制限をするのは乗り場の管理者の判断ではないか」(旅客課)と、直接的な介入を避けました。バス利用者が夜中に歩道で待たされることに対して、誰も疑問に思わなかったのです。 このように高速バス利用者が歩道で待つのは、すでに当たり前のことではありません。鍛冶橋駐車場を利用するバス会社でも、バスタ新宿やバスターミナル東京八重洲から出発するバスであれば、利用者が歩道で待つことはありません。歩道で高速バスを待つのは、時代遅れになりつつあります。 2012年7月、国土交通省は関越自動車道で発生した高速ツアーバス事故の反省から「新高速乗合バス」制度を新設しました。それまであった、旅行会社が企画する「高速ツアーバス」は、旅行会社が利益を最大化し、バス事業者が安全対策を軽視する。結果、安全運行の責任所在がうやむやになり事故が起きやすい、という反省に立った新制度でした。 10年前には当たり前だった車道にツアーバスがずらりと並び、歩道でバス待ちする光景がなくなったのは、この新制度が厳格に運用するようになったためです。

入場制限は「感染対策」なのか「安全対策」なのか

 高速ツアーバスから高速乗合バスへ移行したバス事業者も、自社が停留所を定め、経路を定めた運行計画を国へ提出し、安全管理を自社で徹底することが求められました。 ただ、高速乗合バスには季節変動があり、需要に合わせて便数を調整するため、鍛冶橋駐車場のような“調整弁”が必要です。反面、バスタ新宿や建設途中のバスターミナル東京八重洲は発着枠に限界があり、今後も鍛冶橋駐車場のような代替施設は必要不可欠です。 こうした背景の中で、バス利用者の入場制限は進められました。取材を進める中で3月中旬に突然、入場制限は撤廃されました。この理由を公社は「コロナの感染対策が緩和されたため」(管理課長)としましたが、本当に入場制限は感染対策だったのでしょうか。当初、担当者が説明するように安全対策のためだとすれば、乗降の安全が確保される対策が必要になります。しかし、駐車場という暫定的なバス乗り場は、バスターミナルのように管理責任の所在がはっきりしません。 現在、鍛冶橋駐車場周辺には、こんな看板が掲出されています。《この付近には立ち止まらずにお進みください》《撮影禁止 場内での撮影はご遠慮ください》》

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