「巨大旅客機」の時代はもう来ないのか 新型機の課題は「空」じゃない? 超大型A380も直面

「ジャンボジェット」ことボーイング747シリーズが生産終了。ライバルであるエアバスも「世界最大の旅客機」として知られるA380の生産を終えています。今後、2機を上回るようなサイズの旅客機は出現するのでしょうか。

地上の設備がポイントか

 2023年2月、「ジャンボジェット」として親しまれたボーイング747シリーズが生産を終了。ライバルのエアバス社ではすでに、「世界最大の旅客機」として知られるA380の生産を終えており、超大型旅客機が全盛を誇った時代が区切りを迎えています。これからの未来、この2機を上回るようなサイズの旅客機は出現するのでしょうか。

 2023年現在、ボーイング社では747シリーズに匹敵する収容力をもつ「777-9」の開発を進めており、エアバス社でもA380(全長72.7m)を上回る73.7mの全長をもつ「A350-1000」を製造しています。ただ、ここからさらにサイズアップをした新型機をデビューさせるには、困難といえるほどの課題が。その理由は、地上の設備にあります。 実は「ジャンボ」超える収容力をもつとして脚光を浴びたエアバスA380は、総2階建てということを除くと、人数を乗せられる一方で、ある意味「極力大きくなるのを防ぐ」ように作られた飛行機です。 1998年の設計段階でA380型機は翼幅(全幅)、全長ともに80m以下、全高は24m以下などを目標に設定、オプションで翼を折りたためる設計も検討されていたそうです。2005年に初飛行を迎えた実機は、全幅(79.7m)、全長(72.7m)は範囲内にとどまり、全高は若干超えてしまうものの、ほぼクリア(24.09m)となっています。 A380のデビュー前、実用化された旅客機で、全長が最大なのはエアバス340-600(75.3m)で、全幅が最大なのはボーイング747-400(64.4m)でした。このことから、それぞれ80m以内であれば、既存の空港に対応できるとエアバスは試算していたといわれています。

A380も直面した「空港設備の規格外れ」問題

 しかし、実際に就航してみると、エアバスA380の大きさに空港設備が円滑に対応することは困難でした。というのも、それまで世界の空港設備は、ボーイング747(当時就航していない747-8を除く)の機体サイズを最大として、30年かけ設備を順次強化してきていたためです。エアバスの試算以上に、空港の大型旅客機への受け入れ態勢はギリギリだったのです。

 そのようななか現れたA380は、全長、全幅は範囲内に収まっても、たとえば駐機場には2階の人もスムーズに乗降できるような搭乗橋など、相応のものを準備する必要があります。機体重量もボーイング747-400(約180t)より100t重い約277t。燃料や人が加わればもっと重くなるため、「ジャンボ」はOKでも、A380は地面強度の問題で離着陸できない滑走路がでてきます。 実際に、世界有数の旅客数を誇る羽田空港ではA380を定期便に就航させていませんが、これは誘導路や滑走路にサイズや重量の制限があり、同型機がこれをクリアできないためとされています。また、離着陸したのちに発生する後方乱気流で、後続の飛行機の離着陸が制限される影響もあるそうです。

新型機にもつきまとう「空港設備」問題、ユニークな工夫も

 なお、航空輸送の国際ルールなどを定める国際民間航空機関(ICAO)は、駐機場や誘導路を統制する目的で、機体の大きさをA(小さい)からE(大きい)の5段階に分けたコードを設定していましたが、A380が登場したことで、新たに6つ目の段階「コードF」を作ります。 A380は国際ルールを再度設定しなければならないような規格外のサイズで、この基準を満たす設備を持つ空港にしか、原則受け入れてもらえない状況です。そうなると空港を設備を抜本的に買える必要のある「コードF」以上の旅客機を製造するよりは、その範囲にサイズをとどめながらも、航空会社のニーズを満たすような機体が求められる――というのが現在濃厚な見立てです。

 なお、このような「既存の空港設備に対応できるような取り組み」は現代の新型機でも見られます。 先述のとおり、ボーイングでは現在、超大型双発機の777-9の開発が進められているものの、同型機は「折りたたみ式の主翼」という独特の機構が標準装備されています。そうすると、畳んだ状態だと従来型の777とほぼ同じ65m弱まで全幅を抑えることができます。 このことで、A380レベルのサイズを示す「コードF」の旅客機になることを避けられ、ボーイング747を運用できる空港であれば、既存の設備のままで円滑に発着できるように工夫されています。

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