「え、免許要るの?」じゃ済まない“モペット” 見た目チャリな電動バイク 異例の体験乗車会で警視庁が訴えたこと

警視庁高輪署が、自転車にもなるペダル付き原付バイク、いわゆるモペットの体験試乗会という珍しいイベントを開催しました。こうした新モビリティは普及が見込まれるものの、無免許で運転するケースもあり、警察は危機感を持っています。

目立つ利用、原付免許必要です

 警視庁高輪署(港区高輪)が主催する「モペットバイク体験乗車会・二輪車安全運転講習会」が開催されました。最近、何かと注目されているモペット(ペダル付き原付)にフォーカスした講習会は、警視庁の102ある警察署の中でも珍しい試みです。

「モペットバイク体験乗車会・二輪車安全運転講習会」は2023年3月4日、品川区内の寺社の駐車場を借り切って行われました。高輪署の白バイ2台が参加。同署ウェブサイトから応募した一般の人たちが、モペットを試乗しながら、白バイ先導付きで安全な乗り方もわかるという約1時間のイベントでした。 このイベントの最初に警察官が注意を促したのは「モペットの運転は、原付、または普通免許が必要」ということ。モーターやエンジンの動力を切って、ペダルを使って人力で進む場合でも、道路交通法ではバイク扱い。もちろん歩道を通行することはできません。 改正道交法の施行を前に、モペットや電動キックボードなど新しい乗り物に関心が集まる中、無免許運転に問われる大事な交通ルールを知らない利用者が増えていることに危機感を持ったことが、このイベント開催のきっかけでした。

簡単に乗れそう? 意外と難しい?

 この日、用意された車両は和歌山県に本社を置くグラフィットのGFR-02でした。14インチタイヤの見かけは折り畳み自転車。誰でも簡単に乗れそうでしたが、乗車後の体感はさまざまでした。 例えば、普通免許所持で参加した25歳の男性は、スロットルを少し開けるだけで停止から素早く立ち上がる電動車の特性に少し戸惑った様子。スラローム初体験で「アクセルを回し過ぎる感じで(調整が)難しい」と、話しました。 原付から大型を乗り継いだ35歳のライダーは「よく走っているのを見る。モペットに乗ったことがなかったので体験してみたかった。慣れれば簡単に乗れる」と話します。一方、同じライダーでも大型バイクで40年、東京都の二輪車安全運転大会で三位に入賞したこともあるという66歳のライダーは「モペットはキックボードに比べると実用性があると思うが、乗り方がぜんぜん違う」と、エンジンとモーターの違いを実感していました。

利用者の理解求める、声かけ時の協力を

 参加者を先導して走った白バイ警察官は、「どれでも同じだが、乗り始めは怖い。特徴がわからないので、理解しながら運転を。これはとっさの時、安全によけられるための練習です」と、説明しました。 二輪車の中でも、わざわざモペットに絞った講習を行った背景には、新しい乗り物に対する理解が追い付いていない実態があります。高輪署交通課長は、こう警告しました。「日に日に走行実態が多くなり、利用者が増加していることを感じています。その中には、免許が必要ということを知らなかったという人がいますが、取締り、指導を行い、適正に対処していきます」 高輪署管内でモペットによる違反は、2021年は0件でしたが、2022年は1件。この1件が、免許の必要性を認識していなかった無免許運転でした。新しい乗り物に対する関心は高く、電動キックボードの違反も、2021年から2022年にかけて、0件から41件に増えています。 ペダル付き二輪車が、バイクなのか、アシスト自転車なのか。一見して判断するのが難しいことも、利用者を混乱させる一因です。一定以上のアシスト力が得られる二輪車は、バイクのようにスロットル(アクセル)がついていなくても自転車として認められていません。 さらに、7月から施行される改正道路交通法の中では、原付バイクでありながら、無免許で運転できる「特定小型原付」も登場。それに該当する商品に対し、認証を与えて識別しやすくする制度も用意されますが、施行当初はさらに混乱が予想されます。

 高輪署は、利用者への協力を求めています。「見た目ではわからないので、指導・取締りでは、どうしても声をかけるしかない。(停止を求めるのは)違反取締りだけでなく、注意喚起もあるので理解をいただきたい」 2023年は、このほかにもすべての自転車利用者がヘルメット着用を努力義務とする道路交通法改正が4月からスタート。パーソナルモビリティの交通ルールが大きく変わる節目の年です。

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