第338話 ”GXの要”拡大するEV 世界で需要急伸が期待されるモノとは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、下町にある茶屋で投資談義を行っています。


神様:今日はDXと同様に注目される「GX」について見ていきましょう。

T:グリーン・トランスフォーメーションですね。

神様:はい。地球温暖化を防ぐためにも、化石燃料に頼らず、太陽光や水素などの自然環境にとって負荷の少ないエネルギーを活用し、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らす取り組みが世界的に広がっています。また、最近のエネルギー価格の高騰もあり、GXへの取り組みはさらに活発化しています。

T:これまでもリチウムイオン電池の開発(第258話 「グリーン×デジタル」日本強み持つリチウムイオン電池に期待)、次世代原子力発電(第318話 脱炭素エネルギーの柱へ 「次世代原子力発電」とは?)、それに次世代自動車(第298話 次世代自動車「xEV」急速に普及へ 鍵となる技術とは?)など、様々な事を話しましたね。世界全体のCO2排出量を2030年までに約半減、2050年までに実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の実現に向けて、世界中が取り組んでいます。

神様:その中でも要としての大きな取り組みは「自動車」です。すでに米国やEUなどの先進国だけでなく、中国、インド、タイ、インドネシアなどの新興国を含めてガソリン車への規制が進んでいます。各国では2030年まで、あるいは2035年までにガソリン車を電動自動車(EV)へ大きくシフトさせる計画が進行中です。

T:日本においても乗用車の新車販売について、2035年にEVが100%となることを目標としているのでしたね。そして、EVには4つの種類があるのでした。バッテリーを搭載して電気で動く電気自動車(BEV)、バッテリーによる電気のほかガソリンでも走るハイブリッド自動車(HEV)、ハイブリッド自動車のうち外部から充電できる機能を持つプラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)、そして水素などの燃料電池による電気で走る燃料電池自動車(FCEV)の4種類を総称して「xEV」と呼んでいます。

神様:富士経済が調査した電動車の世界需要見通しによると、2035年にはハイブリッド自動車(HEV)は2021年比で4倍の1536万台、プラグイン・ハイブリッド自動車(PHEV)は2021年比で4.2倍の783万台、そして電気自動車(BEV)は2021年比で12倍となる5651万台に達すると予測されています。新車販売台数において、欧州や中国を中心に2030年にはEVが内燃車を上回り、2035年には乗用車の主役が内燃車からEVに移行し、新車販売全体の過半数がEVになるとみられます。

T:2035年に主役交代の大きな節目を迎えるわけですね。

神様:その通りです。この2022年版の予測は、2020年版の予測と比べると乗用車・新車販売台数が上方修正されています。つまり、世界的に自動車の電動化は加速していることがわかります。

T:ということは、今後の予測値もさらに増える可能性もありますね。

神様:定期的に市場の予測データをウォッチしておくといいでしょう。

T:投資の観点から見れば、EVに関わる事業は成長が期待できるということですよね。リチウムイオン電池やパワー半導体などの事例を見てきましたが、他にもあるでしょうか?

神様:良い指摘ですね。例えば、電動車用のモータは今後の需要拡大が予想されています。このモータには「無方向性電磁鋼板」という鋼板が活用されます。

T:無方向性電磁鋼板?難しそうな話になりましたね。

神様:無方向性電磁鋼板は、高い強度がある一方で加工性にも優れ、かつ高い磁力を発生させることができる電磁鋼板です。モータや発電機などには欠かせないものですが、今後の電動車の普及に伴い、需要が大きく拡大することが予想されています。無方向性電磁鋼板を扱う製鉄メーカーや関連企業にとっては、大きなチャンスと言えるでしょう。

T:なるほど。今後の活躍を期待したいと思います。

(この項終わり。次回3/1掲載予定)

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