第336話 DXを後押し 日本の企業2000社に迫る「2027年問題」とは?

株の神様の声が聞こえるというTさんは、定期的にその教えを受けています。今日は、Tさんと神様は、都内ホテルのラウンジで投資談義を行っています。


神様:先日、2023年の注目としてDX(デジタル・トランスフォーメーション)を挙げ、日本国内の受託システム開発の売上高が順調に推移していることをお話しました。今日はDXの別の側面にスポットを当てたいと思います。Tさんは「2027年問題」をご存知ですか?

T:いえ、初めて聞きました。2025年問題なら聞き覚えがありますが。

神様:DXにおいては「2025年の崖」(第273話 少子高齢化で急がれる保険業界のDX)と呼ばれているものですね。

T:はい。それとは違うのですね。

神様:「ERP」とは何か、ご存知ですか?

T:企業に導入するシステムであることはわかるのですが、詳しくはどういうものでしょうか?

神様:「ERP」とは、「Enterprise Resource Planning」の略で、企業経営において、資源要素となる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を適切に分配し、有効活用する計画を意味します。企業の情報システムとして「基幹系情報システム」を指すことが多いです。企業はERPを導入し、基幹系情報システムを構築することで、生産、物流や財務会計などを含めた全社業務の効率化を図るのです。

T:ヒト・モノ・カネ・情報の流れを全社で統一し、効率化して生産性を上げようというわけですね。

神様:その通りです。また、ERPの導入に当たり、企業の業務プロセス自体を再設計することもあります。そうして”業務改革”を行っていくこともERPです。

T:なるほど。まさにDXですね。

神様:ERP自体は最近始まったものではありません。ERPの先駆者として知られるのが、ドイツの多国籍企業である「SAP」です。SAPは1972年に創設され、SAPが開発したERPソフトウェアは世界中で利用されています。現在、そのソフトが提供されてから約20年が経ちました。これまで何度もバージョンアップや機能拡充を経てきたため、システムのリアルタイム性が低下し、それが問題視されるようになってきました。

T:「システムのリアルタイム性」とは何でしょうか?

神様:ある処理を実行するときに、その処理が設計された時間内に行われること、と考えれば良いでしょう。

T:つまり、処理の実行にかかる時間が大きくなってきて、結果が出るまでに時間がかかるようになってきたということですか。

神様:SAPは、一部のERPの標準サポートを2027年で終了すると発表しました。実は当初は2025年での終了としていましたが、SAPが2年サポートを延長したことにより、2027年まで延びました。これが「2027年問題」です。

T:SAPの顧客企業は2027年までに対応を迫られるわけですね。時間が迫っていますね。

神様:おっしゃる通りです。日経クロステックの調べによれば、国内のSAP・ERPの導入社数は2,000社程度となっています。それらの企業は、新バージョンを導入するか、他社製品へ切り換えるか、の選択を迫られることになります。いずれにせよ、SAPのパートナー企業や他のERP関連企業の収益機会の拡大に期待したいところです。

T:この機会に一層のDXを進めるチャンスでもありますね。2027年問題をチャンスととらえていきましょう。

(この項終わり。次回2/15掲載予定)

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