「三菱スペース・ジェット」開発終了を正式発表 「事業性を見出せず」…開発失敗の要因は?

「国産ジェット旅客機」はまた夢に。

一時は「否定」も

 三菱重工は、グループ会社の三菱航空機が開発を進めていたジェット旅客機「三菱スペースジェット(旧称:MRJ)の開発中止の決定を2023年2月7日の決算会見で発表しました。6日から一部のメディアで開発中止決定が報じられており、同社はこの報道を「当社及び当社子会社である三菱航空機株式会社が発表したものではない」と一時否定しましたが、7日に入って一転、これを認めた形です。

「スペースジェット(旧称:MRJ)」は100席以下の座席数をもち、地方間輸送を担うジェット旅客機「リージョナルジェット」に分類される旅客機で、2015年11月11日に初飛行。同機はかつて国産旅客機「YS-11」の開発の中心となった三菱重工が、国からの多額の支援をうけ、開発したモデルです。開発の後ろ盾となる初期発注者(ローンチカスタマー)はANA(全日空)で、JAL(日本航空)や海外の航空会社からの受注も獲得しました。 当初2021年の就航を目指していた「MRJ」ですが、その後開発が当初の想定どおりのスケジュールで進まず、納入延期を繰り返しました。2019年6月には、機体の名称を「MRJ」から「スペースジェット」に変更しブランドイメージの一新を図ったものの、納入延期は6度に及びました。 そんななか2020年、世界の航空需要を大きく落ち込ませた新型コロナウイルスが襲います。こういったこともあり、このとき、「一旦立ち止まる」といったコメントを残し、開発の大幅な縮小を決定しています。

開発決定の要因は?

「一旦立ち止まり」後の三菱重工グループは、実用化に必要な「型式証明」の文書作成プロセスは継続するものの、3年あたりの開発費を従来計画の20分の1にまで削減。そして2022年3月には、「航空の用を供さない」として、3号機の国土交通省登録を抹消。アメリカにあった飛行試験の拠点も、3月末をもって閉鎖されていました。

 三菱重工は今回の開発中止に関して、「以下の観点から開発再開に足る事業性を見出せず」として、次のようなポイントを挙げています。・開発長期化により一部見直し要。脱炭素対応等も必要・海外パートナーより必要な協力の確保が困難と判断・北米でスコープクローズ(労使協定による機体サイズ等の制限)の緩和が進まず、M90(スペースジェットの標準型)では市場に適合しない足下でのパイロット不足の影響もありRJ(リージョナル・ジェット)市場規模が不透明・型式証明(そのモデルが一定の安全基準を満たしているかどうかを国ごとに審査する制度。ここではグローバルスタンダードとなっている米・FAAのことを指すとみられる)の取得にさらに巨額の資金を要し、上記市場環境では事業性が見通せない※ ※ ※ 三菱重工は「今後とも SpaceJet の知見を活かし、完成機を見据えた我が国航空機産業の発展と技術力向上に取り組んでいく」とコメントしています。「完成機としては一定の水準の機体を完成させ、3900時間にわたる試験飛行をできたことは良かったのではないかと考えています。今後はこの技術を他の機種に活かしたいと考えております。一方反省点として、高度化した型式証明のプロセスを理解するのに課題があったことは否めません。多くの皆様からご支援をいただいなかで中止となったことは残念に思います」(三菱重工 泉澤清次社長)。 なお、同社長は顧客である航空会社に対しての対応について「これまでも(開発が)遅れるたびに丁寧にお話をして参りました。今回の中止についても、引き続き丁寧にお話を進めていきます」とコメントしています。

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