阪急の異色ハイグレード車両「京とれいん」はどう誕生? 入魂の内装ながら料金不要!

ダイヤ改正に伴い阪急電鉄「京とれいん」の運行が終了しました。後継の「京とれいん 雅洛」とともに料金不要の観光列車としては日本有数のハイグレード車両でしたが、その誕生秘話に迫ります。

阪急電鉄開業100周年で誕生

 阪急電鉄の観光列車「京とれいん」が、2022年12月11日で引退しました。今後も活躍する「京とれいん 雅洛」とともに、特別料金不要列車としては最高級のグレードを持つ列車でした。 そもそも初代「京とれいん」は2011(平成23)年、阪急電鉄京都本線で特急用として活躍した6300系電車を改造して誕生しました。6300系は1975(昭和50)年に登場しましたが、それから1989(平成元)年まで車内に中吊り広告が掲示されないなど、特別な車両として認識されていたようです。

 1987(昭和62)年には、当時は珍しかった電車内の公衆電話が設置されたり、1992(平成4)年からは運転席後ろに側窓を増設したりと、車両の魅力向上への方策が重ねられていました。 2008(平成20)年にリニューアルされ、2023年現在は嵐山線専用車両となっています。阪急電鉄によると「特急専用車両の伝統を残しつつ、新造車両と同様の装置を採用しました。嵐山線の沿線環境に配慮した車内づくりで、ほかの車両に匹敵する輝きを持たせ、嵐山への観光客と地域の利用客に快適な環境を実現」したとのことです。後継の特急車両9300系にさえ採用されていない、1+2列の転換式クロスシートを備えたハイグレード車両として今でも注目されています。 2010(平成22)年に阪急が開業100周年を記念して「京とれいん」を登場させたことは、当時話題となりました。コンセプトは「和・モダン」で、愛称やデザインコンセプトは社内公募されたそうです。そのさいに「京都をイメージした斬新な内装とする。一般のお客様が快適で楽しい時間を過ごせるものとし、マニア向けとはしない」という方針で開発が進められました。 なお乗車時間が短いことや、訪日外国人観光客にも気軽に利用してもらいたいとの方針で、特別料金の徴収は行わないこととなり、それは現在の「京とれいん 雅洛」にも受け継がれています。

半個室と見紛うような豪華な座席も

 阪急電鉄の車両は、開業時より一貫して「阪急マルーン」と呼ばれる黒味が強い栗色で塗装されており、これが伝統となっています。「京とれいん」もその伝統を継承しつつ、金銀の京扇を大きくあしらった美しい外装となりました。内装は京都の町屋のイメージで改装。6両編成のうち、1・2・5・6号車は種車の6300系と同じ転換式クロスシートですが、そのモケットは唐紙をモチーフとしたものへ変更されました。

 1・2号車は「蘭の華散らし」、5・6号車が「麻の葉」をイメージした座席となり、側扉の横には和紙作家の堀木エリ子氏による掛け軸風ポスターも提出されました。車内広告も全て撤去され、落ち着きのある内装でした。 では3・4号車はというと、「京町家」をイメージした車内です。側扉付近のデッキを「玄関」に見立て、格子のような飾りがデザインされました。 そして座席は1+2列のボックス式クロスシートですが、背もたれが非常に高く設定されており、半個室のような雰囲気に。特筆すべきは座面が畳で、その上に座布団が置かれている点。間接照明への変更もあって、明らかに特別な車両と感じられるものでした。 なお、車内自動放送が導入され、日本語、英語、中国語、韓国語の放送が行われていました。観光列車らしく、季節ごとに放送が変更され、嵐山の観光ガイドも放送されていたようです。車端部にパンフレットラックがあり、京都ガイドマップの配布も行われていました。 運行開始後は好評を博し、訪日外国人も増加していたことも受け2016(平成28)年より3年かけて開発されたのが、7000系を改造した後継「京とれいん 雅洛」です。 登場から半世紀近くが経つとはいえ、手が加えられやや特別な道を歩んできた6300系。嵐山線も含め今後どのようになるのか注目です。

externallink関連リンク

【画像ギャラリー】「京町家」をイメージした3・4号車 特急タンゴ・エクスプローラーの今 走れば話題のレア車 3セクきっての豪華列車だった 阪急ダイヤ改正で「消える光景」5選 「準特急」誕生の裏で大きく変わるラッシュ輸送
externallinkコメント一覧

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)