離陸直前「爆破予告を受けた飛行機」はどうなる? 卑劣行為発生の裏側 関係者の苦労とは

2023年1月に相次いで発生した飛行機の「爆破予告の電話」、これを受けた便は、どのような対応を強いられるのでしょうか。筆者は、かつて実際に「離陸直前に爆破予告を受けた便」を目撃しました。

20数年前に筆者が「爆破予告を受けた便」を目撃

 2023年1月7日、成田空港発福岡空港行きのジェットスター・ジャパン機へ爆破予告があり、緊急着陸した中部空港では、新年早々大騒ぎになりました。この爆破予告、7日だけでなく、1月2日にも、台湾のスターラックス便に対してあったといいます。両便とも実際の爆破はなかったものの、それでも、空港は物々しい雰囲気に包まれ、関係者に多大な労力を強いることに。その姿を間近で見れば、苦労は一層分かります。

 筆者が爆破予告を受けた便をたまたま目撃したのは、20年ほど前。陽も落ちかけた、成田空港の第1ターミナル近くでした。 ターミナルから望んだそのアジア系航空会社の「ジャンボ機」、ボーイング747は、誘導路へ機首を向けて、衝突防止灯を点滅させていたことから、出発便だと分かりました。しかしこの機は、一向に進みだす気配はなく、それどころか、空港の保安車両や警察車両などが、赤色灯を回しながら、その便を取り囲んでいました。 集まった車両はおよそ20台。陽は落ち暗くなっていきますが、車両は一向に便の周囲から去りません。航空機が衝突防止灯を点滅させているのは、すぐに動き出す合図だから近寄っては危険であることを、筆者は空港関係者に教えられていましたから、この異様な姿に、何か機内で異常が起きていると分かりました。 ただ、機体やエンジンのトラブルなら、多数の保安車両や警察車両が取り囲むことはありません。何かの事件に違いない……と、筆者はその便の運航会社の知人を見つけ、何が起きたのか尋ねてみました。

「爆破予告を受けた便」は何をしていたのか

 その知人は「東京都内の支店へ、貨物に爆弾を仕掛けたと、電話があった」と、声を潜めて答えました。機体が長時間駐機したのは、その爆破予告をうけ、貨物室に積んでいた全ての貨物を降ろして、爆発物がないか点検していたとのことです。 確かによく見ると、機体ではいったん積んだ貨物を降ろす作業が繰り広げられていました。その便は、旅客ビルの出発ロビーからは見えにくい角度で止まっていたために、ロビー内の乗客が大騒ぎになることはありませんでした。しかし、事情を知って見ると、物々しさは一層募りました。

 結局、爆発物を含めた不審物は見つからずに、この便は夜になって出発しました。「貨物を再度積み込む時は、重量物などをどう積むかあらかじめ把握しているので、さほど時間はかからないが……」。そう答える知人の声がひどく疲れていたのは、今も覚えています。 2023年1月に「金を用意しろ」と爆破予告を受けた台湾のスターラックス航空便も、筆者が見た「ジャンボ機」と同じように、乗客や荷物を降ろして爆発物がないかを確認し約1時間半遅れで出発しています。7日のジェットスター・ジャパン便はそのまま出発したのちに緊急着陸をしましたが、中部空港での緊急脱出時に軽傷ながらもけが人が発生しています。 今回の2件の電話は、発信元がドイツと通知されていたということで、現在千葉県警が捜査していますが、こういった事件は、乗客に迷惑をかけるだけでなく、航空会社や空港会社など、旅客機に関わるすべての人を不安にさせます。予告を受けた航空会社の人がどんな苦労をしているか――過去にそれを知った筆者は、年月を経てもやまない不快な行為に怒りを覚えました。

【映像】滑るの怖いくらい高いぞ…? 「ジャンボ機の脱出用すべり台」の展開シーン

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