地元で繰り返した「勝ちたい」 渋野日向子が子どもたちを見て思い出した“原点”【2023年・現場記者のチューモク!】

国内ツアーに多くの観客が入るなど、ようやくコロナ禍からの脱却の兆しが見えた2022年。海外に目を向ければLIVゴルフの誕生、PGAツアーとの争いなど様々なものごとがありました。そうして迎える23年はどんな年となるのでしょうか。そこで、ツアー取材担当が今年の気になるトピックをピックアップ。今回は、渋野日向子の優勝への思いについて。

「さらに強くなりたいと思える一日。勝ちたいという気持ちが強くなりました。勝ちたいの一言ですね」

昨年末、渋野日向子選手が、何度も『勝ちたい』という“欲”を口にする日がありました。それはクリスマスに沸く12月25日、自身が主催者として地元・岡山県で行った小学生ソフトボール大会の会場で臨んだ記者会見でのこと。「みんなのうれしそうな顔、くやしそうな顔を見て、忘れていたことを思い出しました」。小学生時代、ソフトボールに熱中していた頃のいわば自らの原風景が、戦う気持ちに大きな刺激を与えたようです。

もちろん一線級のプロゴルファーにとって、優勝したいというのは当たり前ともいえる欲求。ただ渋野選手の口から、ここまで明確な言葉を聞いたのは、すごくひさしぶりのように感じました。米ツアー参戦1年目となった2022年。浮き沈みの激しいシーズンを送ったことが、それに大きく影響しています。

昨年は「シェブロン選手権」、「AIG女子オープン」(全英女子)とメジャー大会で優勝争いを繰り広げる一方、中盤戦を過ぎたあたりから“予選落ち”の言葉が目立つように。結果的には「悔しい一年。うれしかったことも多いけど、いろんな感情が芽生えた」と、ネガティブな印象も残しながらシーズンを終えました。

なかでも印象的だったのが、昨年9月に「ウォルマートNWアーカンソー選手権」会場で聞いた、「自分が一歩でも進めているのか? そう振り返ると、まだそれを感じられていない。立ち止まっているのかな」という言葉。『ルーキーということを踏まえたうえで、ここまでの戦いを振り返ると』という質問をした時に返ってきた答えでした。明るい笑顔の裏に、“自問自答”や“もがいている現在”というものが見え隠れしていたように思えました。

昨季、国内で迎えた「ほんとのほんとの(シーズン)最終戦」、すなわち「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」の会場でも、その印象は変わりません。最終日に「66」を出した後の取材でも、一年間について「今年はスタートダッシュがよかった分、後半の失速で気持ち的にも段々下がっていった」と総括。そして「今は自信を失っている状態。来年は自信を持って試合に臨めるように。高い壁があると思うけど、自分を信じて」という言葉を続けました。それだけに、開催が「夢だった」というソフトボール大会が行われた岡山県の野球場で聞こえた、すっきりとした言葉に『おっ』と思わされたのです。

渋野選手の米国2年目のシーズンは、2月に始まるアジアシリーズ初戦「ホンダLPGAタイランド」(2月23〜26日、タイ・サイアムCC)からになる予定。年明けからしばらくは日本で練習をし、その後は早めにタイに入って現地で合宿をしたい、という意向も明かしています。「何から何までイチからやらんといけん」というなか、特にドライバー以下のショットの精度をこの冬の課題に挙げました。「シード選手として戦うからには、勝ちたいという気持ちは忘れずに」。クリスマスに語った思いを胸に、クラブを振り続けることになりそうです。

そんなソフトボール大会の閉会式では、子どもたちにこんな言葉も贈っていました。「くやしい時はくやしい顔をしていいし、うれしい時はうれし涙を流していい。自分の感情を表に出していい。そういう気持ちを大事にこれからも頑張ってほしい」。いつもその時々の心境を、自分の言葉で話す渋野選手らしいメッセージですが、同時に改めて自らにも言い聞かせている、そんな風にも聞こえました。

「(子どものころソフトボールの)大会で負けた時、いつも泣いていました。負けず嫌いだったなって。あの頃の感情って大事だなと、すごく気づかされました」。原点を原動力に。2023年が終わる頃、渋野選手は何を語ってくれるのか。それが楽しみになる年の瀬の一日になりました。(文・間宮輝憲)

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