バスの最前列席「運転席裏」も無くなっていくのか? 「無いのが標準仕様」も登場

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ファンの特等席ともいえる路線バスの最前列座席が無くなってきています。以前から左側の最前列がないバスが増えてきていますが、右側の運転席裏もです。なぜなのでしょうか。

自明なのか? バスの最前列席“どっちも”無くなる

「あの座席もいずれ無くなっていくと思いますね」――2026年10月31日に東京で開催されたバスの展示会「バステク in 首都圏」(ぽると出版主催)で、とあるバスメーカー担当者と話した際のことです。それは大型路線バスの運転席裏、右側(進行方向、以下同)の最前列座席です。

 路線バスでもファンの特等席と言われるのが、乗降扉側、左側の最前列席です。過去に乗りものニュースが「路線バスのどの席に座るか」で読者アンケートを行った際、寄せられた1150件中、実に34.3%もの人が選んだほど人気ぶりでした。

 しかし現在、日野やいすゞのディーゼル大型路線バスは、左側の最前列席は「無い」のが標準になっています。この座席はタイヤハウスの上の高い位置にありますが、座席を廃してチラシ置き場などに使われるスぺースに変わっており、通路側には乗客の伝い歩き用の手すりなどが設けられています。

 いすゞの電気バス「エルガEV」では、前方タイヤハウス上の座席は右側もありません。先ごろ改良されたトヨタの燃料電池バス「SORA」も同様に右側前方座席を廃しました。これらは構造上の理由が大きいようですが、ディーゼルのバスでも、「事業者によっては右側前方座席も無くしている」のだそう。なぜなのでしょうか。

 日野やいすゞが左側の前方座席を無くした仕様を標準にしたのは2015年のこと。ノンステップバスの床のフラットなエリアを拡大した関係で、燃料タンクをタイヤハウス上に移設し、座席を無くしました。いすゞは、この座席がなくなったことで、運転士が左側の巻き込み確認などもしやすくなったというメリットを挙げています。

 もう一つは安全上の理由です。現在主流のノンステップバスは特に床が低く、タイヤハウス上の座席がかなり高い位置になってしまうため、お年寄りなどの利用は控えるようアナウンスしている事業者が少なくありません。車内転倒などの事故リスクが大きいのです。ひとたび車内転倒事故などが起きれば、ほとんどの場合は事業者が責任を負います。

 また、コロナ禍では多くの事業者が、運転士の感染リスク防止の観点から最前列2席を使用禁止とし、その後、なかなかそれを解除しなかった事業者もありました。運転士にとっての物理的、心理的リスクが伺えます。

 バステク in 首都圏では、日野と京王電鉄バスが共同で行っている「AIを活用した車内事故防止ソリューション」実証実験の実車が展示されていました。車内事故の防止につなげるため、カメラによって車内の乗客の姿勢や動きをAIが分析し、運転士に知らせるシステムです。

 担当者は、「車内事故の件数は減ってはいるものの、頭打ちです。国からもさらなる削減が求められています」と、車内事故防止の取り組みが高度化する背景を話します。今後さらに外国人も含めた新人ドライバーを積極的に採用していくうえで、運転士の負担をいかに軽減するかが課題になっているといいます。そうしたなか、最前列の座席は右側についても、残す理由より無くす理由のほうが大きくなりつつあるのではないでしょうか。