わずか10日で!? ANAも導入予定「ボーイング737MAX」驚愕の最終組立に迫る「月産47機」も納得の超・効率的製造工程

日本の造船企業が活躍する鍵とは

ボーイングの工場でよく見かける緑色の機体。あれは塗装ではなく、実はアルミを保護するフィルムです。ベストセラー機「737 MAX」がわずか10日間で組み立てられる、驚きの製造工程を取材しました。

あの“緑色”の正体は!?

 世界で100社以上が導入し、7000機以上の受注残を抱えるボーイングのベストセラー旅客機「737 MAX」。この人気モデルが、どのような場所で、どのように組み立てられているかご存じでしょうか。製造の心臓部、アメリカ・ワシントン州シアトル近郊にあるボーイングのレントン工場を訪れると、そこには驚くべき光景が広がっていました。

 広大なレントン工場の敷地に足を踏み入れると、次々と組み立てられていく機体の色に思わず目を奪われます。鮮やかなエメラルドグリーンのような色をしていますが、これは特定の航空会社のカラーというわけではありません。

 737 MAXの胴体(フュージュラージ)は、カンザス州ウィチタにあるサプライヤー(スピリット・エアロシステムズ)から鉄道でレントン工場へ輸送されてきます。この際、アルミ合金製の機体を輸送中や工場内での組立作業中に傷や腐食から守るため、表面全体が緑色の保護フィルム(ビニールシート)で覆われているのです。

 この保護フィルムは最終組立の全工程が完了するまで貼られたままで、工場から出荷される直前の専用ハンガー(ペイントエリア)で初めて剥がされます。そこでANAの「トリトンブルー」をはじめとする、各エアラインの華やかなカラーへと生まれ変わるわけです。

 レントン工場では、24時間体制で最終組立ラインが稼働し、膨大な数の部品が1機の航空機へと姿を変えていきます。このダイナミックな生産を支えているのが、「Flow Day(フローデイ)」と呼ばれる工程管理システムです。

 このシステムは、組立工程を「ポジション」と呼ばれる1から10までのステージに分割し、工場の物理的な場所と作業内容をリンクさせています。機体は1日ごとに次のポジションへと移動していき、10日間で最終組立を完了させるという、非常に効率的な流れ作業となっています。

 工場内には「西ライン」「中央ライン」「東ライン」と呼ばれる3本の最終組立ラインが並行して稼働しています。最初の「Flow Day 1~3」の工程は西ラインに集約され、その後、各ラインへ振り分けられていく仕組みです。

「劇的な10日間」どんな流れ?

 では、具体的にFlow Day 1から10で、機体はどのように組み立てられていくのでしょうか。そのドラマチックな変化を追ってみましょう。

●Flow Day 1:緑の保護フィルムに覆われた胴体シェルが搬入され、断熱材の取り付け、電気・油圧モジュールの組み込み、背面のドーサルフィンの設置が行われます。 ●Flow Day 2:全長43マイル(約69km)にも及ぶ電気配線(ワイヤー)や油圧・空圧パイプが機体内部に張り巡らされます。Wi-Fiアンテナもこの段階で取り付けられます。 ●Flow Day 3:コックピットの計器パネルが設置され、機首には気象レーダーなどを格納するレドームが取り付けられます。 ●Flow Day 4:主翼、水平・垂直尾翼、そして脚部(ランディングギア)が結合されます。これにより機体は初めて自重で地上に立ち、以降はクレーンではなく自らの車輪で移動できるようになります。一気に「飛行機の形」が現れる象徴的なポジションです。
●Flow Day 5:後方のギャレー(厨房設備)やラバトリー(トイレ)、床下の燃料タンクが設置され、油圧システムのケーブル類が接続されます。
●Flow Day 6:機体に初めてオイルと燃料が注入され、電源・油圧系の本格的な機能試験が始まります。客室のサイドウォールや天井の収納棚(オーバーヘッド・ビン)も取り付けられます。
●Flow Day 7:客室に空気を送り込む加圧テストや、油圧システムのシミュレーションが繰り返し行われます。
●Flow Day 8:客室にカーペットが敷き詰められ、138~230席の座席が並びます。油圧系統に異常がないか最終チェックを行う「シェイクダウン」も実施されます。
●Flow Day 9:燃費性能に優れたCFMインターナショナル製の最新エンジン「LEAP-1B」が主翼の下に取り付けられます。
●Flow Day 10:工場での最終ポジション。全ての取り付け部品やシステム、書類が揃うと、塗装や飛行前点検、そして顧客への引き渡し(デリバリー)を行う別エリアへと出荷(ロールアウト)されます。

月産47機、さらにその先へ

 現在、ボーイングの737プログラムは「Rate 47」という月産47機体制で生産を行っています。「移動準備が整っていない航空機を絶対に動かさない“Move Ready”という考え方を徹底することで、生産性が向上している」と、ボーイング民間航空機部門 737プログラムバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーで、レントン工場サイトリーダーのケイティ・リングゴールド氏は語ります。

 旺盛な需要に応えるため、ボーイングは2026年7月、ワシントン州エバレット工場に第4の最終組立ラインとなる「ノースライン」を開設しました。これはかつて787を組み立てていた建屋を活用するもので、将来的には全社で月産60機以上の生産レート達成を目指しています。

 また、派生ファミリーの拡充も進められています。短胴型の「737-7」は連邦航空局(FAA)から型式証明を取得したほか、最大モデルの「737-10」もすでに飛行試験を開始しています。世界中からのリクエストに応え続けるため、レントン工場の活気あふれる挑戦は、これからも続いていきます。