「人間の限界を超えている」バス運転士“安全確認タスク”が多すぎる! 「車内転倒事故」を技術で何とかする新システム 日野と京王が披露

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日野と京王電鉄バス、京王バスの3社が、バス車内での転倒事故をAI技術の活用によって防ぐ、新たな安全システムの説明会を開催しました。

「一度の転倒事故が大きな打撃に」

 日野自動車と京王電鉄バス、京王バスの3社は2026年10月21日、バス車内での転倒事故をAI技術の活用によって防ぐ、新たな安全システムに関する説明会を開催しました。

 3社によると、乗合(路線)バスの交通事故における「車内事故」の割合は全体の約3割を占めるそうで、特に発生タイミングは発進・停車時に集中しているとのこと。ただし、その件数は近年下げ止まりの傾向にあるといいます。

 さらに、その要因には乗客側の行動・心理的なものもある一方、「バス運転士の負担の大きさ」があると説明します。

 たとえば発進時、運転士は前後の扉や車内、車両の周囲といった各所の安全確認を同時並行でこなす必要がありますが、運転席からは死角も多く、確認漏れをなくすのは容易ではありません。日野の担当者は、求められるタスクの量が「人間の限界を超えている」と話します。

 また近年は少子高齢化や人口の減少により、バス事業者の経営環境の悪化、運転士不足なども大きな課題となっています。そのうえ、京王バスの担当者によると「転倒事故が起きた場合、過失責任はバス事業者側が負うケースがほとんど」だそうです。

 こうした状況下で転倒事故が一度起きれば、補償対応や利用者からの信用低下によって経営に大きな打撃が加わるため、運転士は大きなプレッシャーを感じながら業務に当たっているといいます。

「不安定」な乗客をAIが検知

 そこで、本システムは最新のAI技術を活用して事故の発生を抑止するとともに、運転士の負担軽減も図り、業務環境を改善することを目指して開発されました。

 システムは、車内天井部に取り付けられた2つのカメラ、運転席周りのモニター、運転席上部に置かれた映像解析用の端末などから構成されます。またオプションとして、乗客に向けて注意を呼び掛ける追加モニターをセットすることも可能です。

 発進や停止の際には、カメラの映像をAIが分析し、乗客を検知。座席に座っていない、または手すりやつり革につかまっていない乗客は「不安定」な状態だと判定します。すると、画面内では不安定な乗客を赤枠で囲って表示し、音声とともに運転士に危険を知らせます。

 また乗客の様子を確認するモニターは、完全停止時から低速での走行時のみ表示され、走行中は運転士の注意を妨げないよう、画面が表示されない仕組みです。

 一方で実際の運行時には、手すりなどに寄りかかっているだけの乗客の存在など、危険の有無を瞬時に見分けられないケースもあります。しかし、「近年はAI側の技術進化がハイペースで進んだ」(日野)こともあり、映像解析の精度が大きく向上したそうです。

 なお9月からは、日本バス協会によって「AI搭載型乗り合いバス車内事故防止システム」の実証実験が行われています。実証期間は12月までの計画で、日野製のシステムを搭載した車両は現在、京王バスの調布営業所で1台が実証運行をしています。

 同協会の実証には12の事業者が参加していますが、日野製のシステムは京王電鉄バスのほか、相鉄バス、神奈川中央交通、京阪バス、名鉄バス、神姫バスの計6事業者が順次実証を行っていく予定。日野の担当者は「(実証を通じて)事業者や運転士の意見を取り入れ、装置の改良を進めていきたい」とコメントしています。