【ワシントン時事】トランプ米大統領の打ち出す物価高対策が迷走している。牛肉価格の引き下げ策は牧場主らから不評。軽油急騰を抑える狙いでロシアに急接近すると与党共和党からも反発を招いた。11月3日の中間選挙まで2週間で支持固めを進めたいトランプ氏だが、逆風にさらされている。
「牛肉価格を下げたい。それが有権者の望みであり、私の望みだ」。トランプ氏は牛肉価格の引き下げに意欲を示す。
米労働省によると、牛ひき肉価格は、トランプ氏の就任前から2割超上昇。干ばつなどで飼育頭数が減少したためで、ハンバーガーなど身近な食品の値上がりが家計を圧迫している。
米政権が打ち出したのが、牛ひき肉を低関税で輸入する枠を9月から3カ月間、30万トン分拡大する措置の導入だ。トランプ氏は牛肉価格を25%引き下げると公言する。
だが、生産者からは、割安な輸入品の流入拡大につながると反感を買った。全米肉牛生産者・牛肉協会のウッドール最高経営責任者(CEO)は「牛肉を市場に大量に流入させても、牛の飼育頭数回復にはつながらない」と批判。接戦州のアイオワ州で、共和党上院候補のヒンソン下院議員も「価格は下げたいが、(輸入拡大は)悪い考えだ」と距離を置く。
不満に配慮する形で、低関税枠拡大の発表からわずか1週間後、トランプ氏は州をまたいだ食肉製品の流通を促す大統領令に署名した。
軽油急騰対策では、ロシア産軽油30万トン超の市場放出でプーチン大統領と合意したと発表。トランプ氏は「農家、牧場主、トラック運転手のための値下げが最優先だ」と世論にアピールした。
9月に成立した対ロ制裁法も軌道修正。ロシアから原油や天然ガスを購入する主要国に課す100%の関税を見送る大統領令に署名した。
しかし、一連の措置によりロシアに対する圧力が後退するのは必至。テキサス州の共和党クルーズ上院議員は米メディアに、「大統領にそうしてほしくなかった。間違いだった」と非難し、ノースカロライナ州のティリス上院議員も「無責任にも程がある」と突き放す。
物価高対策が裏目に出る中、政治学に詳しいデンバー大学のセス・マスケット教授は、「畜産業者や農家、保守色の強い有権者の多くが不満を募らせている」と、選挙への影響を指摘している。