科学探査の価値守る=微生物汚染防ぐ「惑星保護」―初の火星圏往復・MMX

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 火星の衛星「フォボス」への往復飛行を目指す探査機「MMX」が20日未明に打ち上げられる。火星圏から帰還すれば世界初だが、地球の微生物による環境汚染を防ぐとともに、帰還時に未知の微生物を地球に持ち込まないようにする「惑星保護」の観点から、これまでの日本の探査機ではなかったさまざまな作業が行われた。
 惑星保護で取るべき措置には、国際的なルールが定められている。火星や木星、土星の氷衛星などは生命の起源を探る上で重要な探査対象で、地球から持ち込んだ微生物で汚染されると、科学的な価値が失われてしまう。また、試料を持ち帰るミッションは、未知の地球外微生物によるバイオハザード(生物学的災害)を防ぐ観点から安全性を評価し、それに応じた対策が求められる。
 小惑星「りゅうぐう」から試料を持ち帰った探査機「はやぶさ2」では、惑星保護を目的とした特段の措置は取られなかった。りゅうぐう表面は長期間放射線にさらされていることから、生命が存在する可能性は低く、仮に地球から微生物を持ち込んでも生存できないと判断されたためだ。
 一方、火星を周回するMMXでは万が一、落下した場合の影響を考慮して、機体や組み立て環境の微生物調査を実施。発射場のある鹿児島・種子島宇宙センターにも、検査施設が新設された。
 宇宙航空研究開発機構(JAXA)によると、工場での組み立てや種子島への輸送、ロケットへの搭載時など節目ごとに周辺の浮遊粒子を採取。着陸脚の「足の裏」の拭き取りまで行い、微生物数が基準値の10分の1以下であることが確認された。
 フォボスから持ち帰る試料に関しても、火星からの距離が約6000キロと近いことから、火星に微生物がいた場合に混入の恐れが指摘された。隕石(いんせき)衝突で巻き上がった火星表面の砂が到達した可能性があるためだが、JAXAはシミュレーションで、巻き上がった砂は秒速数キロでフォボス表面に衝突するため、仮に微生物が含まれていたとしてもほぼ死滅すると推定。実際に衝突の模擬実験も行い、国際的にも妥当性を認められた。
 検査を担当したJAXAの木村駿太准教授は「将来の科学探査の価値を守るための活動。次の世代に向けた責任としてやっている」と強調。小沢宇志・主任研究開発員も「火星の着陸探査につながるような惑星保護活動をやっていきたい」と話した。 
〔写真説明〕火星衛星探査機「MMX」の「惑星保護」活動を担当したJAXAの木村駿太准教授(左)と小沢宇志・主任研究開発員=1日、相模原市のJAXA宇宙科学研究所