「トン・ツー」でおなじみのモールス信号。高度な通信機器が当たり前となった現在では、すっかり過去のもの……と思いきや、海上自衛隊では今も使われています。いったいどんな場面で活躍しているのでしょうか。
発光信号と電鍵による通信方法
一般的に、モールス信号と聞くと、「トン・ツー、トン・ツー」のやり取りとともに昔の映画を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
スマートフォンで一瞬にしてメッセージを送れる令和の時代。さすがにモールス信号なんて使われていないと思いきや、海上自衛隊では現役だったりします。
海上自衛隊の公式サイトでも、通信員の仕事として「無線電話やモールスを使用した通信」が紹介されており、航海科員が発光信号の送受信を訓練している動画なども見ることができます。
そもそもモールス信号とは、「短点/・/トン」と「長点/ー/ツー」の組み合わせで文字や数字などを表す方法のこと。その「トン・ツー」を何で伝えるかによって、いくつかの通信方法があります。
海上自衛隊でおなじみなのが、光を点滅させる発光信号と、電鍵を使って送る方法です。
電波に頼らず、有事には有効な通信手段となる
まずは発光信号。船同士が近くを航行しているとき、光を点滅させてモールス信号で挨拶を送ることがあります。艦橋付近にある信号探照灯などを使い、光の長さを「トン・ツー」に変えて情報を伝えるのです。
ジブリ映画『崖の上のポニョ』で、主人公の宗介が使っていたのでイメージしやすいのではないでしょうか。発光信号は文字通り光のみで通信するため、電波を発せずに情報をやり取りしたい場合、レトロな手法ながら有効な伝達手段となるのだとか。
次に電鍵などを使った音による信号です。この電鍵こそ、多くの人に知られている代表的なモールス通信の方法です。電鍵をカチカチと操作して「トン・ツー」を送り、相手がそれを読み取ります。こちらもジブリ映画『天空の城ラピュタ』の序盤で、ムスカが通信しているシーンに登場しますね。
あの謎にかっこいいシーンで、多くの子供がモールス信号に目覚めた……のではないでしょうか。少なくとも筆者(たいらさおり:漫画家/デザイナー)はそうだったりします。
現在は、音でのモールスはほぼ使われることはありませんが、有事の際には使用することも想定されます。そのため、教育機関のカリキュラムには今も含まれており、航海科や通信科の隊員たちが訓練を続けています。
ちなみに航空自衛隊では、モールスによる通信運用が2019年に終了しました。一方、海上自衛隊では現在も通信員の仕事としてモールス通信が残されています。最先端の衛星通信やデジタル通信が発達した現代に、あえての「トン・ツー」。
状況に応じて使える通信手段をひとつでも多く持っていたいという、海上自衛隊ならではの合理性を垣間見た気がしました。