なぜ? 新幹線なのに乗客が“後ろ向き”に! 全国唯一“スイッチバックする新幹線停車駅”秋田・大曲駅の特殊構造

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秋田新幹線「こまち」は途中駅で進行方向が逆転し、乗客は後ろ向きに座って走る区間があります。その先にはレールが3本並ぶ珍しい線路も存在します。

新幹線なのに途中駅で「方向転換」!?

 新幹線といえば、目的地に向かって前進する乗りものです。しかし、秋田新幹線「こまち」は途中駅で進行方向が逆転し、乗客が後ろ向きに座って走る区間があります。しかも、その先にはレールが3本並ぶ珍しい線路も存在します。

 秋田県大仙市にあるJR大曲駅。秋田新幹線「こまち」が停車するこの駅には、ほかの新幹線の駅では見られない珍しい特徴があります。それは、途中駅で列車の進行方向が逆になる「スイッチバック」です。

 東京駅を出発した「こまち」は、盛岡駅で東北新幹線から分かれ、在来線の田沢湖線を経由して大曲駅へ到着します。ところが、ここから終点の秋田駅へ向かう際には、それまでとは逆方向へ走り出すのです。

 実際に大曲駅を訪れると、ホームに停車する「こまち」の姿が見られました。特徴的な赤い流線形の車体は、東京方面から来た際には最後尾だった側が、秋田方面へ向かう際には先頭になります。

 また、新幹線ホームの線路は先が行き止まりになっており、列車がそのまま直進できない構造であることも分かります。

 なぜ、わざわざ方向転換する必要があるのでしょうか。その理由は線路の配置にあります。大曲駅には田沢湖線と奥羽本線が乗り入れていますが、盛岡方面から来る田沢湖線と秋田方面へ向かう奥羽本線は、どちらも駅の同じ側へ延びています。そのため、秋田駅へ向かう「こまち」は大曲駅で進行方向を逆転させる必要があるのです。

 JR東日本によれば、大曲駅は新幹線停車駅として全国で唯一、スイッチバックを行う駅です。2026年6月には、この珍しい特徴を生かし、新幹線への出発合図などを体験できるイベントも設定されました。

 この仕組みは車内にも影響します。「こまち」の座席は基本的に東京駅から大曲駅までの進行方向を基準に設定されているため、大曲駅から秋田駅までの約30分間は、座席が進行方向と逆向きになります。座席を回転させることは可能ですが、通常は大曲駅で一斉に向きを変えることはありません。そのため、乗客は後ろ向きに座ったまま秋田駅へ向かうことになります。秋田駅から東京方面へ向かう列車でも、大曲駅までは同様です。

 もっとも、列車そのものが後退しているわけではありません。それまで最後尾だった車両の運転台を使い、通常と同じように前進しています。新幹線でありながら、進行方向が途中で逆転する珍しい運転が行われているのです。

新幹線が走るのに「レールが3本」!? その理由とは

 秋田新幹線には、もうひとつ珍しい特徴があります。それが、3本のレールを並べた「三線軌条(さんせんきじょう)」です。

 一般的な鉄道の線路は2本のレールで構成されています。しかし、秋田新幹線が走る奥羽本線の一部区間には、3本のレールが並ぶ場所があります。これは、新幹線と在来線の普通列車では、対応する線路の幅が異なるためです。

 新幹線が使う線路幅は1435mmの「標準軌」で、JRの一般的な在来線が使う1067mmの「狭軌」より広くなっています。通常は線路幅が違えば同じ線路を走れませんが、片側のレールを共用し、もう片側に幅の異なる2本のレールを設けることで、どちらの車両も走れるようにしています。大曲駅の改札付近には、この仕組みを解説する展示もあります。

 もっとも、大曲駅から秋田駅までの線路すべてが三線軌条になっているわけではありません。この区間はもともと奥羽本線の複線でしたが、1997年の秋田新幹線開業に際し、片方の線路を新幹線用の標準軌に改めました。もう片方は普通列車が使う狭軌のままで、現在も両者が並んでいます。

 一見すると普通の複線ですが、新幹線と在来線がそれぞれ別の線路を使う「単線並列」という構造です。ただし、このままでは新幹線が走れる線路は片側の1線だけなので、反対方向から来る「こまち」同士が走行しながらすれ違うことはできません。そこで神宮寺駅から峰吉川駅までの約12.4kmでは、在来線側にも新幹線が走れるよう三線軌条を採用。この区間では2本の線路のどちらにも新幹線が入れるため、「こまち」同士が走行しながらすれ違うことが可能になっています。

 こうした特殊な構造は、秋田新幹線が既存の在来線を改良し、新幹線を直通させる「ミニ新幹線」だからこそ生まれたものです。途中駅で進行方向が逆になり、乗客は後ろ向きに座って移動する。さらに3本のレールを使って新幹線同士をすれ違わせる――。秋田新幹線の珍しい仕組みは、既存の鉄道設備を生かしながら新幹線を走らせるための工夫なのです。