街の整備工場や小さなバイクショップなどが損害保険会社の兼業代理店の契約を一方的に打ち切られる問題で、新展開です。金融庁と国交省が損保協会に対し、異例の“要請”をだしました。
代理店の減少は「無保険車」を増やす懸念
金融庁と国土交通省は2026年10月13日、「日本損害保険協会」(会長=石川耕治損害保険ジャパンの社長)に対して要請文を出しました。街の整備工場や小さなバイクショップなどが損害保険会社の兼業代理店の契約を一方的に打ち切られる事案が確認されたほか、両省のウェブサイトに要請文が掲載されるなど、異例の展開を見せています。
任意保険を担当する金融庁と、自賠責保険を担当する国土交通省は日本損害保険協会に対し、損害保険代理店の業務品質向上に向けた取り組みを適切に運用するよう要請しています。
ビッグモーター事件の反省に立ち、金融庁は損保業界に対して顧客本位の業務運営を求めて保険業法を改正しました。損保協会など業界は代理店の「品質向上」を働きかけてきましたが、その対応に自動車業界を中心とする兼業代理店が反発。両省が調査に乗り出すことになりました。
その結果、保険会社が代理店に求める対応が、代理店の規模や業務特性を踏まえない一律的なものになっていたり、委託契約の解除を前提としたものと受け取られる側面があったりすれば、制度改正の本来の趣旨に反する、との認識を示しました。
また、両省は二輪販売店・整備工場などの兼業代理店について、無保険車対策や利用者の負担軽減に寄与し、重要な役割を果たしていると評価。「このような代理店の減少は、自賠責保険をはじめ、顧客が適切な保険サービスを受ける機会の喪失にもつながりかねません」と指摘しました。
すでに打ち切られた代理店の「再交渉」が焦点か
今回の要請で実務上の影響が大きいとみられるのが、契約解除、契約解除見込みとなった代理店の処遇。保険会社の再交渉への対応です。
各保険会社は「代理店業務品質評価制度」を通じて、保険代理店のいわゆる再構築を行っています。保険会社と代理店が「継続的な対話」を重ね、代理店が主体的かつ自立的に業務品質を高めることが目的です。
要請文は2025年の制度トライアル期間を含めた2026年からの本格運用後に、対話が不十分のまま契約解消となった事案について、保険会社が内容を確認した上で適切に対応するように求めています。その上で、代理店側から再交渉の要請があった場合には「改めて丁寧な対話を実施すること」と明記しています。
ただし、要請文は再交渉の結果として契約を復活させることまでは言及していません。保険会社が事案をどう確認し、どこまで再交渉に応じるかは各社の対応にかかっています。
保険会社のあり方にかなり踏み込んだ要請
要請文では、損保各社に次の対応を求めています。
・経営陣主導で、営業部門・拠点に取り組みの趣旨・目的を改めて周知・徹底する。
・代理店に趣旨を理解してもらうための適切な説明体制とプロセスを構築する。
・代理店の規模・業務特性を踏まえ、主体的な品質向上に向けた助言・支援を行う。
・代理店に交付・説明する文書に、不適切または誤解を招く表現がないか十分に確認する。
・本社が営業現場の取り組み状況を把握・検証し、結果を定期的に経営陣へ報告、必要に応じて改善する。
・合理的な理由のない一律の改善期限の設定や一律対応を求めないよう、運用状況を確認する。
・代理店の品質向上が認められた場合は、営業支社や役職員の業績評価に適切に反映させる。
任意保険を扱う一般代理店と自賠責保険のみを扱う代理店とでは、充足すべき品質項目に差がある点に留意するよう求めています。また、取引件数などの目標を設ける場合も、丁寧な対話を経て双方が合意することを前提とする、など保険会社の姿勢に踏み込んでいます。
損保協会に対しても、制度の実効性を高める観点から、代理店が使う「自己点検チェックシート」の設問や水準が、規模や業務特性を踏まえたものになっているか改めて確認・検証するよう重ねて要請しています。
損保協会は取材に「よりよい制度となるよう見直しをしっかり行っていきたい」と、コメントしました。
今回の要請にあたり、金融庁は制度の運用に関する損保各社の対応についてヒアリングを実施。国交省はバイク販売店や整備工場などを対象に、保険会社の上層と現場の両面から制度運用に関する認識の相違や課題に迫りました。保険会社には代理店の管理・指導・監督義務があるとして、今回の内容はその義務を果たす上で必要な支援を求める趣旨だと付記しています。