装備換装で多種多様な任務に応える特撮メカみたい!? 無人化した工兵車両 戦場でもっとも危険な作業を安全に

空き家の85%、1年後も空き家

戦術の変化により地雷などを除去する工兵車両も大きくかわりつつあります。ラインメタルが考案した「MV-8 KOMODO UBS」はまさにそうした車両のひとつです。

戦車より先に走る「ブルドーザー」が無人になる理由

 戦車は陸上戦の主役ともいえる存在ですが、目の前に地雷原や対戦車障害物があれば、そのまま前進することはできません。そこで活躍するのが工兵部隊です。橋を架けたり道路を整備したりするだけでなく、敵が設置した地雷や障害物を取り除き、戦車や装甲車が通れる道を切り開くことも重要な任務です。

 しかし、こうした工兵作業には大きな危険が伴います。地雷原を突破しようとする車両は、敵にとって格好の標的になるからです。特にロシアによるウクライナ侵攻では、地雷原を突破しようとする工兵車両が、砲撃や対戦車ミサイル、FPVドローンなどで攻撃される事例が相次ぎました。

 そこで注目されているのが、工兵車両の無人化です。人間が乗らずに地雷除去などの作業を行えれば、危険な場所へ兵士を送り込む必要を減らすことができます。

 その一例として、2026年6月にフランス・パリ近郊で開催された防衛装備展示会「ユーロサトリ2026」では、ドイツの防衛大手ラインメタルが「MV-8 KOMODO UBS(無人障害突破システム)」を公開しました。

 これはクロアチアのDOK-ING(ドク・イング)が開発した無人車両「MV-8 KOMODO」をベースに、地雷原を突破するための装備を組み合わせたものです。

 展示車両の前面には、巨大なブルドーザーのような地雷除去プラウが取り付けられていました。これは地面に埋められた地雷を左右へ押しのけ、後続車両が通るための道を切り開く装備です。

 さらに、ロケットで爆破索を地雷原へ展開し、爆発によって突破口を開く「Plofadder」と呼ばれる装備も組み合わせることができます。地雷を処理した場所を後続部隊へ知らせる通路標示装置も用意されており、単に地雷を取り除くだけでなく、戦車や装甲車が前進するための一連の作業を支援します。

 MV-8 KOMODOは遠隔操作が可能で、危険な地雷原に操縦者が乗り込む必要はありません。ラインメタルは自律走行技術の導入も進めており、将来的には人間による操作の負担をさらに減らすことを目指しています。

実は「工兵車」ではない 戦車の相棒になる日も?

もっとも、MV-8 KOMODOの狙いはもっと大きなところにあります。実は「MV-8 KOMODO」という名称は、工兵車両そのものではなく、さまざまな装備を搭載できる無人車両のプラットフォームを指しています。

 最大車両総重量は15.5トン、最高速度は時速55kmで、最大8.5トンの積載能力を備えています。車体にはモジュール方式が採用されており、搭載する装備を交換することで、異なる任務へ対応できるように設計されています。

 例えば、地雷除去装備を取り外して補給物資を搭載すれば、前線へ弾薬などを届ける輸送車両になります。偵察装備や化学・生物・放射性物質などを検知する装備を搭載する構想もあり、危険な地域で人間に代わって作業することが期待されています。

 さらに驚くことに、武器を搭載した戦闘車両として使うことも想定されています。

 ユーロサトリ2026では、DOK-ING自身もMV-8 KOMODOを展示していました。こちらはラインメタルの工兵仕様とは異なり、機関砲を備えた大型の無人砲塔を搭載した武装型でした。地雷を取り除く車両と、敵を攻撃する車両が、同じ基本設計から生まれているのです。

 こうした無人車両の開発に、ラインメタルは本格的に乗り出しています。同社は2026年7月、DOK-INGの株式51%の取得を完了したと発表。今後はクロアチアを無人車両の開発拠点とし、地雷除去だけでなく、偵察や補給、火力支援などを担う車両の開発を進める方針です。

 さらにラインメタルは、戦車や歩兵戦闘車とともに行動し、偵察や火力支援を行う無人車両「Wingman」の構想も明らかにしています。自社が開発する次世代戦車「パンターKF51」などとの連携も想定しており、無人車両を既存の戦闘部隊へ組み込もうとしているのです。

 もちろん、こうした構想がすべて実用化されたわけではありません。また、装備を交換できるからといって、戦場ですぐに地雷除去車両から戦闘車両へ変身できるわけでもありません。

 それでも、危険な地雷原の突破から戦車の支援まで、人間が乗らない車両に任せようという動きは着実に進んでいます。将来の戦場では、戦車の前を走って道を切り開き、必要に応じて偵察や火力支援も担う、そんな無人の「相棒」が当たり前になるのかもしれません。