広い窓から吹き込む秋風、木製ベンチ、そしてディーゼル機関車にけん引される客車。ラストラン前日の「富良野・美瑛ノロッコ号」に乗車し、今では貴重になった“客車列車の旅”を体験しました。
「最後の秋」を走るノロッコ号に乗ってきました
JR北海道の観光列車である「富良野・美瑛ノロッコ号」が、2026年9月23日にラストランを行いました。「ノロッコ」とは、ゆっくり走る「ノロノロ」と、「トロッコ」を掛け合わせた造語です。
その名の通り、美しい丘陵地帯のほか、ラベンダー畑や田園風景の広がる富良野線沿線の景色をゆったりと楽しめる観光列車として1998年より運行が開始され、28年間にわたって観光客を中心にその絶景を提供してきましたが、車両の老朽化などを理由として9月23日にその歴史に幕を下ろしました。
また、「富良野・美瑛ノロッコ号」の兄貴分である「くしろ湿原ノロッコ号」についても、同様に車両の老朽化を理由に2026年10月10日の運行をもって引退が予定されています。
富良野・美瑛ノロッコ号は1日におおむね3往復が運行されており、筆者は最終運行日の前日に当たる9月22日に、富良野駅14時07分発の富良野・美瑛ノロッコ4号に乗車し、途中駅であるラベンダー畑駅までの区間を乗車してきました。
国鉄時代に製造された50系客車をベースに、車内には広く開放的な窓と木製のベンチが設置されています。乗車すると沿線の風を身体で感じられる展望車両を、DE15形ディーゼル機関車がけん引する、令和の時代に生き残っていた数少ない客車列車でもありました。
富良野駅を出発して少しすると広大な田園風景が広がってきます。車窓はすっかり稲刈りの最盛期を迎える秋の景色となっており、カメラを構えると時折トンボが飛んでいる光景も見ることができました。
ノロッコ号は引退へ それでも“50系の血筋”は受け継がれる
続いて色とりどりの花畑が並ぶ丘が見えてきました。気付くともう間もなく下車する予定のラベンダー畑駅に到着します。この駅の近くにはラベンダー畑で広く知られるファーム富田があるのですが、ラベンダーの見頃は7月ということもあって車窓から特徴的なその紫色を見ることはできませんでした。一方で、ベゴニアやマリーゴールド、サルビアなどの秋を彩る花々が咲き誇っていました。
また、見頃を終えてしまったラベンダーも車内各所に飾られており、吹き抜ける秋の風に、ほんのりとラベンダーの香りを感じることができました。
筆者は名残惜しくも、臨時駅であるラベンダー畑駅で下車しましたが、列車はさらに牧歌的な丘陵地帯を進み、「丘のまち」として広く知られる美瑛町の美瑛駅まで走行を続けます。
来年以降の観光列車としては、JR北海道が「スタートレイン計画」として2027年6月から運転を開始するプレミアムクラスの観光列車「青い星」を富良野線にも導入する計画です。
この列車は、道内で普通列車として使用されてきたキハ143形気動車を改造したものです。キハ143形は、もともと50系客車として製造された車両にディーゼルエンジンを搭載し、自走できるように気動車化されました。このため、ノロッコ用の客車とルーツを同じくするという興味深い経歴があります。
新しい観光列車が気動車となることから、旅情を味わえる数少ない客車けん引列車に乗る機会が、今回の引退をもってまたひとつ減ってしまうことを筆者としてはとても残念に思います。