「日本最北の自動車専用道」無料で早いのに利用が少ない、もっともな理由

航空機産業 世界的な拡大続く

北海道の「幌富バイパス」と「豊富バイパス」は、日本最北の自動車専用道路です。普段の通行量は多くありませんが、冬にはその真価が発揮されます。

日本最北の自動車専用道路

 北海道の旭川市から北端の稚内市までは約190km、札幌からだと旭川経由で約300kmに及びます。この広大な北海道の移動時間を短縮するため、道内各所での高速道路の整備が進んでいます。そのうちもっとも北にあるのが、幌延町から豊富町を結ぶ「幌富バイパス」、そしてその幌富バイパスから続き豊富町を南北に縦貫する「豊富バイパス」です。

 これらふたつの路線は国道40号のバイパスとして整備された無料の自動車専用道路で、幌富バイパスが2010年に、豊富バイパスが2016年に開通しました。また幌富バイパスの起点は当初、国道40号現道とは離れた場所でしたが、2020年に国道40号の改良事業「天塩防災」により天塩川を渡る「天塩大橋」が約1km東側に架け替えられ、幌延町以南の国道40号からの交通が幌富バイパスに道なりで流れ込むことができるよう、改良されています。

 この天塩防災の区間に含まれる「幌延IC南口」からはじまる自動車専用道路は、豊富町の終点「豊富北IC」まで約29kmです。車線数はいずれも片側1車線で、数か所に追越車線が整備されています。制限速度は70〜80km/hで、降雪期以外であれば、約25分で移動可能です。

 また全線を通してSA、PAは設置されていませんが、「豊富サロベツIC」に隣接した「豊富管理ステーション」の駐車場は一般に開放され、建物内のトイレを利用することができます。

ちょっと寂しい日本最北の自動車道

 このように“日本最北の自動車専用道路”として一体となり、道北北部を南北に結ぶ両バイパスですが、通行料金が無料であるにもかかわらず、降雪期以外の通行量はけっして多くはありません。その理由は、豊富町市街地と、豊富バイパスとの位置関係にあります。

 豊富町市街地は、豊富バイパスの西、国道40号現道に沿って広がっています。一方、豊富町市街地から最寄りとなる豊富バイパスの豊富サロベツICは、市街地の南東、約1.5kmの位置にあります。そのため豊富町から北、稚内市方面に向かう場合は「逆方向にやや戻ってから豊富バイパスに入る形」となります。また稚内市方面から豊富町市街地へも、「市街地を通りすぎてからやや戻る形」です。

 大都市圏であれば、やや遠回りでも自動車専用のバイパスを使うほうが所要時間は短くなりますが、一般道でも流れの速い北海道では、その法則があてはまらないことがしばしばです。そしてスマホのカーナビアプリでも、豊富町市街地と稚内市方面の推奨ルートを国道40号現道に指定しがちです。

現道のほうが選ばれてしまうワケ

 しかもこの区間の国道40号現道は線形もよく、片側1車線ながら、ほぼ全線にわたって追い越しも可能となっています。地元のドライバーにとっては、「ひょっとして遅いクルマで前が詰まるかもしれない自動車専用道路」よりも「いつでも追い越しのできる一般道」がより好まれることにもなります。

 また幌延町市街地から豊富町市街地へも、豊富サロベツICと豊富町市街地までの移動時間がかかることもあり、国道40号現道と大きな時間差は発生しません。

 観光客にとっても、両バイパスはやや使いにくい道です。この地域の人気観光地である「サロベツ原生花園」や「サロベツ海岸」、道道106号「日本海オロロンライン」には国道40号現道のほうが近く、あえてこの両バイパスを使う理由がないからです。

 そのため、この豊富バイパスを使うクルマの多くは、幌富バイパス以南と稚内市方面を走り通すクルマに限定されることになるのです。

冬になると一変!?

 ただこの状況も、降雪期になると一変します。宗谷地方は北海道においても冬がとくに厳しく、地吹雪の際は視界がほぼゼロになり、また視界不良のため駐車していても、凍結した路面上でクルマが風に流されることもあるほどです。

 こうした気象条件から、国道40号現道は冬季の通行が非常に危険になります。

 一方、幌富バイパス、豊富バイパスは、切り通しや盛り土上を走る区間が多く地吹雪に強いこと、また除雪が徹底されていることから、冬季は国道40号よりも安全性が高く、安心を求めて流入するクルマで交通量が増えるのです。

 北海道の高速道路の整備については、費用対効果の面から、懐疑的な意見も寄せられます。しかし救急搬送など人命にかかわる輸送が厳冬期にも行われることを考えると、その必要性は単に所要時間や交通量だけでは測れないと言えるでしょう。

 両バイパスは、函館から稚内までを結ぶ「北海道縦貫道」の一部として、道央道の終点となっている士別剣淵ICから一続きとなるよう延伸事業が進められています。ただ最北の都市、稚内市まで高速道路で結ばれるには、まだまだ時間がかかりそうです。