CO2排出ゼロ! 川崎重工「未来の飛行機」エンジンの運転に成功 先行するエアバスに対抗へ

飛行機飛べば需要増 MROとは?

川崎重工業は2026年10月8日、開発中の水素航空機向け小型エンジンの運転試験に成功したと発表しました。CO2を出さない「究極のエコ旅客機」実現へ向けた日本初の快挙。その意義と今後の展望を解説します。

「究極のエコ旅客機」実現へ 川崎重工が快挙

 川崎重工業は2026年10月8日、世界最高レベルの低NOx(窒素酸化物)性能を実現する新開発の水素燃焼器を搭載した「小型航空エンジン」の運転試験に成功したと発表しました。

 日本初となるこのような成果について、川崎重工は水素航空機の実現に向けたエンジン技術開発における「重要なマイルストーン」であると説明しています。その意義を探ってみましょう。

 現在、民間の航空輸送分野では地球温暖化を防止するため、国連の専門組織ICAO(国際民間航空機関)がCO2(二酸化炭素)の排出を増加させない方針を示しています。これを受け、各国政府や航空機メーカーは、機体の軽量化やエンジンの効率化、SAF(持続可能な航空燃料)の活用といったさまざまな取り組みを進めています。

 なかでも、燃焼時にCO2を発生しない「水素」を燃料とする水素航空機は、ゼロ・エミッション(CO2排出ゼロ)の“切り札”として、世界各国で開発が加速すると見られています。

 なお、水素航空機の実現には、大きく分けて水素と酸素の化学反応でエネルギーを生み出す「水素燃料電池」と、水素をエンジンで燃焼させて推力を得る「水素燃焼」という2つのアプローチがあります。

 ヨーロッパの巨大航空機メーカーであるエアバス社は2020年9月、水素を主な動力源とする旅客機のコンセプトモデル「ZEROe」3種類を発表しました。さらに2022年4月には、川崎重工とサプライチェーン構築を見据えた政策提言や課題解決に向けたロードマップ作成にともに取り組むことで合意し、覚書を締結しています。

JAXA実験場で実証! 「水素燃焼」エンジンの現在地

 日本では川崎重工が「水素燃焼」方式に関して、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の事業を受託し、2021年度から開発を進めています。具体的には、「水素航空機向けエンジン燃焼器・システム技術開発」「液化水素燃料貯蔵タンク開発」「水素航空機機体構造検討」という3つの項目です。

 同社はこれまでに、国内初となる燃料タンクにおける液化水素充填試験と、航空機用小型水素エンジンの運転試験に成功してきました。今回発表された試験は、その「水素航空機向けエンジン燃焼器・システム技術開発」の一環として実施されたものです。

 発表によると、同社独自開発の低NOx燃焼技術を採用した新型燃焼器を小型航空エンジンに搭載し、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の能代ロケット実験場(秋田県能代市)で水素燃料による運転試験を実施しました。

 試験では、エンジン始動から回転上昇、巡航相当の定常運転、加減速運転および停止までの一連の条件で、安定した燃焼と推力発生を確認。さらに、航空エンジンとして不可欠な「運転安定性」と「低NOx性能」の両立も実証しました。これにより、ICAOの排出ガス規制への対応はもちろん、世界最高レベルの低NOx性能を実現できる見通しを得たとしています。

その成果をどう生かすのか

 川崎重工は今回の成果を踏まえ、2030年度までに機体、エンジン、燃料タンクなどの各技術を統合し、水素航空機システムとしての成立性と性能を検証する「地上実証試験」を計画しています。将来的には、水素航空機の実現を通じて航空分野の脱炭素化を推進する方針です。

 ちなみに、NEDOを所管する経済産業省は、水素燃焼技術について「2035年以降に中小型旅客機(100~250席)中心に導入される」との見通しを示しています。

 いっぽう世界に目を転じると、前出のエアバス社が2022年2月、大型機A380をプラットフォームにした水素航空機のデモンストレータープログラムなどを進めるため、エンジンメーカーのCFMインターナショナル社とパートナーシップを締結するなど、実用化に向けて一歩リードしている状況です。

 しかし川崎重工には、自衛隊のP-1哨戒機やC-2輸送機などの開発を通じて培ってきた「航空機のシステムインテグレーターとしての実績」と、自社で「航空エンジン技術」および「水素関連技術」を併せ持つ総合力という大きな強みがあります。こうしたアドバンテージを活かし、日本主導による次世代の水素航空機の実現に期待したいところです。