【ロンドン時事】ノーベル平和賞の受賞が決まったナビ・ピレイ氏(85)は、国連人権高等弁務官や国際刑事裁判所(ICC)判事などを歴任し、国際法の下で正義や道徳を擁護する姿勢を貫いてきた。平和を維持するために法を尊重するという普遍的な価値観を守ることに生涯をささげてきた。
アパルトヘイト(人種隔離)体制下の南アフリカ出身のピレイ氏は、弁護士として人権擁護に尽力。落ち着いた語り口だが、正義を守る信念を訴える際には言葉に力がこもった。
ノーベル賞委員会のフリードネス委員長は9日、受賞者発表の記者会見で「国際法体制は大きな圧力にさらされ、その制度は攻撃を受けている」と現状を危惧した。トランプ米政権がICCの赤根智子所長らを制裁対象に指定するなど、法の支配が揺らぐ中で、ピレイ氏が国際法の枠組みを守り、平和維持に貢献してきたとたたえた。
ジュネーブの国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のトップである人権高等弁務官を務めた2008~14年は中東での紛争など、各地で戦闘や深刻な人権侵害が多発。シリアで多くの子供を含む市民が犠牲となった内戦には心を痛めた。戦闘の長期化で国際社会の注目が薄れたことには「あきれる」と嘆き、国際社会の無関心を戒めた。
14年にウクライナ東部でマレーシア航空機が親ロシア派とみられる武装勢力に撃墜され多くの犠牲者が出た事件でも「戦争犯罪を含め、国際法に抵触したいかなる人物も裁きを受けるべきだ」と強調。人類の正義を訴えた。
一方、旧日本軍の従軍慰安婦問題を巡っては、「歴史の隅に置かれたことではなく、現在の懸案だ」として日本政府の被害者への対応を批判したことも。「包括的で公平、長期的な解決策」に取り組むよう促した。来日して北朝鮮による拉致被害者の家族らと面会したこともある。
〔写真説明〕ナビ・ピレイ氏=2025年9月、ジュネーブ(AFP時事)