出版取次大手の日販が、出版社側に事前の相談なく、米人工知能(AI)企業アンソロピックに日本の書籍を大量販売した可能性が浮上している。出版各社は、書籍が裁断されAI学習に使われたのではないかとして反発。業界団体「日本書籍出版協会」(書協)が日販側に事実確認を求める事態に発展している。
問題が浮上したきっかけは、米国の著作権侵害訴訟で公開されたアンソロピックの内部資料。世界中から集めた書籍を裁断してスキャンする同社の「パナマ計画」の一環として、「Nippan Japan」と契約を締結したとの記載があった。冊数や価格、実際に学習に使われたかなどの詳細は分かっていない。
書籍を無断で学習に使われたとして作家3人がアンソロピックを訴えた訴訟では、米連邦地裁は書籍の学習については「フェアユース」(公正利用)だとして、著作権侵害に当たらないとの判決を下した。
ただ、AI企業と契約を結んで学習用データ提供の対価を得るビジネスモデルも確立しつつある。国内のある出版関係者は「著作権者に学習の対価を支払わず、取次から直接書籍を大量購入して済ませていたなら裏技的だ」と批判する。
出版各社に反発が広がったことを受け、書協は9月17日付で日販グループホールディングス(GHD)に書面を送付。事実関係や出版各社と結んだ再販契約との整合性などについて、受領後20日以内に回答するよう求めるとともに、AI学習目的の書籍販売を取りやめるよう要請した。
日販GHDは取材に「個別の取引に関する回答は控えるが、法令を順守した取引を行っている。権利者への敬意を前提に、利用目的や法令への適合性、社会的影響などを総合的に勘案している」とコメントしている。
〔写真説明〕米アンソロピックのロゴが表示されたスマートフォン(AFP時事)