ウクライナはドローンやミサイルを使い、ロシアの首都モスクワ周辺を攻撃しています。いまでは大型の巡航ミサイルも運用していますが、長距離攻撃の初期には、民間の小型飛行機を改造した無人機も使われていました。
モスクワへの攻撃にドローンと巡航ミサイル
2026年9月20日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、前夜に行ったモスクワ周辺への攻撃について「ロシアの主要な石油関連施設と物流施設に打撃を与えた」と発表しました。使用した兵器として、攻撃用ドローン「FP-1」や巡航ミサイル「フラミンゴ」などを挙げています。
ドローンというと、兵士が近くの敵を見つけて攻撃する小型機を思い浮かべるかもしれません。しかし、ウクライナでは、前線から遠く離れたロシア国内の施設を狙う無人機も開発・運用しています。
FP-1とフラミンゴを造るのは、ウクライナ企業のファイア・ポイントです。同社が開発したFP-5「フラミンゴ」は、メーカーの公表値で最大射程約3000km、搭載量は最大約1.2トン。最大離陸重量は約6トンに達し、メーカー関係者は同種の巡航ミサイルの中でも最大級の大きさだと説明しています。
現在はこうした兵器を造るウクライナも、2022年にロシアによる全面侵攻が始まった当初から、敵の領土深くに攻撃可能な兵器を十分に持っていたわけではありません。
2026年6月、フランスの防衛装備展示会「ユーロサトリ」で開かれたパネルディスカッションでは、ウクライナの防衛産業関係者が、長距離攻撃能力を獲得するまでの取り組みを紹介しました。そこで示された初期の機体は、フラミンゴとはまるで違う姿をしていました。
民間の飛行機を改造して、遠くの目標へ
ウクライナ防衛産業評議会のイホール・フェディルコCEOが示したのは、民間の小型飛行機を改造した無人機です。人が乗るための機体に遠隔操作の装置を組み込み、機体下部に航空機用の爆弾を搭載していました。改造は即席で行われたようで、その外見は兵器と呼ぶには洗練されているとはいえません。しかし、既存の飛行機を転用することで、ウクライナは長い開発期間をかけずに、ロシア国内への攻撃手段を手に入れたのです。
この改造機が、そのまま現在のドローンやフラミンゴに進化したわけではありません。ただ、手に入る機体を使って、まず「遠くの目標を攻撃する」という任務を実現しようとした点に、当時の切迫した状況が表れています。
現在のファイア・ポイントの製品も、任務に応じて造り分けられています。FP-1とFP-2は、ともに翼を持つ攻撃用ドローンです。一方、FP-5「フラミンゴ」は、建物や産業施設に大きな損害を与えるために1トンを超える大型弾頭を搭載し、なおかつ長距離を飛ぶ性能が求められました。その大きさは、重い弾頭を遠くまで運ぶという役割から生まれたものといえるでしょう。
同社はさらに、迎撃が困難な弾道ミサイル兵器として「FP-7」と「FP-9」も開発しています。
こうした造り分けについて、ファイア・ポイントのイリーナ・テレフCEOはディスカッションで、個々の「製品」ではなく、軍が任務を果たすための「能力」で考えるべきだと語りました。必要な能力が先にあり、それを実現する兵器の形は後から決まるという発想です。
民間の飛行機を改造した無人機と、巨大なフラミンゴ。姿はまったく違っても、遠くの目標を攻撃するという目的から生まれた点は共通しています。
ウクライナの長距離攻撃能力は、ひとつの兵器を完成させたことで手に入ったのではありません。必要な任務に合わせて兵器を造り、数をそろえて使い続けるなかで育ってきたのです。