日本製のドローンでも、海外から部品が届かなければ作れなくなる恐れがあります。電池や「頭脳」の国産化を進めるテラドローン。その取り組みには、機体を大量にそろえるだけでは済まない、ドローン兵器ならではの事情もあります。
日本で組み立てても、部品が来なければ作れない
防衛省との契約と、異例の納期の短さで話題となっている国産ドローンメーカー「Terra Drone(テラドローン)」。同社は機体の開発に加え、電池や制御装置などの部品を国内で供給できる体制づくりを進めています。
これは一般の工業製品でもよくあることですが、製品に「日本製」と書かれていても、中身まで国産品とは限りません。複雑な製品ほどさまざまな構成部品が使われており、その多くが海外製であることが多く、有事に供給が途絶えれば、日本に工場があっても生産が止まる恐れがあります。
そこでテラドローンでは、バッテリーパックと、飛行を制御する「頭脳」に当たるフライトコントローラーの国産化を進めています。
バッテリーについては、大手家電メーカーへの供給実績を持つ国内企業と提携。一個一個の電池である「セル」を調達し、それらを組み合わせてドローン向けの高出力バッテリーパックに仕上げます。提携先の設備や製造経験を活用し、設計から組み立て、検査までを国内で行う計画です。自社機への搭載に加え、国内外の他社ドローンメーカーにも販売する方針です。
フライトコントローラーでは、防衛用ドローン向けの「Terra DFC」を自社開発し、量産体制を構築しました。機体の傾きなどを読み取り、モーターを調整して飛行を安定させる重要部品です。国内で品質管理や改修を行える体制を整え、防衛省向けの機体への搭載を予定しています。
目指すのは、機体の組み立てにとどまらず、主要部品の供給網も国内に確保することです。必要な機体を作り続ける備えとなるだけでなく、現場の要望に応じて改良できる体制づくりにもつながります。
欧州では「月に何機作れるか」も売りに
部品の安定供給が重視される背景には、ドローン兵器自体の使われ方にも理由があります。体当たりで目標を攻撃する機体や、敵機に衝突して撃ち落とす迎撃ドローンは、基本的に1回限りの使い切りです。有事において大量使用するには、使った分を生産し、補充し続ける必要があります。
そのため、欧州ではドローン兵器の性能だけでなく、工場や生産能力も重視されています。
ドイツのヘルシングは2025年2月、ウクライナ向けに攻撃ドローン「HX-2」を6000機生産すると発表しました。同時に公表したドイツ南部の工場の生産能力は月1000機超。機体自体も、大量生産と低価格を重視して設計されています。
欧州ミサイル大手MBDAも、2025年のパリ航空ショーで発表した長距離攻撃用ドローンで、自動車産業などとの連携を打ち出しました。ドローンメーカーの技術と、民間企業の製造能力を組み合わせ、低価格で大量に供給することを目指しています。
飛行距離や攻撃力が優れていても、必要な数が届かなければ、その能力を十分に生かせません。こうしたドローン兵器では、「どんな機体を作れるか」とともに、「何機作り続けられるか」も重要になっているのです。
テラドローンが進める部品の国産化も、必要な機体を継続して供給するための土台づくりといえるでしょう。
敵が速くなれば、迎撃する側も変わる
■変化に追い付くためにも国産化が重要
ドローン兵器には、大量生産に加え、改良の速さも求められます。実際、ウクライナなどのドローンが活用される戦場では、攻撃と迎撃の双方で、相手の対策を上回るための改良が短い周期で繰り返されています。
例えば攻撃用ドローンとして有名なイラン開発「シャヘド」シリーズにも、プロペラ式の「シャヘド136」に加えて、より高速なジェット型「シャヘド238」が登場しています。テラドローンではこれに対応するため、チェコ企業と組み、欧州の技術や製造基盤を活用したジェット型迎撃ドローンの製品化を検討しています。
こうした変化に日本が対応するうえでも、国内に設計・製造の能力を持つことが重要です。主要部品を自ら設計し、変更できれば、現場の要望を素早く製品に反映しやすくなります。
テラドローンが進める電池や制御装置の国産化も、こうした生産と改良を支える取り組みです。使った分を補充し、相手の変化に合わせて改良する。国産化で問われるのは、機体を組み立てる場所だけでなく、その両方を国内で続けられる体制を確保できるかという点なのです。