史上最大の巨大輸送機……でも「重いもの」は苦手!? 容積重視の設計が狙う“新たな貨物輸送ニーズ” とは

タクシー市場拡大の”鍵”とは?

ケタ外れの大きさを誇りながら、運べる重さが意外にも少ない新型輸送機が開発中です。その矛盾した設計には、どのような意図があるのでしょうか。

「大きくて軽い貨物」を運ぶための輸送機

 輸送機の能力を論じる際、最大離陸重量やペイロードは極めて分かりやすい指標です。しかし航空輸送の現場では、貨物が重さの制限に達するより先に「大きさ」が限界を迎えることが少なくありません。重量は許容範囲に収まっていても、貨物室の扉を通らない、あるいは機内に収まらない。その瞬間、航空輸送という選択肢そのものが消えてしまいます。

 この問題に着目したのが、アメリカのスタートアップ企業ラディアが開発を進めるC-242「ウインドランナー」です。最大の特徴は、その桁外れの貨物室容積にあります。C-242という名称の由来でもある約24万2000立方フィート(約6800立方メートル)という貨物室容積は、C-5「ギャラクシー」の約7倍、C-17「グローブマスターIII」の約12倍に相当します。全長約109m、全幅約80mという機体寸法も既存の大型輸送機とは比較にならず、あのAn-225(ムリーヤ)さえ遥かに上回ります。

 しかし、気になる点が1つあります。これほど巨大な機体でありながら、最大ペイロードは約72.6トンで、C-17とほぼ変わらないのです。この容積と重量の“矛盾”こそ、C-242の設計思想を理解する鍵となります。

 ウインドランナーは「重い貨物」を運ぶための輸送機ではなく、従来の輸送機では、ペイロード重量に達する前に貨物室が満杯になってしまう「大きくて軽い貨物」を運ぶための航空機を目指しているのです。

意外に多い「大きくて軽い貨物」

「大きくて軽い貨物」は、私たちの社会に意外なほど多く存在します。航空機の胴体、大型ロケット関連装備、衛星、発電設備などが代表例です。

 こうした貨物が既存機に収まらない場合、細かく分解して輸送し、到着地で再組み立てするか、航空輸送そのものを諦めて海上輸送や特殊な陸上輸送に切り替えなければなりませんでした。しかし、そこには輸送時間だけでなく、分解、梱包、積み替え、再組み立てという工程が発生し、コストも上昇します。

 C-242が狙うのは、この物流上の「摩擦」解消です。特に軍事用途では容積による制限がボトルネックとなることは少なくないため、その意味は大きいと言えます。例えば戦闘機や大型ヘリコプターは、それ自体の重量よりも「完成状態の寸法」が輸送上の障害になりやすい存在です。

 ラディアの構想では、F-16なら4機、CH-47なら6機、V-22なら4機を分解せず搭載できるとされます。整備拠点から前線に近い配備基地まで、航空機そのものを完成状態に近い形で移動させるという、新しい兵站の可能性を示しています。

C-242はC-17の“後継”ではない

 ただし、C-242をC-5やC-17の後継機と捉えるのは適切ではありません。最大搭載時の航続距離は約2000kmにとどまり、巡航速度もマッハ0.6程度とされます。世界各地へ重量物を展開する米空軍の戦略輸送機とは、機体の性格が異なります。

 むしろウインドランナーは、既存の輸送体系を補完する新たな超大容積輸送機と考えるべきでしょう。C-5やC-17が重量物を遠距離へ運ぶ一方、C-242は巨大貨物を比較的短距離で運びます。この役割分担が成立すれば、従来は空路以外の輸送に頼っていた貨物を空路へ引き戻せる可能性があります。

 また、C-242誕生の“原点”は、巨大化する風力発電設備、とりわけ陸上風力タービンのブレードを輸送するという民間需要にありました。とはいえ民間大型貨物機の市場は現時点ではそれほど大きいとは言えません。そのため軍事用途・民間用途両方に進出し一つの機体を双方で成立させる必要性があったと考えられます。

 2030年の初飛行を目標とするウインドランナーが、果たして実機として成立するかはまだ分かりません。その成否はユニークな巨大容積を活かした新しい市場を開拓できるかどうかに懸かっています。