大きく突き出た機首レドームから「カモノハシ」の愛称を持つ航空自衛隊のスタンド・オフ電子戦機。来年度予算の概算要求に、能力向上のための費用が計上されました。
量産化へ! 概算要求に2機目の経費を計上
防衛省の令和9(2027)年度概算要求では、電磁波領域における能力強化の一環として、航空自衛隊の「スタンド・オフ電子戦機」の量産取得に関する経費が初めて計上されました。取得機数と金額は「事項要求」のため明らかになっておらず、年末の予算案編成までに確定しますが、取得機数はおそらく1機と思われます。
スタンド・オフ電子戦機は、効果的な電磁妨害によって自衛隊の航空作戦の遂行を支援するための航空機であり、防衛装備庁が主契約会社の川崎重工業とともに、2020年度に開発に着手しました。公開されたC-2量産初号機(68-1203)を改造した試作機(XEC-2)には、三菱電機との契約により2015年度から2019年度に実施された「戦術データリンク妨害用送受信技術の研究」に基づいて開発された妨害装置を搭載するとともに、機体各部に複数のアンテナレドームが設置されています。
とりわけ、外観で目を引く機首の大型アンテナレドームの形状から「カモノハシ2世」とも呼ばれています。なお、“初代”カモノハシことEC-1は電子訓練支援機でしたが、EC-2は電子支援機YS-11EA以来となる作戦用電子戦機であり、合計4機を導入する計画です。
試作機XEC-2は今年3月17日、航空自衛隊岐阜基地で初飛行を実施しました。その後、6月9日に飛行開発実験団に配備され、現在は岐阜基地を拠点に防衛装備庁と航空自衛隊による技術・実用試験が2026年度末までの計画で行われています。そして、同年度末の開発完了後、EC-2は2027年度に警戒航空団隷下の電子戦隊(入間基地)で実任務に就きます。
航空自衛隊は現在、EC-1とYS-11EAの退役によって大型電子戦機の保有数が一時的にゼロになっていますが、F-35戦闘機の持つ電波妨害能力によって補完できている状況です。したがって、スタンド・オフ電子戦機EC-2の運用が始まれば、航空自衛隊は、ステルス性を生かした「スタンド・イン電子戦機」F-35と合わせて2機種の電子戦機を持つことになり、両機種の特性を活かして電波妨害能力の幅が広がる効果が期待されます。
フル装備型「第2段階」の開発費も要求
2027年度概算要求には、2機目のスタンド・オフ電子戦機の取得のほかに、新規事業として「スタンド・オフ電子戦機(第2段階)の開発」が盛り込まれました。概算要求の資料によると、予算額は440億円+事項要求で、「厳しい安全保障環境を踏まえ、非対称的な優勢を確保していくため、脅威圏の外から、レーダー妨害等の電波妨害を行う器材の開発を実施」します。
このあまり聞きなれない「第2段階の開発」を、XEC-2の技術・実用試験が完了する前に要求した狙いはどこにあるのでしょうか。
そもそもスタンド・オフ電子戦機は当初から、搭載電子戦器材をまとめて開発せず、2段階にわけて開発を進める計画で、現在試験中のXEC-2は第1段階の機体という位置付けです。このように段階的な開発を採用した理由としては、すべての電子戦器材をまとめて開発するのに比べて早期装備化が可能になるとともに、当初設計の陳腐化を防止するためと説明しています。
その結果、第1段階では戦術データリンク妨害能力にマトを絞った機体を開発しています。これは通信妨害用だったYS-11EA、レーダー妨害用だったEC-1にはない能力です。そして第2段階において、地上レーダーや航空機搭載レーダーなどに対する電波妨害器材を開発・搭載し、フル装備型の機体とする計画です。
このほか第1段階では、音声通信妨害能力が途中で加えられたほか、電子戦器材のサイズや電源、ソフトウェアなどの規格化を目指す「マルチ電子戦プラットフォーム技術」を確立し、将来の能力向上に向けた基盤の構築が図られています。これにより、スタンド・オフ電子戦機に対する将来の各種器材の後付けが容易となります。
防衛省の担当者によると、第2段階の開発は2027年度から2035年度にかけて実施される計画で、その成果は、2028年度以降に予算計上される3機目から順次反映する計画とのことです。