「駅弁は上品で小ぶりなもの」という固定観念は、「厚切りロースとんかつ弁当」と出会ったことで、心地よい音を立てて崩れ去ることになりました。
「駅弁=小ぶり」という固定観念を打ち砕くボリューム感
新幹線での移動で楽しみなもののひとつが駅弁です。ただ、最近は見た目こそ豪華でも、腹ペコ状態で食べると「もう少し欲しかったな」と感じるものも少なくありません。そんななか、東京駅で筆者の目に飛び込んできたのが、JR東海リテイリング・プラスの「厚切りロースとんかつ弁当」(1400円)でした。
この駅弁と出会ったことで、私の「駅弁は上品で小ぶりなもの」という固定観念は、心地よい音を立てて崩れ去ることになりました。
名前からして分かりやすい。とんかつです。しかも厚切りです。弁当のフタ越しにも「今日は肉を食べる日です」という強い意志が伝わってきます。こういうのでいいんだよ。
主役は三元豚のロース肉を使ったとんかつ。2025年5月のリニューアルでは肉の厚みがアップし、より食べ応えのある仕立てになりました。実際にフタを開けてみると、ご飯の横にドスンと鎮座するとんかつはかなりの存在感があります。
駅弁ではおかずの種類を増やす方向へ行く商品も多いなか、こちらは「とにかく分厚いとんかつを食べてもらう」という非常に分かりやすい構成です。
まずは何もつけずに食べてみます。ロース肉はしっかりと厚みがあり、噛むと豚肉そのものの旨味が感じられました。肉が薄いと衣やソースの味が前面に出やすくなりますが、この厚さなら最後まで主役は肉。「とんかつを食べている」という満足感がしっかりあります。
そして個人的に驚いたのが、冷めていてもおいしいことです。とんかつは揚げたてが一番、というのは当然でしょう。しかし駅弁の場合、基本的には購入してから常温の状態で食べることになります。それでも肉の旨味や食べ応えが失われず、むしろ厚切りのロースをじっくり噛んで味わえる。駅弁として考えると、この「冷めた状態でも成立する」というのはかなり重要なポイントだと思います。
もちろん、そのまま食べ続けるわけではありません。付属の濃厚ソースとからしを投入します。ソースの甘みとコク、からしのツンとした刺激が加わると、一気に白いご飯を呼び込む味へ変化しました。厚い豚肉を噛み、濃厚なソースを感じたところへご飯を投入。またとんかつを食べて、ご飯。からしを少し多めにつけて、またご飯。非常に忙しいです。ご飯が止まりません。
そんな「肉と炭水化物の往復運転」を適度に落ち着かせてくれるのが、キャベツの酢漬けと大豆入りひじきです。キャベツの酸味は濃厚なソースと豚肉の脂をいったんリセットしてくれますし、ひじきは優しい味わいで箸休めとして機能します。主役はあくまでとんかつですが、途中にこうした副菜を挟むことで、最後まで飽きずに食べ進められました。
そして、この弁当にはもうひとつ危険な楽しみ方があります。ビールやレモンサワーを用意することです。
厚切りのとんかつへ濃厚ソースとからしをつけ、ひと口食べてからビールを流し込む。あるいは豚肉の脂をレモンサワーの酸味で流して、再びとんかつへ戻る。車窓を眺めながらこれを繰り返していると、いつもの新幹線の座席が急にカウンター席のように思えてきます。新幹線居酒屋、開店です。
しかも、この「厚切りロースとんかつ弁当」は、東海道新幹線の東京駅、品川駅、新横浜駅、京都駅、新大阪駅にある「PLUSTA」「PLUSTA Bento」「DELICA STATION」などの駅弁取扱店舗で販売されており、比較的入手しやすいのもうれしいところ。
1400円でこのボリュームなら満足感も高く、腹ペコ状態で新幹線に乗る人にはかなり魅力的な選択肢でしょう。筆者としては、新幹線に乗るたびに買いたくなる駅弁のひとつになりました。
「見た目の華やかさよりも、とにかく旨い肉で腹を満たしたい」。そんな旅人やビジネスマンの欲求に100%応えてくれる、頼もしすぎる相棒。新幹線に乗るたびに、私の手が迷わずこのパッケージへと伸びてしまうのは、もはや必然と言えるかもしれません。
ちなみに、この弁当の熱量は1131kcalです。1000kcalを超えています。しかし、ここで重要なのは、この弁当ひとつで満足できたという事実です。普通の駅弁では物足りず、追加でおにぎりやサンドイッチを購入してしまう可能性がありますが、この弁当ならその必要がありません。つまり余計な間食を防止できるわけです。
しかもキャベツとひじきと大豆まで入っています。野菜、海藻、豆類を一度に摂取できます。1131kcalですが、単品で食事が完結し、野菜も海藻も豆も摂れ――実は、かなりヘルシーな駅弁なのではないでしょうか。茶色いですけど。