「自分がやってやんなきゃ」 福岡加入後6戦3発、師岡柊生の変化と覚悟

クレーンゲーム景品の変化に注目

 ウォーミングアップでくるり、キックオフ前にくるり、ハーフタイム後にまたくるり。芝に手のひらをつけて、体を前に一回転させる。それがアビスパ福岡FW師岡柊生のルーティンだ。

 取り入れたのは、鹿島アントラーズ時代。チームメートのDF植田直通がやっているのを見て、「なんかあれいいな」と真似してみたらしっくりきた。「なんとなく緊張をほぐすためにやっています。ピッチを足だけじゃなくて、全身で感じたいっていうか」。その効果もあってか、J1第6節終了時点ですでに2024シーズンと百年構想リーグに並ぶキャリアハイの3ゴールを決めている。

 第3節で古巣・鹿島を相手に移籍後初得点を決めると、第5節の浦和レッズ戦はこぼれ球を左足で流し込んで逆転ゴールを奪った。第6節の水戸ホーリーホック戦ではスコアレスで迎えた53分、敵陣左サイドの深い位置に侵入した味方からの折り返しに飛び込み、右足で仕留めた。「ああいう形のゴールが自分のゴール」と持ち味を発揮し、2試合連続でネットを揺らした。完全に波に乗っているように見えるが、当の本人はケロッとした表情で「これが普通」と言い切ってしまうから、なんとも頼もしい。

 そんな師岡を、塚原真也監督は高く評価する。「彼の良さは本能ですかね。点を取りたいという気持ちが表情、立ち居振る舞いから前面に出ている。頂点でもシャドーの右、左、どこでもやれますし、技術も高い」。攻守において、今の福岡のキーパーソンと表現した。

 早くも今季3得点という結果は、間違いなく自信につながっている。ただ、自身がゴールを決めた試合で、福岡は一度も勝利していない。水戸戦後のミックスゾーンで、師岡の表情は険しかった。「点を取れたのはよかったけど、チームを勝たせることができなくて悔しいです」と静かに語ると、「前半で決め切らないといけない場面はあったので。今日の引き分けは自分の責任だと捉えています」と追加点を奪えなかった自分を責めた。

 福岡はリードしていながら終盤にもったいない失点を許し、勝ち点3を逃す試合が続いている。そんな状況のなか、師岡の口から繰り返し出てくるのは「もっと点を取って、チームを勝たせないといけない」という言葉だ。自分が点を取っている満足感よりも、チームが勝てない悔しさのほうが大きい。最近は「あそこで決めていれば」と振り返ることが増え、「1点じゃ、本当に物足りない」という気持ちがどんどん大きくなってきた。

 チームが勝てなかったとき、「自分が決めていれば」と言うFWは少なくない。ゴールを求められるポジションだけに、そう考えるのは自然なことではあるが、師岡は自分の中の変化をはっきりと感じている。「(試合の)最初から出ることが多くなってきて、責任感だったり、鹿島にいたときよりも『自分がやってやんなきゃ』という気持ちだったりがあるのかなって。最近、少しずつ思い始めてきました」。途中出場が多かった鹿島では、どうしても点を決めたいという気持ちばかりが先走り、「結構空回りしている時期があった」。でも、福岡では違う。自分のペースで試合に入ることができ、主戦場と自負する相手ゴール前で勝負する機会が増えた。今はパフォーマンスを発揮することだけに集中できている。

 プロ入りから3年半過ごした常勝軍団では、勝利が当たり前のように求められた。そこで戦ってきた師岡だからこそ、今のチームに感じるものがある。足りないものは何かと聞くと、少し考えてこう答えた。「自分もまだまだだと思うんですけど、試合に出ている以上はもっと戦わなきゃいけないのかなって。試合に出ていない人のぶんも背負っているので。そこは本当に最低限やんなきゃいけないと、いつも思っています」

 師岡は感情を激しく表に出すタイプではない。けれど、プレーからは戦う気持ちがひしひしと伝わってくる。自分が勝たせる存在にならないといけないと思い始めてからは、その熱さがさらに増しているように感じる。「自分の最大限のパフォーマンスが出せれば、正直勝てると思っている」。2点、3点と複数得点を奪って、自分がチームを勝たせる。その覚悟が、今の師岡にはある。

取材・文=高尾太恵子

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