「機動戦闘車どこで給油してる?」自衛隊車両を高速道路のGSで見ないワケ 知られざる補給の裏側

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自衛隊の車両が街のガソリンスタンドを利用しないのはなぜでしょうか。駐屯地への直接納入や専用タンク車など、自衛隊独自の驚くべき燃料補給システムと、災害時における知られざる役割を解説します。

自衛隊車両、なぜ街のGS使わない?

 2026年7月に発生した熊本地震をはじめ、能登半島地震や東日本大震災など、大規模災害時に頼られるのが自衛隊ですが、濃緑色の自衛隊車両が市井のガソリンスタンド(GS)で給油している姿というのはほとんど見ません。

 パトカーや救急車、消防車などは街中のガソリンスタンドで給油するのに、なぜ自衛隊車両は目撃されないのでしょうか。大規模な災害派遣だけでなく、演習時の長距離移動などでも、高速道路のガソリンスタンドなどを利用しないのは、どういう理由からなのでしょうか。

 最大の理由、それは自衛隊が国の組織であるという点です。警察や消防は地方自治体に属する組織です。前者は都道府県、後者は市町村ごとになります。ちなみに東京消防庁は一見すると東京都全体を管轄する組織に思えますが、本来は東京都の機関として23区(特別区)の消防を担う組織です。多摩地域(稲城市を除く)は「消防力の強化」を目的に、各市町村が東京消防庁へ業務委託しているという形です。

 このように自衛隊は国の組織であるため、燃料など消耗品については防衛省が一括で予算計上しています。よって、言うならば北海道で給油しようが、沖縄県の与那国島で給油しようが、財布は一緒ということです。ここが自衛隊と、警察及び消防との大きな違いです。

 そうなると、国としては石油元売り事業者から一括調達した方が費用を抑えることができます。逆にいうと、街中のガソリンスタンドは石油元売会社とのあいだに燃料卸売業社や配送業者が介在するため、その分割高です。自衛隊は使用する量も膨大なため、多数の車両が一度に動くような場合は、それこそ自前で調達した燃料を使った方が断然、安価に、かつ会計の手間も抑えることが可能です。

燃料はどう届く? 駐屯地へ“直接納入”も

 とはいえ、自衛隊の車両が街中のガソリンスタンドをまったく使わないわけではありません。防衛省が公表する調達情報を見ると、地方協力本部などの公用車については、契約した民間の給油所を利用しているのを確認できます。

 街中のガソリンスタンドを利用しないとなると、戦車や装甲車を含む自衛隊車両はどこで給油するのでしょうか。

 じつは自衛隊の駐屯地や基地の多くには、専用の給油施設が敷地内に設けられています。また大規模演習や災害派遣の際には、燃料タンク車などを用いて臨時の給油所を開設します。

 実際、防衛省の調達資料を見ると、駐屯地や基地の給油施設に、年間契約した民間業者のタンクローリーが燃料を直接納入している例を確認できます。

 では、その燃料は、どうやって部隊のもとへ届くのでしょうか。

 陸上自衛隊を例に見てみましょう。陸上自衛隊は、全国を5つの警備区域に分け、それぞれ北部、東北、東部、中部、西部という、5個方面隊を置いています。そして、それぞれに北海道、東北、関東、関西、九州の5個補給処を配置し、これらで装備品だけでなく被服や燃料、食料などといった消耗品の調達、保管、補給などを担わせています。

 これら5つの補給処には、それぞれ「燃料支処」と呼ばれる下部組織があり、基本的にはそこで保管し、各駐屯地・分屯地の使用計画に準じて分配しています。ただし、すべての車両用燃料が、こうした拠点を経由して各駐屯地へ届くわけではありません。大規模災害などで使用量が大幅に増えたときなどは、契約した民間業者がタンクローリーで直接駐屯地に入り、給油所の地下タンクへ軽油を直接納める例もあります。

 つまり自衛隊は、補給処などの後方支援拠点と、民間業者による直接納入を組み合わせながら、部隊に必要な燃料を確保しているのです。

災害時は自衛隊が燃料を“届ける側”に

 平時からこうした仕組みで動く自衛隊ですが、大きな災害が起きると、燃料をめぐる役割はさらに広がります。

 中部経済産業局によると、2011(平成23)年に起きた東日本大震災では、道路の寸断などにより燃料供給に支障が生じ、陸上自衛隊の協力を得なければ燃料を供給できない事態が発生しました。この教訓を受け、同局と陸上自衛隊第10師団は、災害時を想定した燃料補給訓練を重ねています。

 2026年1月23日には、南海トラフ地震を見据えた中部方面隊最大規模の災害対処訓練「07南海レスキュー」の一環として、6回目の訓練が実施されました。想定は、製油所が被災し、幹線道路の寸断で孤立地域への燃料輸送が難しくなった事態です。

 訓練では、三重県に所在する第33普通科連隊(久居駐屯地)が油槽所で携行缶を使って燃料を受け取り、自衛隊車両で明野駐屯地へ輸送。そこから第10飛行隊のヘリコプターが尾鷲市まで空輸し、地元の石油販売会社へ引き渡して、災害拠点病院の非常用発電機に給油するというのを通しで確認しました。

 自衛隊が燃料を受け取るだけでなく、寸断された民間の燃料供給網をつなぐ役割も担ったわけです。このように大規模災害時には、自衛隊が燃料を届ける側にも回るように仕組みが作られています。

 ちなみに、陸上自衛隊はヘリコプターなどの航空機も野外運用を前提としているため、演習場をはじめとした飛行場以外の場所でも着陸・給油できるよう、悪路走破性に優れた3 1/2tトラックベースの航空用燃料タンク車が存在します。

 車両用のディーゼル燃料(軽油)を運ぶものもあるため、正式には「3 1/2t燃料タンク車(一般用)」と「3 1/2t燃料タンク車(航空用)」と区分されます。一見すると両車は似ているものの、航空用は車体後部に補給用ポンプとホースの収納箱を取り付けているため、そこで識別可能です。また、これがあるため、航空用は最大積載量が4000kgと、軽油を運ぶ一般用(5000kg)と比べ、1000kg少ないのも特徴です。

 また、飛行場メインで使用している1万リットル入る航空用燃料タンク車も、民間ではまず存在しない6輪駆動の7tトラックベースのものを運用しています。燃料を運ぶタンクローリーを見ても、自衛隊は専用のものを用いています。