マッハ0.9級の軍用無人機なのに、主翼を留めるボルトはわずか4本。ボーイングが開発するMQ-28は高性能と量産性を両立。旅客機787の技術が生かされていました。
主翼を留めるボルトはわずか4本!
マッハ0.9級で飛ぶ軍用無人機なのに、主翼を留めるボルトはわずか4本――。ボーイングが開発するMQ-28「ゴーストバット」は、高性能だけでなく「速く、大量に作れること」まで重視した機体です。その構造を調べると、意外にも旅客機787で培われた製造技術が生かされていました。
ボーイングがオーストラリアと共同開発しているMQ-28「ゴーストバット」は、有人戦闘機などと連携し、情報収集や戦闘支援などを担うCCA(協働戦闘航空機:Collaborative Combat Aircraft)に位置付けられる無人機です。最高速度はマッハ0.9級、飛行高度は4万フィート(約1万2000m)級に達する本格的なジェット機ですが、その構造には意外なほど「シンプルさ」が追求されています。
2026年7月に開催されたファーンボロー国際航空ショーで、MQ-28グローバル・プログラム・ディレクターのグレン・ファーガソン氏がメディアブリーフィングを実施し、MQ-28の構造を説明しました。そのなかで特に驚かされたのが主翼です。
説明によれば、主翼は上下2枚の炭素繊維複合材を基本とし、その間に翼の形を支えるアルミ製の骨組みを配置した構造になっています。そして機体との結合に使われるボルトは、わずか4本。大きな主翼そのものを取り外せるように作られているのです。
シンプルなのは主翼だけではありません。一般的な航空機では油圧を利用して舵面や降着装置などを動かしますが、MQ-28ではブレーキを除いてほぼ電動化。方向舵やフラッペロン、前輪の操向、降着装置などを電動アクチュエーターで動かし、複雑な油圧装置を極力減らしています。
さらに機首には、任務に応じて搭載機器を変更できるモジュラー式の設計を採用しています。ノーズは4本のボルトと約13個のファスナーで固定され、約1時間で取り外すことが可能です。異なるセンサー機器などを搭載できるため、機体そのものを何種類も作るのではなく、いわば任務における「頭」の部分を交換して対応させるわけです。
「人間が開けた穴はゼロ」787の技術も活用
なぜ、ここまでシンプルで交換しやすい構造なのでしょうか。その理由のひとつが、MQ-28は設計段階から「大量に作ること」まで考えられているからです。
MQ-28は炭素繊維複合材を多用しており、その生産には同じボーイングが製造する旅客機787「ドリームライナー」で培った複合材製造の技術も活用されています。
さらにデジタル設計とロボットによる自動化を組み合わせることで、高い精度で同じ品質の機体を繰り返し生産できるようにしています。その製造方法を象徴するのが、「この機体には人間がドリルで開けた穴がひとつもない」というファーガソン氏の言葉です。
部品の穴開けなどをロボットが行うことで、同じ作業を高い精度で繰り返せます。さらに部品同士が正確に合うようデジタル設計することで、組み立て時に生じる微妙な隙間を現場で調整する作業も極力減らしています。つまりMQ-28は、高価な有人戦闘機をそのまま無人化して安くした機体ではなく、最初から「工場で速く、大量に作りやすい軍用機」として設計されているのです。
その思想は生産計画にも表れています。オーストラリアのクイーンズランド州で整備されている生産施設は月産約2機を想定していますが、ボーイングによれば月産5機程度まで比較的速やかに拡大できるとのことです。しかも需要が増えれば、同じような生産設備を他国にも展開でき、新しい工場は約2年で生産開始まで持っていけるとしています。
安く作るのに「安い機体ではない」!?
ここまで聞くと、MQ-28は安価に大量生産し、戦場で失うことも前提とした「使い捨てドローン」のような存在に思えるかもしれません。ところがファーガソン氏は「MQ-28は安くありません。依然として高価です」と明言しています。
それも当然でしょう。MQ-28はマッハ0.9級で飛び、高度4万フィート級まで上昇し、高性能なセンサーを搭載して、さらに武装運用も想定する本格的なジェット軍用機です。小型の使い捨てドローンとは、そもそも性格が大きく異なります。
では、安い機体ではないのに、なぜそこまで「大量に作ること」を重視するのでしょうか。その考え方を説明する際、ファーガソン氏が挙げたのが「Attritability(損耗許容性)」という言葉です。その判断基準について、同氏は「もし、F-35のような有人戦闘機を1機失った場合、それによって作戦方針を変更するか?」という考え方を示しました。
もちろんMQ-28も、失って構わない機体ではありません。しかし有人機ではパイロットの生命を危険にさらすような任務でも、無人機なら人命へのリスクを抑えて投入できます。そして十分な数を保有していれば、一部の機体を失ったとしても、それを理由に作戦そのものを変更せずに済みます。
つまりMQ-28が目指しているのは、「失っても惜しくないほど安い軍用機」ではなく、「失っても作戦を続けられるコストと量」なのです。
必要な性能を持つ無人機を大量に作り、繰り返し飛ばし、損失が出ても作戦を止めない。そのためには性能だけでなく、機体を「どう作るか」まで重要になります。主翼を留める4本のボルトや、旅客機787で培った製造技術には、そんなMQ-28の狙いが表れているのです。