アメリカ海軍には歴史上3隻の「ルーズベルト」し、そのうち2隻が現役にあります。同名の艦が存在することは驚きですが、さらなる謎も存在します。
偉大な大統領を悼み、急遽命名された初代「ルーズベルト」
アメリカ海軍では、艦艇の名前にアメリカの偉人や戦争の英雄、または地名を使用しています。特に、歴代大統領の名前はアメリカを代表する偉人として、その多くが海軍の主力である空母に名付けられています。しかし、いくつか不思議なものもあります。そのひとつが「ルーズベルト」です。
ルーズベルトの名前が、最初に艦艇に付けられたのは、1945年5月8日のことです。4月29日に進水し、すでに「コーラル・シー」の艦名が与えられていたミッドウェイ級空母の2番艦が、「フランクリン・D・ルーズベルト」と改名されたのです。
これは、第二次世界大戦を前にアメリカの経済を再建し、大戦の終結に尽力した第32代アメリカ大統領の名前です。戦争の終結を見ることなく1945年4月12日に死去した彼を悼んで改名されました。
空母「フランクリン・D・ルーズベルト」は、その後近代改修工事などを受けながら、アメリカがかかわるさまざまな戦場へと赴き、また各国との演習も積極的に行いました。そして1977年に退役しています。
2代目「ルーズベルト」は初代とは別の大統領
2隻目のルーズベルトは1984年10月27日に進水した原子力空母「セオドア・ルーズベルト」です。同艦はニミッツ級空母の4番艦として建造された艦で、排水量においては史上最大の軍艦であるといわれています。
この名の由来は第26代アメリカ大統領セオドア・ルーズベルトであり、前述したフランクリン・D・ルーズベルトとは別の人物です。湾岸戦争やイラク戦争などでも活躍、現在も現役で世界中の海を飛び回っています。
ちなみに「セオドア・ルーズベルト」は、ニミッツ級で初めて船体各所をモジュール化して組み立てる方式で製造された艦となり、以後の「ニミッツ」級空母もすべて同様の工法で建造されることになりました。
そのため、一部では「セオドア・ルーズベルト」より以前の3隻を「ニミッツ級」、「セオドア・ルーズベルト」以後の7隻を「セオドア・ルーズベルト級」と呼ぶこともあるそうです。
謎の多い3代目「ルーズベルト」こと駆逐艦「ルーズベルト」
空母「セオドア・ルーズベルト」は今も現役で活躍中ですが、現在のアメリカ海軍にはもう1隻のルーズベルトが存在します。それが、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の30番艦「ルーズベルト」です。
こちらの「ルーズベルト」は1999年1月に進水しました。アメリカ海軍は、本艦の艦名を第32代大統領フランクリン・D・ルーズベルトとその妻であるエレノア・ルーズベルトの両名にちなんだものである、と説明しています。
しかし、「フランクリン・D・ルーズベルト」の名を冠した初代が、空母だったにもかかわらず、2代目がミサイル駆逐艦では、名前負けしているように感じます。歴代大統領の多くが空母に名を連ねるなかで、大統領人気投票では必ず5位以内に入る人気大統領である彼の名を駆逐艦に与えることは、とても不自然ではないでしょうか。
妻であるエレノア・ルーズベルトも女性活動家として非常に有名な人であり、単独で艦艇の名前になっても不自然ではありません。それなのになぜ、大統領とともに一緒に名付けられたのか、わかりません。
同姓の大統領を同時に空母へ名付けるのを避けたとも考えられますが、現役のニミッツ級空母10番艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」と、現在建造中のジェラルド・R・フォード級空母6番艦「ジョージ・W・ブッシュ」は、現役期間が重なる可能性が高いことから、説明が合いません。
一説には「海軍が名前を付け間違えたのでは…?」ともささやかれていますが、真相はやぶの中です。とりあえず、空母とミサイル駆逐艦では、任務が大きく違うため、名前による間違いは起こっていないようです。